BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――笑顔いろいろ

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 今節、重成一人の表情が非常に厳しい。まず直感的に感じられるのは、決意のようなもの。昨年の賞金王でファンを熱狂させたことは、もちろん重成に大きな満足をもたらしたが、同時に責任感も彼の中に生まれさせた。それが、素顔は陽気で優しい重成の顔をぐっと引き締めているのだ。

 今節は、機力的な不安や不満も、重成から笑顔を消していると思う。これはまあ、重成に限らず、パワー劣勢な時に厳しい顔が目立つ選手は多い。

 そんななかで4日目。重成は1着2本で1点足らずの相手待ち。崖っぷちというよりは、一縷の望みを連勝に託すという立場で迎えている。そんな重成の今朝は……笑顔! あらら。今節、初めて見たかも、重成のスマイルを。望遠レンズで狙うカメラマンさんには(中尾氏ではありません)ピースをしてみせたりもして。人事を尽くして天命を待つという心境なのか、それとも……。

 

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 なお、たまたま通りかかった石野貴之が、重成にあわせてピース! 石野も笑顔がよく似合いますね。

 

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 その重成がすれ違いざま、笑顔で挨拶してくれたそのとき、その右手のほうから「おはようございまーす」と声をかけてきたのが瓜生正義。この人の礼儀正しさは、ほんとすごい。こちらと視線が合っていようがなかろうが、こちらの視界にいようがいなかろうが、いや、むしろそういうときほど、瓜生のほうから挨拶をしてきてくれる。ハッキリ言って、恐縮すぎます! そしてもちろん、そんなときの瓜生は優しい笑み。こんなにも強くて強くてどうしようもない勝負師が、ピットではいつもこちらを癒してくれる。福岡支部の後輩たちは僕が知る限り全員がこの人を大尊敬しているのだが、それも当然のふるまいなのである。

 

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 で、公けにはあまり笑顔の印象がないかもしれない森高一真。本当はとびきり優しい笑顔の持ち主である。ただ、この人はバリバリの勝負師の顔をピットで見せることも少なくなく、そんなときには親しいはずの僕でも、ちょっと声をかけるのがためらわれる。今日は2着2本の勝負駆けで、しかも5、6枠での戦い。さぞかし気合パンパンだろうなあ、と思ったら、あらら。「おぅ、クロちゃん!」と笑顔が飛び出た。もしかしてモーターの動きが上向いた!? それを聞こうとして背中を追おうとしたら、えらい早足で控室に消えてしまった。やっぱり気合も感じさせる、そのスピードであった。

 

 

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 本日は勝負駆け。1Rでは1号艇に連勝勝負の岩崎正哉が入っていた。大嶋一也がもちろん前付けに来たが、それに怯むことなく逃げ快勝! 後半に望みをつないでいる。 ピットに戻ってきた岩崎は、ザ・ベスト・スマイル! 瓜生とレースを振り返りながら、目を糸みたいに細めて、120%の笑顔を見せていた。勝利の美酒は、やっぱり笑顔を生む!

 

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 2R、こちらも1号艇に1着勝負の吉田俊彦。赤岩善生の前付けはあったが、これもきっちりインを獲り切って逃げ快勝! 6着2本がありながらの、予選ラスト2走連勝で、見事な勝負駆け成功だ。

 ところが。レース後の吉田の表情には笑顔はほとんど見えなかった。ピットに上がった瞬間、ヘルメットの奥に細い目があったようにも見えたが、気のせいかだったか。その後はまったく笑っていなかったのだから、ちょっと意外だった。ヘルメットをとると、中里英夫や島川光男のもとに向かって、深々とお辞儀。表情に達成感や充実感はあったようにも思うが、しかし最後まで笑顔は出ないのであった。

 

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 ちなみに、エンジン吊りで吉田を囲んだ近畿勢のなかで、笑顔が目立ったのは芝田浩治。後輩の快勝が嬉しかったのだろう。本人は笑ってないのに、先輩が笑う。いろいろな笑顔が咲いていた、勝負駆けの朝……。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)