ダッシュ勢が大暴れ!
巷では『三丁目の夕日』が再ブレーク中だが、艇界にも昭和時代の“競艇”が帰ってきた!?
とにかく、今節の芦屋水面は4カドのダッシュが利く。今日のイン逃げは1Rと12Rの2回のみ。
それ以外の勝利コースと決まり手を羅列すると、5コース抜き4コースまくり4コース差し2コース差し4コースまくり5コース抜き5コースまくり差し2コースまくり4コース差し4コースまくり!!
それほどダッシュ勢が伸びる向かい風だったか?
いやいや、むしろ正反対で、昨日よりも強めの追い風が吹き荒れていた。それでも、4カドがスリットから伸びるわ伸びるわ。3Rの磯部誠(写真右)が、6レースの田路朋史が、11Rの奈須啓太が、怒涛の4カドまくりで突き抜けた。この自力まくりを含め、4コースは昨日と同じ5勝の固め撃ち。2日間で10勝と、インの6勝を圧倒している。
今日はさらに、5コースも3勝と健闘。とりわけ8Rの後藤翔之は、4カドからまくった大池佑来にぴったり連動し、鮮やかなまくり差しを突き刺した。いわゆる“モロ筋”決着や“アウトセット”決着が、今節の芦屋では当たり前のように起きてしまうのだ。
なんだか、懐かしいな。
4カドミサイルがバンバン飛び交う派手な空中戦を見ながら、私は昔にタイムスリップしたような気分になった。
競艇をかじり始めた16年ほど前は、モーターの精度や選手の力量、整備力の格差が激しく、さらに命知らずの前付け選手が至るところにいて、4カドまくりが面白いように決まったものだ。
私はアウトセットの舟券や三四郎(346)をせっせと買いつつ、いつもドキドキしながらピットアウトの瞬間を待っていた。
現在の記念戦線でも日に何度かはアウトセットや三四郎を買うが、「絶対に来るわけないんだけどね」と自嘲しながらレースを見つめるようになった。
今節の芦屋は違う。穴党の私にとっては、夢のようなダッシュ天国水面なのである。ただし、「すべての選手が、4カドから伸びるわけではない」 ということを肝に銘じる必要はあるな。この2日間で4カドまくりを決めた選手は、気合パンパンの地元選手、スリット付近の行き足~伸びがソコソコある選手(ソコソコでOK)、S勘がしっかりしていてスリットほぼ全速で行ける選手など、何らかの強みを生かしてまくりきっている。
特に、ニギニギしながらタイミングを合わせた選手は、スタートが同体以上でも届かない。明日の4号艇はF2持ちやあまり伸びない選手が多く、様相が一片する可能性も考えておきたい。
ビックリ減点
ド派手な空中戦の陰で……今日も多くの選手が罰則を頂戴した。
昨日の山口達也や篠崎仁志に続いて、有力な選手がV戦線から離脱した。
7R、去年の新鋭王座の主役級だった桐生順平が、コンマ01の勇み足。引き金は、3コースからコンマ08もハミ出してしまった桑原悠だったか。
2コースの桐生としては、ダッシュが伸びる水面の上にカド受けまでが踏み込んでしまっては、引くに引けなかったのだろう。
インでF2持ちの末永祐輝も、あわやF3か!?というコンマ01のタッチスタートだった。
10Rでは、不思議なことが起こった。地元のエースとして期待される西山貴浩が、不良航法で7点の減点。見た目には、5コースから強引にまくってきた深谷知博に艇を合わせて張っただけ。どこの水面でも普通に見られる、普通の競りだった。一緒にアサッテの方向までぶっ飛んでいく「無理心中型のブロック」とは別物の、本当に普通の「飛びつき」だった。事実、西山はそうして深谷の面倒を見てから、バック~2マークで勝ち負けの態勢に持ち込んでいる。深谷もすぐに追い上げ態勢に入っている。 いったい、アレの、何が悪かったのか?? どうしてあの程度で、ドリームに参戦した地元のエースに厳罰を与えたのか??
私には、さっぱりわからない。批判云々の以前に、さっぱりわからないのである。今日の西山と同じ程度の飛びつきを不良航法にするなら、国内のボートレース場は毎日大量の不良航法に覆い尽くされるだろう。
そして、イン選手はそれを恐れて、まくり艇に何の抵抗もしないで小回りに徹するだろう。私は「イン選手の矜持は、まくり艇を張ることにあり」と習ってきたのだが、それは間違いだったのか。
4カドが大活躍して「他の記念とは別物の競艇」を魅せてくれる芦屋の水面は、同時に「別物のボートレース」も見せている。
10Rが終わってあの裁定を聞いたとき、私はそう感じた。
「水上の格闘技」を頭ごなしに否定するような採決をして、どんなメリットがあるというのか。
もう一度、書く。あの西山のブロックの、何が悪かったのか?? 私は、一ボートファンとして、舟券を買い続けている者として、一記者としても、本当にさっぱりわからない。わからなすぎて、ビックリしている。読者の皆さんは、どう思う??
今日の水摩クン
生粋のまくり屋の水摩敦が大ピンチに立たされたので、急遽、応援コーナーを作ることにした。まぁ、私はピットに行かないし、本人はネットもできないから、何の意味もないのだけど。
11R、6号艇6コースだった水摩は、コンマ01!!!!のタッチSから、もちろん絞りまくりに出た。が、無理やり舳先を突っ込んだ5コース深谷が、そのミズマクリを受け止めて先まくりに出てしまった(以下、西山との競りに)。
一方、自分の仕事を奪われた水摩は、仕方なしにまくり差しに方針変更。なかなかにシャープなまくり差しに見えたが、複数の引き波で艇が大きく暴れて大差の6着に散った。
この大敗と昨日の減点とで、水摩は節間勝率4・67の26位に……準優ボーダーを6・00とするなら、残り3走で22点が必要になった。
つまり、明日の5号艇1回乗りで6着に敗れたりしたら、限りなく赤に近い黄信号が点ることになる。
全国の水摩ファンよ、明日の6Rは5アタマを買って無類のまくり屋を応援してほしい。穴党としては寂しいけれど、人気になればなるほど燃えてくれるかもしれないから。水摩のいない新鋭王座の準優は、あまりにも寂しすぎるぞ。ガンバレ、無類の天然まくりボーイ!!
(Photos/中尾茂幸、text/H)