賞金王決定戦の緊張感を味わったあとの瑞々しい若武者バトル。
このギャップはなかなか心地いいものである。
気が楽、なんて書くと若者たちに失礼になってしまうが、
賞金王よりはずっとリラックスしているのはたしかで、
ハツラツとした若手選手たちの若く朗らかな表情は
オッサンを実に和ませてくれる。
一番乗りは地元の篠崎仁志と前田将太。いやあ、若い。
にこやかだ。礼儀正しい。すべてのふるまいが、本当に若い。
そして何よりこちらの気持ちをも浮揚させるのは、
彼らの思いの大きな部分を未来への希望が占めている
ということであろう。それが新鋭王座決定戦。
正直に言えば馴染の薄い選手も少なくないわけではあるが、
しかしこの一節でしか味わえないものは確実にあるのである。
で、篠崎と前田が一番乗りとなったのは、地元福岡で登番が若い二人だから。
今節は大挙11人が参戦する福岡勢。
もはや福岡の若手の充実度は常識となりつつあるが、
地区新兵となる二人にしても有力候補なのだから、
やはりまずは地元勢に注目の一節となるだろう。
素早く私物検査、着替えなどを済ませた篠崎と前田は、
次々と到着する選手たちの世話を焼いたりもしており、
今節はこの二人がピット内を駆け回る姿が多く見かけられるのだろう。
地元勢のことをもう少し。
今年が卒業期で、最初で最後の新鋭王座となる里岡右貴。
笑顔でレース場入りすると、さっそく入り待ちのファンの方たちに声をかけられた。
丁寧に応対する姿は好印象だ。
それから10数分、他の選手の到着に目を奪われていたわけだが、
気づけば里岡はまだファンの輪の中。
今節の入り待ち人気ナンバーワンは、里岡に決定!
四駆のでっかい車がするするとピット入口に入ってくる。
助手席には池永太。彼も今年が最後の新鋭王座だ。
持ち前の爽快な笑顔で車から降りて、運転席にペコリ。
後輩にでも送ってもらったんだろうか……と運転席から降りてきた顔を見てビックリしたぞ。原田富士男ではないか!
そうです、池永の師匠であります。
すごいな~、師匠に送らせてレース場入りなんて大物だな~。
というわけで、師匠に恥じないレースをするしかありませんな、
池永選手。
大物といえば、今回はやはりこの人が
実績では図抜けていると言うしかあるまい。平本真之だ。
同期の篠崎元志と新田雄史が不在の新鋭王座。
ならば、絶対的本命と言っても差し支えないのが、平本である。
今節出場選手でSGカッパを所有しているのは4人。
そのなかでSG常連と言えるのは平本だけなのだから、彼の役割は大きい。
そして本人もそれを自覚しているよう
だから、期待してもいいだろう。
実際、こうして若手のなかで存在感は随一。
SGでも見慣れているせいもあるけど、やっぱり雰囲気が違うと言うしかない。
そうした風格を結果に結び付けられるのか、明日からの6日間が実に楽しみである。
昨年の最優秀新人に選ばれた山田康二も忘れてはならない。
山田は昨年も出場していたが、負傷により途中帰郷してしまっている。今年はそのリベンジマッチでもあり、また新人王の称号を背負って戦う重要なシリーズでもある。
一見して感じたのは、昨年よりずっと精悍になっていること。
昨年は53kgでの出場だったのだが、それよりも減量しているんじゃないかな。
明日の体重に注目してほしい。
レース場入りは同県同期、ともに峰竜太を師事している上野真之介と一緒だった。賞金王戦士となった師匠に続け!
レース場入りのトリは、ニッシーニャ!
5度目の出場にして最後の出場ともなるこの新鋭王座、
間違いなく主役の一人となるはずの西山貴浩だ。
送ってきた104期の花本大樹の車からは丹下将と岩瀬裕亮も降りてきて、この3人がシンガリを務めた格好。
西山は車を降りるなり、「土屋! 携帯忘れるなよ~!」と
同期の土屋智則を呼びつけていたが、
どうやら昨夜は“前々検”で飲み会かなんかあったようで、
先に帰った土屋が携帯を置き忘れていった様子。
西山はそれに文句をつけた(?)というわけだ。
到着するや、他の選手とはまるで違う表情&言葉を見せるニッシーニャ。
やっぱりこの人のオリジナリティは素敵だと言うしかないぞ。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)