BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――がんばれ、西山貴浩!

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 西山貴浩が苛立っていた。 

もう11Rの出走が数分後に迫っている頃、西山はカポック着脱場に上半身裸であらわれている。シャワーでも浴びたのだろうか、そのまま控室への階段を上っていったのだが、その表情は明らかに憤りをたたえたものだった。いや、むしろやるせなさを感じさせたと言ったほうが正しいだろうか。顔をしかめて、髪の毛をかきむしる。やり場のない思いをどこにぶつけていいのか見失っているかのように、ため息をついてもいた。

 10R1号艇で敗れ、まずはその悔しさは大きいだろう。

必勝の思いで臨んだイン戦、しかし深谷知博の果敢なツケマイに抵抗している間に、ふところを差されてしまった。2着に残ったのはまだ救いだが、しかしこの2着は喜べるものではないだろう。さらに、西山は不良航法をとられてしまってもいる。対象は、深谷への抵抗だ。審判のジャッジは絶対である。もちろん覆ることはない。しかし、あれが不良航法の裁定をくだされるのは、西山があまりに気の毒である。まくりを張るのはインの定石だし、もし西山が何もせずにまくられていたら、西山から舟券を買っていたファンは怒っていただろう。西山としては、やるべきことをやったまで。しかも、それほど激しい接触があったわけでもない。それが反則と判定されてしまったら、西山が不本意に思うのも無理はないし、マイナス7点には同情してしまうというものだ。もっとも、マイナス7点が痛いのは言うまでもないが、西山のやるせなさは決して減点のみに向けられたものではなさそうだった。そうした表面的な事実よりも、もっと心を締め付けるものがあったのは間違いない。

 

 

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さすがに、選手仲間も同情していたようだ。かわいそうという言葉が漏れ聞こえてもきたし、首をひねる選手もいた。

ピット内にそのアナウンスが流れたとき、僕はたまたま整備室を覗き込んでいる最中だったのだが、誰もが思わず動きを止めて、驚きの声をあげていた。

整備室の横にある水道で手を洗っていた横川聖志とは、思わず顔を見合わせてしまったりもして。もちろん僕も、そのジャッジをまったく想定していなかったので、腰が抜けるほど驚いていたのだ。

 ただ、西山自身は、もう前を向いているのだと信じたい。

控室から服を着込んであらわれた西山は、整備室へと向かっている。モーター格納作業のためだろうと思っていたのだが、しばらく経ってから覗き込んでみると、本体を整備しているようだったのだ。時間がほとんど残されていないなか、本体に手をつけているのだとしたら、明日からの戦いに闘志を燃やしている証拠。

 この減点で明日は一日早い勝負駆けを強いられることになったのだから、そのために最善を尽くしているということなのだ。これが西山の反骨心に火をつけ、西山に残されたレースがエキサイティングになるのなら、そのこと自体は歓迎すべきこと。

 そして、我々ももはやそれを期待するしかなかろう。 がんばれ、西山貴浩。この逆境に負けるな、西山貴浩。悔しくて眠れない夜を今日過ごしたら、また明日は笑顔と闘魂を見せてくれ。一言付け加えれば、西山はなーんも悪くない。

 

 そんな具合に、終盤のピットの空気はやや重苦しくなっていた感があるが、明日からも選手の奮闘に期待し、新鋭王座が盛り上がってほしい! というわけで、水神祭ラッシュで締めましょう。

 今日は1R松崎祐太郎、2R上野真之介、3R磯部誠、4R丹下将、6R田路朋史、7R北山康介、10R高山智至と、実に7人のGⅠ初1着が飛び出した2日目。半分以上のレースが、嬉しいお初の勝利になったのだから、その周辺はやはり笑顔があふれていた。

 

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 で、今日は一日じゅう、メシも食わずにピットに張り付き、水神祭(だけじゃないけど)を撮りつづけたチャーリーの写真をどどんとご紹介することでレポートに替えさせていただきますが、ひとつ、次のやり取りだけご報告させていただきます。

 松崎祐太郎の水神祭に集まった福岡勢。水摩敦が先輩である奈須啓太を探していたシーン。選手班長にして今節登番がもっとも古い奈須はどうやら「隊長」と呼ばれているらしい。水摩「タイチョー! タイチョー!」木下「はーい!」水摩「ん?」木下「はーい!」水摩「タイショーじゃねえっ!」 木下大將はもちろん「きのした・だいすけ」と読みますが、多くの人はきっと「たいしょう」と呼んでいるはず。それを大將自身もよくわかってるのですね。

 

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ではいきましょう。水神祭! 福岡勢に投げ込まれる松崎祐太郎!

 

 

さ、さむそう……。

 

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上野真之介は担ぎ上げられながら、鼻をつまんでいます。

冷たい水が鼻に入ったら痛そうだもんなー。

 

 

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長身の丹下将が、くるっと縮まって水の中へ。

参加しているのは愛知&東海&97期です。

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磯部誠も愛知勢ということで、二段ロケットのように連続開催。

おーい、まだ丹下が水の中ですよ!

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陸に上がった磯部はふたたび水の中へ落とされちゃった。

犯人は97期のあの人……といえばニッシーニャしかいないか。

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北山康介はムーンサルト!

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あ、北山もまた落とされた……。

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ラストは同期の田路朋史&高山智至の二段ロケット。

まずは田路がたかーく持ち上げられてドボン。

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続いて高山は……あまり高く上がらず。

「お前、重いよ!」出走表を見ると52kgなんですけどね。

 

 

これ、なんかの映画で見たようなシーン……。

 

 

というわけで、7人の若武者たちよ、おめでとう!(PHOTO/中尾茂幸=西山、木下 池上一摩=水神祭 TEXT/黒須田)