BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――ベスト6の心理とは……

 

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選手の心理というものについて、時々考えさせられる。全員が1着を目指しているのは当然のこと。しかし、準優勝戦は2着でもペケではないのだ。優勝戦の権利が得られるのだから。 10R、2着の峰竜太はガッツポーズ! 優出を決めたのだから、当然ではある。共同会見室に足を踏み入れた瞬間にもガッツポーズしていて、喜色満面なのだ。だが、それは1着を獲れなかった悔しさを、優出の喜びに変換しているだけではないのか、と思ったりする。峰竜太にはそれはないか、という気もするけどね。とにかく、レース後の峰はひたすら喜びを表現はしていた。会見場を去る時、チラリと目が合うと、サムアップしてきたりして。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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一方、11R2着の松井繁は、どこか不機嫌さすら感じさせるたたずまいだった。優出できたことが嬉しくないわけがないけれども、しかし敗戦は敗戦。「100%の力を出さなくても全部のレースで1着を獲る、というのが理想」と語っていた松井にとって、「いいレースはできたと思うけど、今のエンジンではあんなふうに先に回られたら差し切れない」という点については不満を抱えているのに違いないのだ。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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9R2着の原田幸哉は、どちらかといえば峰寄りのふるまい。ヘルメットの奥では目を細めていて、優出の喜びは隠せないようだった。で、原田は11Rのレース後、松井を出迎えると手を差し出している。優出おめでとう、である。松井はその手を握り返しているが、決して「ガシッ!」という音が聞こえてくるような力強いものではなかった。それを見たこともあって、冒頭のようなことを考えてしまったのだなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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勝者は明るい表情か、といえばもちろんそうなのだが、共同会見でネガティブなコメントしか言わなかった池田浩二の思いは果たして、とまた考える。とにかく、泣きまくったのだ。 ちょっと待て、池田の泣きコメントは買いじゃないのか? そんなふうにも考える。池田の泣きコメントは「自分に課しているハードルが高いから」。たとえば、今日も「ターン回りは最低限にはなった」と言っていたが、その「最低限」が人よりもずっと高いところにあるのだ。ただ、今日の泣きコメントには「他者との比較」があった。「スタート練習のときから、弱い感じがした。出られる感じでしたね」。これは「池田の中のハードル」の問題ではないのだ。それを実感している池田は、不思議にも今年のSG初優出に安堵はしていたとしても、不機嫌な部分も心に残しているのではないかと思える。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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一方で、山崎智也からは充実感しか伝わってこなかった。地元SGで、4カドまくり一撃での優出。そりゃあ、智也の気持ちも弾むというものだろう。 カポック脱ぎ場では、智也の外からついていって、いったんは2番手争いに持ち込んだ馬袋義則が叫ぶ。「ごめーん! 連動できへんかった~……」「何やっとんじゃーって思ったわ!」 願わくば同期ワンツーを、と臨んだ舞台。そのチャンスもありながら、かなわなかったことはお互いに無念であろう。それでも、智也にとってこの優出はただの優出ではない。「優勝できる確率は6分の1以上になっている。ただ、分母はわからないですね(笑)」 

 

 

 

 

 

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グラチャンで優出したとき、喫煙所で出会った智也は「これで6分の1になったね」と言った。そのグラチャンを上回る確率を示した今回、準V以上の期待をかけてもいいはずだ。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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で、誰もが認める超抜パワーの瓜生正義。共同会見では「瓜生が5だとすれば、自分は?」という質問に対して全員が下の数値を答え、松井など「みんな2か3ちゃう?」とまで言っていたように、他のベスト6メンバーも瓜生を節イチととらえている。瓜生自身、それを今日はついに認めもした。そのうえ、すわるはポールポジションの1号艇。本来なら優勝への手応えにあふれていなければおかしい。ま、瓜生正義ですからね。いつでも謙虚。ということは、池田同様、自身に課すハードルが極端に高い。「まだ完璧じゃないです。といっても、たしかに分はいいし、あとは僕自身のわがままなんですけどね」は、まさにそのことを証明している。 

 

 

 

 

 

 

 

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では、「コースは絶対インということではなく、臨機応変に」という言葉をどう受け取ったらいい? ちなみに、6号艇となる松井も「臨機応変」と言っていた。1号艇と6号艇が同じ言葉を口にしたのだ。SG優勝戦で1号艇が「臨機応変」と言ってるのを聞いたことないぞ。とはいえ、もちろん「実際にはイン」なんだろうけど。それでも「臨機応変」と口にする瓜生。うーん……。

 

 

まあ、そんなことをいちいち考えずとも、明日になれば6人は全力で戦う。瓜生は絶対に負けられないという思いだろうし、超抜瓜生が1枠にいる以上、他の5人が策を練らないわけがない。そして、明日は選手の気持ちもはっきりとわかりやすいわけだ。全員が1着以外には意味がない、と考えるはずだから。SG合計31Vの超豪華メンバーの優勝戦、そこにどんな思いが渦巻くだろうか。(PHOTO/中尾茂幸=松井、池田、智也 池上一摩=峰、原田、智也&馬袋、瓜生 TEXT/黒須田)