BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――新人王と前年度覇者

今朝のピットは実に静か。勝負駆けといえば、

ピットにも闘志が充満しているとイメージされるかもしれないが、

案外こんなものだったりする。で、面白いもので夕方くらいには

勝負駆けに失敗した選手が本体整備をしていることが多かったりして、一般戦回りになっても勝負を投げない選手たちの姿が清々しい。

それが予選落ちの悔しさを明日以降にぶつけようという“負けず嫌い”

から発せられるものなら、なお清々しいというものだ。 

 

 

 

 

 

 

 

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あれだけ密集していたペラ調整所も隙間がたくさんできていた。

1Rが終わって覗き込むと、叩いていたのは5人。

こちらから見て左から上野真之介、茅原悠紀、

西村拓也、川下晃司、坂本浩仁。もっとも、

これは次に覗きに行ったら、また変わった面々になっているはずで、

ただただ、朝の時間帯には人影が少なかったということに過ぎない。

あ、あと中田竜太がゲージ擦ってたな。

アシには当たりが来たということかもしれない。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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本体整備は誰もしておらず、装着場にも

選手の姿はほとんど見当たらない。下出卓矢が

丁寧にチェック作業をしているのが目立つくらいだ。 

 

 

 

 

 

 

 

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そんな静かなピットに岸蔭亮が登場。

さらに1Rを終えた和田兼輔もあらわれ、岸蔭にジェスチャーを見せた。すると激高した岸蔭が和田に絡みつき、

肩をつかみ合って乱闘気配。岸蔭が膝蹴りを一発見舞うと、

和田も背後からやはり膝蹴り。ピットで大ゲンカが勃発だ!

……なんてわけはもちろんなくて、じゃれ合う先輩と後輩の図、である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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その後もさらにじゃれ合いながら、

和田は「予選落ちしたのに、こんなことしてる場合じゃないっすよ~」。「予選落ち!? なはははは、ドンマイドンマイ~」と返す岸蔭に、

兵庫軍団は実に強い信頼感で結ばれているのだと感じた次第なのでありました。後半は岸蔭7R1号艇、和田は8R1号艇。

岸蔭は勝って相手待ち、和田は本人が言うとおり

ボーダーに届かない可能性が濃厚だが、

何があるのかわからないのがボートレース。

気合のイン逃げ、たのんまっせ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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さて、ピットは静かだが、水面は熱い。

2R、山田康二と高山智至が壮絶な先頭争いを演じた。

1周2マークは唸るほどのターンで逆転した山田だが、

2周1マークでふたたび並ばれ、

2周2マークではふたたび渾身の差し返しを狙ったが、

これが振り込み、失速となってしまっている。

これが黄金井力良を巻き込んでしまって、妨害失格に。

新人王の徳山新鋭王座は終戦となった。 

自身もエンストした山田は、レスキューの上で直立不動、

スタンドに向けて何度も何度も頭を深々と下げていた。

10回以上は下げていたと思う。舟券を買った観客に向けての

礼儀であり、当然の行動かもしれないが、

いちばん悔しい思いをしているのは山田本人だと思えば、

その姿はせつない。ピットに戻ってきた山田は、

やはり関係者や選手に頭を下げながら、

なんとも力ない顔でうつむいていた。その落胆ぶりは、

とにかく痛々しく映ったものだった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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3Rでは、松尾昂明が4カドから好発。

しかし伸び切れずに秦英悟の先行を許し、

攻め筋を失っている間に4番手まで下がってしまった。

ピットに戻ってきた松尾は、仲間に笑いかけたりもしているが、

目がまったく笑っていない。輪を離れた途端に、

溜め息をつく表情になり、不本意な結果を悲しんでいるようだった。

松尾はこれで後半7Rは1着勝負。

ディフェンディング・チャンプが崖っぷちに立たされた。

そんな状況も、松尾の顔を暗くするものだったか。 

本人たちは肯定しないかもしれないが、二人とも間違いなく、

新人王という肩書と、前年度覇者という立場を、意識して戦っている。

だから山田は、実は1着相手待ちという状況でも(あるいはそうだから

こそ)、全力で1着を獲りにいったし、

松尾も予選落ちの危機に表情を曇らせる。

最低でも準優進出がノルマだと、彼らはその背負ったものも含めて、戦っているわけである。それが彼らを成長させるだろう、

などというのはおこがましい物言いだが、しかし背負って戦った分、

報われてほしいと思う。というわけで

とりあえず7Rの松尾は応援しよう。

 

(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)