BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――新制度下のSG!

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 4月12日から当地浜名湖で開催された新プロペラ制度先行導入に一節間、密着した。その節の前検とのハッキリとした違いは、「プロペラ調整所が大賑わい」という点だ。

 モーターもプロペラも、何もかもが初めてのことだった新制度第一節、選手も手探りの部分が非常に大きく(今もまだ同様ではあろうが)、選手の多くが初日はほとんどペラを叩かないままレースに臨んでいた。だから、前検のプロペラ調整所は閑散としていたのだ。

 それが今日はいきなりの満員御礼状態。さすがにこのクラスは導入後の数節で方向性をつかんだのか、それとも前操者の調整痕から何かを感じ取ったのか、さっそく調整所に陣取っていたという次第である。

 だが、よく見ていると、選手によってしていることが違う。大雑把にいうと、「ペラを叩いている選手」と「ゲージを当てているだけの選手」に分けられるのだ。

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 たとえば、ゲージを当てているだけの選手には、山口剛、松井繁、瓜生正義、石渡鉄兵。一方、ペラをガンガン叩いているのは、中野次郎、山川美由紀。もしやと思って機歴や評判を確かめると、ゲージを当てているのは好機を引いた選手で叩いているのは前節などで気配が悪かったモーターを引いた選手なのだ。

 なるほど、と言うしかない。前節や過去に噴いていたモーターは、ペラも含めて好気配だったのだ。出ているモーターの部品交換など誰もしないのと同様、出ているモーターのプロペラを叩く選手もいない。ゲージを当てて、噴いていたプロペラの形状を確認し、情報化していくことが最善の方法であるのは言うまでもないことだ。

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 というわけで、今後は前検のペラ調整所を見れば、気配もわかるということになるのかもしれない。出ている選手=叩かずにゲージ合わせ、出ていない選手=ガンガン叩く、と本当に大雑把だが、大別できる可能性があるからだ。

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 ちなみに、第一節の話であるが、噴いているモーターを手にした選手は前検や初日からゲージ調整を始める、という傾向もあった。ペラを叩く必要はないわけだから、出荷時の形状や好気配時の形状をゲージにとって残していく作業に早くから取り掛かれる、ということだったと思われる(進藤侑や佐々木康幸、下條雄太郎らがやっていた)。今日、いち早くゲージ調整に取り掛かったのは、松井繁。ドリーム戦会見でも「松井さんが良さそうだった」という声も上がっていたし、王者は前検からある程度の手応えを感じたのだと考えて間違いなさそうだ。

 

 もちろん先の二分化がそのまま当てはまるとは限らない、ということも言っておかなければならないだろう。

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 たとえば、評判機を引いたのに、けっこうガンガンと叩いていたのが辻栄蔵。タイム測定の後の話だから、試運転も含めて、感触を確認していたはずなのだ。評判通りの動きではなかった?

 いや、そうとも言い切れない。その後の辻はゲージを当ててペラをチェックしている石渡鉄兵にずっと寄り添っていて、話すタイミングをつかめなかったので、本人に確認できたわけではないが、ヤマトでの航走は好感触だったからナカシマをガンガン叩いて試そうとしている、という可能性があるからだ。これは、機会があれば明日にでも確認してみたいと思う。もちろん、ヤマトでも違和感があったから叩いたということもおおいにあるわけで、いずれにしても断言は避けておこうということだ。

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 峰竜太が引いたモーターもなかなかの評判機だが、彼もまたかなり長い時間、木槌をふるい続けていた。スタート練習&タイム測定の時間が近づいても叩き続け、「峰選手、ボートをピットに回してください」なんてアナウンスがかかったりもしていたほどだ。峰の場合は、ガシガシと叩いていたわけではなくて、非常に繊細なタッチでジワジワと叩く感じだった。若きプロペラ巧者である峰には、何らかのノウハウがあるのだろう。あるいは、まずは自分のスタイルに叩き変えて、感触を確かめようということだったか。それにしても、こうした細かい作業に取り掛かった峰は、本当に話しかけづらい。普段は笑顔で話しかけてきてくれるのに、数cmのところをすれ違っても、こちらに気づかなかったりするのだ。いったん集中すると、遮眼革がかかったように視線がまっすぐになるのが峰竜太らしさだったりする。

 

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 ドリーム共同会見からは、池田浩二を取り上げておきたい。

「新プロペラ制度になってから、いちばんいいですね。悪いところがなかった」

 あの“泣きの池田”が泣かなかった!

 自分の中に設定された高いハードルをクリアしなければ、たとえ噴いていると見えようと、相対的に見て節イチと思われようと、決してポジティブなコメントを出さない池田。その池田が、前検時点ではかなり高めの自己評価で、「明日はやることがないですね(笑)」と冗談めかすのだから、ファン投票1位に応えるだけの手応えは得たということだろう。

 明日はやることがないと言いつつも、今日はその後キャブレター調整をしており、ここで妥協するつもりは毛頭ない様子。今年は今のところもうひとつ波に乗り切れていない11年MVPだが、昨年制したこのレースから強烈な巻き返しが始まるのかもしれない。

(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)