BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――匠たちの余裕

 準優といっても、匠たちが朝からドタバタするはずもない。百戦錬磨の名人世代、この日の過ごし方など百も承知に決まっている。

f:id:boatrace-g-report:20171129095941j:plain

 同時に、とことん静かだった今日を考えると、準優組は朝から大きな整備に取り掛からなければならないような機力不安を誰も抱えていないということも言える。整備室には、山口俊英がピストンリング交換(だと思います。リングを選んでたから)をしている姿が目につく程度で、本体をいじっている準優組は皆無。リードバルブ調整のテーブルに何人かの姿があったが、今村豊にしても倉谷和信にしても大嶋一也にしても、コシコシとプロペラを磨いているのであった。ペラ磨きは本来はそれほど優先度が高い作業ではないはずだから、やはり余裕があるわけである。

f:id:boatrace-g-report:20171129095951j:plain

 ペラ室に、吉本正昭、新良一規、北川幸典、亀本勇樹が輪になっている姿を発見。特に会話を交わすわけではなく、黙々とペラ調整をしていたわけだが、そうか、これは広島&山口の瀬戸内軍団である。準優勝戦は半数が中国勢(西島義則は現住所福岡ですが、広島支部です)、徳島の瀬尾達也も含めれば瀬戸内軍団で過半数を超える。結果によっては、中国地区選のような優勝戦になるかも!? まあ、瀬戸内以外の準優組が「中国地区独占阻止!」などという発想をもっているはずはなく、ただただ優出を目指して戦うのみなのであるが。

f:id:boatrace-g-report:20171129100002j:plain

 瀬戸内以外の選手でいえば、動きが目立ったのは日高逸子。いや、整備や調整に動き回っていたというより、雑用作業などもこなしつつ、キビキビと動いていたという意味である。2R後だったか、高橋淳美に呼び止められて、ヒソヒソ話をしている姿もあった。最初は声を潜めて話す様子も見えたので、ジロジロと見ていてはいかんと他に目を向けたのだが、2~3分後には楽しそうな笑い声も聞こえていて、それほど深刻な話でもなかったか。なお、もう一人の女子である鵜飼菜穂子は残念ながら途中帰郷となってしまったことをお伝えしておきます。

f:id:boatrace-g-report:20171129100013j:plain

 ヒソヒソ話といえば、1Rのエンジン吊りに向かう際、先を歩く大嶋一也に駆け寄り、耳元で何かをささやく鈴木幸夫の姿があった。これも内緒話か? いや、大嶋がいきなりニッコリしたので、これもまあ軽口の類いなのであろう。もちろん、同じイン屋としての情報交換もあったかもしれない。鈴木は表情の柔らかさが目立つ一人でもあって、1Rでカドまくり一撃を決めた高橋淳美には、とっても素敵な笑顔で祝福の声をかけていた。名人世代とは思えない、若々しい笑顔であった。

 

f:id:boatrace-g-report:20171129100025j:plain

 さて、準優好枠組。今村豊は先述したように、ペラ磨き。やはりペラ磨きを始めた松野京吾と談笑しながらの作業だった。松野がやけに大声で「ああ、あれはもう終わった」と言っており、どうやら雑談の様子。今村も松野も余裕なのだ。1R終了後には、モーター格納作業を始めた吉田稔に歩み寄っての談笑。こちらは「出足が」と聞こえてきたり、手をボートに見立てて旋回を表現したりしていたので、どうやら仕事の話の様子であった。今村も吉田もニッコニコで談笑してましたが。今村の周囲にはいつも笑顔があふれている。(……すみません! 今村豊は1号艇、なんていうシリーズ突入前からの先入観で最初にアップしてしまったため、訂正しました)

f:id:boatrace-g-report:20171129100036j:plain

 井川正人は、エンジン吊りで姿を見かけた程度。装着場からはペラ室に死角となる場所があるので、そこにいた可能性はあるけれども、実際に作業する様子を目撃することはなかった。これを書いている途中で、富山弘幸と足合わせをしているのを見たから、3R後くらいに着水し、調整を始めたものと思われる。ともあれ、慌てる必要はまるでないようだ。

f:id:boatrace-g-report:20171129100047j:plain

 山室展弘は1R後にモーター装着作業。他の準優組は別の作業をしていたわけだから、むしろゆっくりした動き出しと言うべきか。作業をしながらも、1Rを戦った万谷章に「ヤマ~、ありがとう!」と声をかけられて二言三言返してみたり(マスクをしているので、声は聞こえたが言葉まではまったくわからなかった)、新良一規と談笑してみたり。その新良には、モーターとボートの取り付けの様子をチェックさせてもらっていた。定規をあてて、ボートとの角度を見ていたのだ。昨年のMB記念の際、岡崎恭裕に教えてもらったことを思い出す。ボートによってモーターとの取り付け角度が微妙に違うそうで、それを定規を使ってチェックして、場合によってはチルトを跳ねたりする、とのこと。そのときの岡崎は「今節はチルト0度にして、ふだんのマイナス0・5度の感覚なんです」と言っていたものだ。で、山室は自分の取り付けを新良に見せて、新良が「えっ!」とちょっと驚きの声をあげていた。山室の快パワーは、モーターとボートのセッティングもひとつの要因になっているということだろうか。なお、山室は装着を終えると、いったん控室に消えている。12R1号艇がプレッシャーになっている様子はひとつもない。まあ、匠たちにはそれが重圧になるはずがない、とも言えるのだけれど。(PHOTO/中尾茂幸=最初の4点 池上一摩=1号艇組 TEXT/黒須田)