BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――逆境の中から立ち上がれ!

 

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西山貴浩と話した。 もちろん、胸の内からモヤモヤが消えたわけではない。さまざまな思いは、いまだ彼の中に渦巻いてはいる。だが、西山はそれをいったんは振り切って、素直に次の戦いへと気持ちを向けている。

「オートレーサーと一緒ですよ。ハンデがあるでしょ?」 オートレースは選手に距離ハンデをつけて、レースが行なわれる。

強い選手ほど、スタートラインより後方から発進することになるのだ。つまり、強い人ほどハンデを背負うんだよなあ。

そういうと、西山はハハハと穏やかに笑った。とにかく、こういう状況になったのは仕方ないのだから、そのなかで頑張るしかない!

「頑張りますよ! 最低でも準優に出て……いや、優勝戦に出たいですよね」 

てらうこともなく、力強い口調で、西山はそう宣言した。この逆境が、西山の闘志にやはり火をつけたということか。

とにかく、今日の西山はニッシーニャではなく、西山貴浩だった。ま、腐らずに頑張って、と声をかけると、「腐ってませんよ。

腐ってもタイだし」と言ったあたりがちょっとだけニッシーニャか。でも、ギャグになっていないような……(笑)。

 

今節、同様に減点をとられている選手は多く、しかし西山のようにかえって闘争心を燃やして頑張ってほしい!

 

 

 

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すでに賞典除外が決まっているフライング組の篠崎仁志も、決してあきらめることなく、調整をしている。初日のフライング後に、即座に整備室へと飛び込んで、本体整備を始めた姿に驚かされ、また感心させられたものだ。調整はもちろん昨日も続き、今日も3R出走に向けて、飛び回っていた。その忙しそうな様子は、すなわち機力が苦しいから、ではある。だが、すでに“終戦”を迎えた身でありながら、しかしレースが残されているなら必ずや一矢報いんと気持ちを切らさないのは、勝負師にとっては必須のスタンスであろう。それを若くして得ているのだとすれば、やはりこの男は只者ではない。いつになるのかはわからないけど、今節どこかで一発やるんじゃないかな。  

 

 

 

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山田康二も同様だ。初戦で不良航法をとられた山田は、それで萎縮することなく激しいレースを見せてくれている。どうにも流れは向いてこないが、道中では新人王のきらめきを随所に示しているのだ。ピットでの動きも同様。真摯にペラと向き合い、真摯にモーターと向き合い、真摯に水面とも向き合う。そうした全身全霊っぷりが師匠とよく似ているな、と思った。顔つきはぜんぜん違うけど。山田のほうがちょっとゴツいですかね。しかし、すれ違いざまに「おはようございますっ!」と頭を下げていくときの笑顔のピュアさは、やっぱり似ているのかなと思ったり。ともあれ、師匠譲りの絶対にあきらめない姿勢で、山田は今日も奮闘している。

 

逆境を跳ね返そうと頑張る者たちの姿を見て、苦しんでいる選手たちも奮起してほしいのだ。

 

 

 

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3R、イン逃げを決められなかった柳生泰二は、ひたすらに肩を落としていた。なぜ思うようにいかないのだろうと、やるせない表情をヘルメットの奥で見せている。溜め息が聞こえてくるようだ。だが、最後の新鋭王座、頑張れ柳生泰二。なにしろ、その柳生の腰をそっと抱いて慰めていたのは西山貴浩。水面に出ればライバルには違いないが、ともに励まし合って、苦しみのなかから立ち上がればいいのだ。  

 

 

 

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その3Rでは、末永由楽がフライングを切ってしまっている。他の選手よりも早くピットに戻ってくるF艇の選手。これまで何度もそのシーンは見てきたが、誰もが沈痛で、こわばった表情を見せているものだ。それは末永も同じ。だが、こんなにも首をひねっている選手は初めて見た。3歩歩くごとに首をくいっとひねって「おっかしいなあ……」、それを何度繰り返したことか。ある程度自信をもってのスタートだったのだろう。その気持ちはわかる。だが、下も後ろも見ないでほしい。首をひねらずまっすぐ向いて、この雪辱を残り3日間で果たしてほしい。足的には十分、水神祭は可能なはずだぞ。

 

 

 

フライングも減点も多発している今節。もちろん、事故はないに越したことはないが、失敗など何度してもいいのだ。それを吹っ切り、やり直せるのが若さというもの。転んだら立ち上がればいい。もちろん反省はするべき。判定に不満をもつのもいい。そのうえで、失敗を取り返すべく、これまで以上に張り切って戦ってほしいぞ。

 

(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)