BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――11R

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11R

①服部幸男(静岡)

②茅原悠紀(岡山)

③重成一人(香川)

④桐生順平(埼玉)

⑤井口佳典(三重)

⑥池田浩二(愛知)

 

 重成のまくり差しが鮮やかに決まった11Rが終わり、エンジン吊りのために選手たちがボートリフトの周りに集まる。服部を出迎えるために静岡勢はもちろん集結、ペラを叩いていた赤岩善生も手を止めて池田の出迎えに走った。平石和男の姿があるのは、もちろん若い後輩を出迎えるため。先輩の勝利に平山智加は満面の笑みだ。

 

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 そうしたなかに、湯川浩司の姿がある。近畿地区は誰も出走していないのに。だから、松井繁や魚谷智之らの姿はないというのに。ペラ叩きをしていた峰竜太と篠崎元志もリフトへと走る。九州地区の出走はやはりなかった。若手とはいえ、後輩が数多く参戦している今節はもう新兵ではない。それでも、峰と篠崎は走る。

 

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 さて、彼らは誰のエンジン吊りを手伝ったでしょうか? 正解。湯川はもちろん、同期の井口佳典である。もちろん、同期だからって別にエンジン吊りに出てこなくたって問題はないが、湯川は特に整備もしていなかったこともあるのか、ゆったりと井口のもとに向かったわけだ。

 

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 では、峰と篠崎は?

 正解。やっぱり井口佳典でした。井口のエンジン吊りは地区を超えたメンバーが集まったという次第である。

 峰と篠崎が、ハナから井口のもとに向かったのかどうかは確認できなかった。人手が足りなさそうなところを見極めて、加わったということかもしれない。このレース、たしかに井口のエンジン吊りは手薄だったのだ。静岡支部は、もちろん服部のもとへ。愛知支部は、もちろん池田のもとへ。そう、東海地区から3名が出走していて、それぞれ支部が違う。そして、三重支部からは井口の単独参戦なのである。放っておいたら、井口を出迎える選手が誰もいなくてもおかしくはなかった。しかし選手たちの仲間意識は、そんな寂しい状況を作ったりはしないのである。ちなみに、大嶋一也も途中からこちらに加わっていた。池田のほうは手が足りていたのだろう。

 どうでもいいお話かもしれませんが、なるほどなあ、と思った光景でした。

 

 その11Rのレース後は、他にも興味深いシーンがあった。

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 まさかの6着に敗れた池田浩二。こうした局面では、出迎えた仲間たちにおどけて見せるのが池田流である。悔しさを笑顔の中に溶け込ませてしまうのだ。エンジン吊りが終わって控室へと戻る池田。そこに歩み寄ったのは、なんと濱野谷憲吾であった。

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 池田はヘルメットをかぶったままで、その奥に見える表情は明らかにおどけたものである。そこに苦笑がまぶされていて、「やっちまったよぉぉぉ~」と吹き出しをつけるとピッタリか。一方の憲吾は、非常に神妙な顔つき。お前、どうしたんだ? 口を開いてはいなかったが、本気で心配している表情である。それでも池田は表情を変えず、憲吾もやっぱり神妙なまま池田に寄り添う。憲吾は相変わらず言葉をかけている様子はなかったが、きっとそれで通じ合うものがあったのだろう。この二人、仲良しだったんだっけか? そのイメージがあまりなかっただけに、印象に残った。

 

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 池田は濱野谷と寄り添うまでに、同じレースに出走していた選手をひとり、追い越している。桐生順平だ。

 ハッキリと確認したわけではないが、桐生は池田や茅原悠紀よりも先に、控室に向かって歩き出したはずだ。青いカポックがエンジン吊りを終えて歩き出す姿がちらりと目の端に映っていた記憶はある。しかし、その足取りが実に重いのだ。またたく間に池田に追い抜かれ、さらに寺田千恵と話しながら歩いていた茅原もあっさりと抜き去っていく。こうして差されまくった桐生はあっさりと最後尾になり、それでも歩くスピードは遅いままで、さらに肩ががっくりと落ちているのであった。

 桐生は、ひたすら敗戦を悔やんでいたのだ。

 それにしても、そのスピードのなんと遅いことよ。3着を狙って攻める局面もありながらの4着だったわけだが、それを全身で悔やみ、鉄下駄でも履いているかのように足が前に出ていかない。その足色をコメントするなら「伸びはさっぱり」とでもなるのか? ヘルメットをかぶったままで顔の表情は見えなかったが、体の表情はなんともわかりやすいもの。この悔しさをバネに、明日はハツラツと歩く桐生を見たいものだ。

 

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 その11Rのエンジン吊りが終わったところで、赤岩善生をつかまえることができた。今日のレース後の赤岩は、モーターを一通り点検して格納すると、ペラ室に駆け込んでいる。「前の人が叩いたままで乗ってたんだけど、さっき叩き直したよ」とのこと。ペラに目が向いたということは、本体調整は一通り済んだということか。それでも、また明日になればしっかりとモーターをチェックするのが赤岩流でもある。

 その赤岩流は、制度が変わって何か変化を見せているのか。興味のひとつはそれだったわけだが、赤岩は「ぜんぜん」。スタイルも信念も、まったくブレることがないのだ。そして、そうして己を貫き通すことで、結果を出す道を見つけ出そうとしているのだろう。今日は1走5着で、一歩後退。ペラを叩き直したことで、また普段通りの本体整備をしたことで、巻き返しの結果を出すことができるのか。明日もまた注目してみたい。

(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)