THE勝負駆け①ボーダー争い/ミラクルGOD!!
「神が降りてきました」 勝利者インタビューでの本人の言葉どおり、
まさに神がかり的なミラクル予選突破だった。
10Rの丸岡正典は、紛れのないメイチの①着勝負。
4号艇だけに「カドからスタートを決め、
さらにトップ級の伸びを生かしきれるかどうか」が
運命の岐路と思われていた。が、いざ12秒針が回ってみれば、
起こしから立ち遅れて1艇だけ味噌っかすのコンマ25どん底S。
5コースの寺田祥が04なのだから話にならない。
2連単の4流しを買っていたチャーリー池上が、
スリットのはるか手前で「奈良に帰れーーーーーーっ!!!!!!」と
絶叫したのだが、その気持ちはわからなくもない。
寺ショーにとって、丸ちゃんは存在しないも同然。
スリット直後にひょいとドカ遅れ艇の前を横切り、
そのまま内3艇まで呑み込んだ。
昔は差し屋のイメージが強かった寺ショーがどこでどうなったのか、
ここ数年は獰猛なまくり屋に変身した。
迷いがないから攻め潰すのも早く、
1マークの手前で今節2発目の寺ショまくりが決まった!! と思った。
神が降臨したのは、この瞬間だ。ドカ遅れで早々にまくられ、
①着勝負はおろか⑥着確定に見えた丸岡の真っ青なボートが、
寺ショーの内に突き刺さっていた。
ありえない。まじ、ありえないって、あんなドカ遅れまくり差し。
もっと正確に言うなら「ドカ遅れまくられ全速連動まくり差し」。
あの隊形から、イン代わりの奇襲でたまたま勝ったのなら
まだ理解できる。百歩譲って、これが一般シリーズだったら
スピードの違いで実現するかもしれない。
だが、これはSGなのだよ、丸ちゃん!! いったい何があったん??
結論。本人もわからないのだから、
あの勝因を掘り下げて考えるのはやめます。
丸ちゃんは①着条件だった。まくられたからには勝ち目もないし、
ダメモト(半ばヤケクソ?)で握ってぶん回してみた。
そこに神が舞い降りて、聖書の「十戒」のごとき奇跡の道を作り、
丸ちゃんの艇をそこに誘った。そういうことにしよう。
とすると、つまりは尼崎の竜神様は、
丸ちゃんを愛しているということになる。
だとすると……ミラクルは続く、かも!!??
今日のボーダー争いで、いかにも勝負駆けらしい
残酷な競り合いを演じたのは、
11Rの吉田拡郎VS今井貴士。
やまと軍団のふたりだった。ともに悪くても④着は欲しいふたりは、
田村の前付けを許して5カド今井、6コースに拡郎の並び。
昼間、シギー中尾の前で
拡郎「行ってくれよー」今井「はいーーっ」
ふたり揃っての予選突破を期していたそうだが、
今井の攻めはまくりきるに至らず、
拡郎はマーク戦を捨ててその上をぶん回した。
結果、道中は2艇による4着争いに!!
よりによって4着争い……結束してW突破を目指したはずのふたりが、生死を賭けてガリガリ激しくやりあった。
最後は、経験とテクニックの差で拡郎先輩に軍配が。
明暗がくっきり分かれるやまとバトルは
私の胸を熱くさせたがものだが、今後も同じような境遇で
戦うことがあったらば、ピットに帰った後に笑顔で抱き合えるような
バトル=1着争いをしてくれよ。
THE勝負駆け②予選トップ争い/三つ巴決戦
昨日まで予選トップだった太田が先に崩れ、
予選トップ争いは大混戦になった。
拡郎と今井が雌雄を決する4着争いを演じた
11R、その前方では井口佳典と重成一人の
予選トップの可能性が問われていた。
重成が2着以内なら、井口も12Rの結果も関係なく
自力でのトップが確定するこのレース。
1号艇・井口の逆転トップがあるとすれば、
とりあえずただひたすら逃げるのみ。
井口は鮮やかなイン逃げを決めた。
問題は2コース重成の順位だ。
4着ならふたりの立場が入れ替わって井口が暫定トップに立つし、
2着以内なら先に書いたように重成のトップ当選が決まる。
重成は……そのどちらでもない3着だった。
重成8・00、井口7・67。まずは井口が脱落する。
が、まだ重成のトップは確定してはいない。
12R、ここで1着なら8・00、重成と同率ながら着順点の差で
逆転トップに立つ石野貴之がいた。進入は2コース。
スタート同体から、石野は鋭い差しハンドルを入れた。
これが決まればトップ、イン中島を捕えきれずに2着なら
予選3位止まり。大きな大きな差しハンドルだ。
この舳先が、ずっぽりと入った。そう見えたし、
バックでさらに伸びる石野と中島の舳先が並んだ。
あとは2マークをしっかり回れば……そこに、刺客が現れる。
3号艇の重野哲之が斜め内に切り込み、先マイを狙ったのだ。
重野にも、1着なら予選2位=準優1号艇という
美味しいミッションが課せられていた。
この強襲に、差しか全速マイか、
石野は少し迷ってから握りマイを選択したように見えた。
そして、このわずかな躊躇を見逃さないのが賞金王レーサーだ。
中島はすかさず鋭角な差しを入れ、
逆に石野の内側に舳先をねじ込んだ。
そのまま内のアドバンテージを生かして先着。
この瞬間に重成一人の予選トップが確定し、
石野は同3位に甘んじた。痛恨とまでは言わないが、
Vからやや遠のく1周2マークの攻防になってしまった。
もちろん、行き足を最大の武器とする今節の石野だけに、
逆にこの3位が幸いかる可能性も十分にあるのだが……。
(photos/シギー中尾、text/H)