BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THE ピット――幸せな春!

「二年分の春 戸田から」 戸田のSG優勝戦には笑顔がよく映える。

 

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 優勝したのは馬袋義則だ。 本人の笑顔もそうだが、祝福する仲間たちの笑顔も一様に晴れやかだった。

 1周1マーク、鎌田義ら兵庫&大阪勢がレースを見守りながら「よし!」「……よし、勝った!!」と歓声を上げる。

 ゴール間近になったときには鎌田と芝田浩治がハイタッチもしていたが、その周辺には幸せが満ち満ちていた。

 王者・松井繁にしても、自分が勝つより嬉しそうに見えるほどの笑顔をバクハツさせていたくらいだ。

 

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 ピットに戻ってくる馬袋は、ヘルメット越しに涙をぬぐうポーズを3度繰り返していた。

 そして、ピットにあがってからの第一声は「え~の?」。

 迎える仲間たちは、声を合わせて「え~よ!!」。

 練習していたわけではないだろうに、息はピッタリ!報道陣も含めて周囲にいる誰もが、つられて笑顔を浮かべてしまうほどハッピーな時間だった。

 昨年、重野哲之が東日本復興支援競走を優勝したときは「人はこれほど嬉しそうな顔をできるのだろうか」と書いているが、これだけ多くの人たちがこれほど嬉しそうな顔を並べているところはそうそう見られはしないだろう。

 表彰式などが行なわれたあとに行なわれた共同会見の場には、芝田、勝野竜司、吉田俊彦が馬袋の到着を待っていたが、そんなケースもめったにないものだ。

 

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 馬袋は、優勝戦を迎えるまでには緊張した時間帯もあったことを告白している。しかし、それに打ち克つ強さを持っていたということだろう。

 9R後のスタート特訓のあと、馬袋はプロペラ調整をしようとペラ小屋に向かったが(本人いわく「叩いたフリ程度」のものだったという)、その途中で鎌田がJLCの「今週のベストレース」MVP表彰を受けているのを見かけると、大きな声で「おめでとう~!」と祝福もしていた。

 そのときにも、いつもの人の好さそうな顔をしていたように、緊張感は自分の中でしっかりとコントロールできているようだった。だからこそ、この“超抜バトル”を制することができたに違いない。

 

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 前半のピットリポートでも書いたことだが、優出した選手たちそれぞれがそれぞれの足に自信を持っていたようで、結果的にも、1日を通して慌ただしく作業をしている選手はいなかった。

 今垣光太郎や中島孝平は、伸びなどの面では落ちると自覚していたともいえそうだったが、今垣はマイペースで過ごしていたし、中島は中島で“今日のいい顔”ナンバーワンに指名したいほどだった。

プロペラ調整を中心にして優出選手のなかで最も長い時間、作業をしていたのは中島だった気もするが、その顔にはリラックスした笑みが浮かべられていることが多かったのだ。

 

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 坪井康晴は「一発」ありそうな気配をプンプン漂わせていたし、白井英治もそれに近かった。

 昨日の時点では白井は「いままでのSGのなかでも精神状態などはすごくいい」と話していたが、その状態は今日も持続できていたのだろう。

 隣りから節イチの伸びでこられては今日の結果はやむを得ないともいえる。レース後、本人もある程度、納得した表情を浮かべているようにも見えたが、12度挑んだSG優勝戦のなかでも今回は「次につながる部分」が最も大きな1日だったのではないかとも想像される。

 

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 次につながるという意味では、吉田拡郎もそう。

 スタート展示ではピット離れで遅れて6コースに入ることになったが、あれで動揺がなかったわけがない。

 レース後ひと段落ついたあとに「緊張しましたか?」と聞いてみると「う~ん、レース中は緊張しなかったですね」との答えが返ってきた。

 それはつまり、レースを迎えるまでには、厳しい心の闘いがあったということだろう。

 「いい経験をしました」とも話していたので、カクローが大きな結果を出すのは遠い未来の話ではないはずだ。

 

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 メンタル面の戦いという要素も強かった今日の優勝戦を制した馬袋は、やはり強かった。

 会見場で待っていた3人を中心に、日が暮れたピットで行なわれた水神祭も感動的だった。

 水面からあがってきたあと、ぴょんぴょん跳ねて、耳に入った水を出そうとしていたのも、いかにも馬袋らしい場面だった。

 「えらいことしたんちゃうかなというのがありますね、正直」

 共同会見で馬袋はそんなことも言っていたが、こういう選手がこうした結果を出してくれるからこそ、ボートレースには幸せがある。

 

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 「二年分の春 戸田から」

戸田のSG優勝戦には笑顔がよく映える。

(PHOTO/山田愼二+中尾茂幸=6枚目+池上一摩=4、7、8枚目 TEXT/内池)