一撃更新
12R優勝戦
①田口節子(岡山)09
②池田明美(静岡)20
③横西奏恵(徳島)19
⑤日高逸子(福岡)16
④細川裕子(愛知)18
⑥向井美鈴(山口)15
スタートで、9割がた現役女王の任期更新が約束された。
インの田口節子と2コース池田明美の差は1艇身近く。
外の4艇は明美と横並び。
つまり、田口だけが別次元の水面を走っていた。
明美が差しに、奏恵がまくりに構えるが、もう田口の姿はない。
1本の航跡だけが1マークに残っていた。
「1マークを回って、やったぁと思いました」
田口本人もスタートから10秒で優勝を確信した、
それほどの圧勝劇。
バック入り口で、焦点はすでに2着争いに。
女王の背中にいちばん近づいたのは、
5コースからなりふり構わず握り倒した細川裕子だった。
同体の日高を強引に叩き、
横西を二段ツケマイで引き波に沈めるド派手な全速マイ。
これが細川ターンだ。
が、それほど男前な絶品ターンであっても、
あくまでも脇役でしかないのだ。昨日も今日も、
細川は田口の快速インモンキーに屈した。
追いすがる3番手の向井に強ツケマイを連発し、
2着を取りきるのがやっとだった。
田口節子、2連覇。前回は3コースから、
無心のまくり差しが突き刺さった。
プレッシャーのないハンドル捌きは軽やかだった。
だが、今回は違う。ディフェンディング女王にしてシリーズリーダー、
優勝戦1号艇。すべてが、追う立場から追われる立場に変わった
。しかも、追ってくるのは節イチパワー、絶対女王、
グレートマザー……。「準優の前夜は、ずっと吐きそうでした」
誰だって、そうなる。そして、今まで数多くのレーサーが
そのストレスに耐えきれず、イン戦で敗れ去ってきた。
今日の本番、第2代女王の日高が
当然のように揺さぶりをかけた。
スタート展示よりはるかに過激に、インを奪うようなスピードで攻めた。田口も応戦し、早めに枠番を主張する。
またひとつ、負荷がかかった。
だが、田口はそれらの重い荷物を、
わずか10秒の間にすべて
多摩川の水面に投げ下ろしてしまったのだ。
唯我独尊のトップS、女子界だけでなく艇界全体でも
高く評価されている高速モンキー。
「イン逃げ」は常に自力勝ちではあるのだが、
今日の田口は、絶対に負けないレースを自力で演出した。
最強のライバルたちに、何もさせなかった。
「今日の勝利で、ひと回り大きくなれた気がします」
一回りどころか、二回りも三回りも成長したに違いない。
4カ月後には、3連覇のかかる女子王座が待っている。
横西も日高も山川も、女子レーサーのすべてが、
さらに目の色を変えてそれを阻止しにくるだろう。
鵜飼菜穂子の大偉業に並ぶのは至難の業だが、
それを成し遂げるべき下地は完全にできた。
そう断言できる、真の女王のイン逃げだった。
あ、最後に……146を獲らせてくれて、
ありがとーゆーこりん(嬉涙)、これからも、買い続けるどー。
今度はアタマで、よろしくっ!!
(Photos/中尾茂幸、text/H)