大嶋一也と白井英治。
このコンビ、これまで見たことがあっただろうか?
10R後にピットに置かれていた
エアー(空気が勢いよく出て
水分を飛ばすもの)の機械を
興味深く眺めていた大嶋が、
そのあとボートをぴかぴかに磨き上げていた
白井のもとに歩み寄ったのだ。
レースを終えたあとにボートを磨くのは
白井のルーティン
(ほかに今垣光太郎、佐々木康幸、江口晃生などもやっている)。
レースで濡れた部分はもちろん
放っておいても乾くわけだが白井は
それだけで良しとはせず、
タオルで納得いくまで磨くのである。
そこに、大嶋が歩み寄った。
遠目に見ていたので、
会話の内容はもちろん聞こえてこない。
それでも、大嶋と白井がごく自然な雰囲気で
会話を交わしているのはわかる。
大嶋は後輩に対して威圧的ではないし、
白井も大先輩に萎縮したりする感じではない。
SGやGⅠで何度も何度も顔を合わせているわけだから、
ごく当たり前の光景には違いないが、
レアな組み合わせを見るのは
やっぱり楽しいものである。
レアな組み合わせといえば、
今垣光太郎と木村光宏というコンビも見かけた。
整備室出入口の脇にあるペラ調整所で話し込んでいたのだ。
木村のけっこう大きな声が聞こえてきたので覗きに行ったのだが、
その話し相手が今垣だった。
この二人が話し込んでいるのを見た記憶もほとんどない。
場所が場所なので、話の内容はもちろんペラについて。
新プロペラ制度が導入されて約2カ月、
選手は情報を欲しているし、またそのなかで
何かを掴んできた選手も少なくないだろう。
構図としては、持論を得た木村が今垣に説明をして、
今垣が相槌を打ちながら、時に質問も交えて、
聞き入っているといった感じ。後輩に教えを乞う先輩、
という図にも見えるわけだ。
こうして、選手たちのプロペラ理論はどんどん進化していく。
そしてまたレースも進化していくだろう。
どうでもいいことだが、途中まで今垣を
「光ちゃん」とも書いていたのだが、二人とか「光ちゃん」ですな。
こうちゃん、みっちゃんと読みは違いますが。
というわけで、すべて今垣に統一いたしました。
どうでもいいことだけど。
ごく当たり前のコンビももちろん目に入ってくる。
香川の先輩後輩、重成一人と森高一真だ。
10R後、着替え終えた森高は重成とともにピットに登場。
二人で向かった先はといえば、重成のボートだった。
重成が操縦席に乗り込んで、モンキーターン!
それを見て声をかける森高。
すると重成は足の位置を変えたりして、何か説明している。
これは「重成一人のターン講座」なのか!?
森高が重成に教えを請うた、という構図だ。
10R、森高はインから先マイしながら
瓜生正義に差されてしまっており、ターン時のフォーム、
足の位置、重心の置き所など、ターンにおいて疑問が生じたのだろう。
GⅠ覇者であっても、まだすべてが完成したわけではない。
こうした向上心が、森高をさらに進化させるわけである。
ま、なんか二人ともやけにニコニコと笑ってましたけどね。
明日の試運転でおそらく森高はここで得たものを試す。
それがもしかしたらレースにも活きるかもしれない。
明日の森高にはちょっと注目してみよう。
11R、山崎智也が4着に敗れている。
ここで何度も書いたが、レース後の智也は
笑っていることも少なくない。苦笑ではなく、笑っているのだ。
仲間とも笑顔で話す。それを僕は、
胸にたぎる悔恨を笑顔で隠している、とにらんでいる。
今日もまた、控室に戻る際にやけにニコニコしていて、
いつもの智也だよなあ、などと思っていた。
着替えを終えて、モーター返納に向かうため、
控室から出てきた智也。そこに発見したのは馬袋義則。
71期の同期生だ。智也が不意に近づく。そして……バシッ!
馬袋の右腕を思い切り叩……こうとした。
たぶんかすってはいて、馬袋がうわっと肩をすくめる。
智也はもちろんぶっ叩くつもりはなくて、
しかし思い切り右手を振り下ろし、
かするくらいの感じで馬袋に接触したのだ。
ようするに、じゃれついているのであり、
そしてそれは間違いなく悔恨の表現だろう。笑っていたって、心許せる同期の前では胸の内を表現してみせた、ということである。
で、馬袋は去っていく智也の後ろ姿に、
にっこにこに笑いながらボソリと「な~んやねん」。
その口調がなんとも優しく、
同期生同士の心の絆を感じさせるものなのであった。
馬袋の人柄、やっぱいいなあ。
(PHOTO/中尾茂幸=大嶋、白井、今垣、木村 池上一摩=重成、森高、山崎、馬袋 TEXT/黒須田)
※月ちゃん様 服部選手の愛用タバコは
「ナチュラルアメリカンスピリット」のようです。
パッケージは黄色。100%無添加タバコっすね。シブいっす!