BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――幸せ!

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しみじみ幸せな優勝戦だった。 もちろん主役は平尾崇典。

朝ピットの記事で「動き出しが早かった」と書いているが、

「1号艇ということを考えたくなくて、ペラ叩いて試運転してペラ叩いて試運転して、を一日続けていた」とのこと。

実は平尾の中にプレッシャーと戦う心があったということだ。

それを乗り越えての優勝! ヒーローの帰還を撮影していた

池上カメラマンが、「少し泣いてましたよ」と耳打ちしてくる。

地元SG優勝戦で1号艇に乗り、重圧をはねのけて優勝。

これは平尾にとってこれ以上ない感動だったのだ。

ふだんピットでは飄々としているように見えるが、

それはあくまで表面的な印象だろう。 

伯父さんにあたる山本泰照さんも、感動の面持ちで

ピットにあらわれた。松井繁が山本さんの肩をぽんぽんと叩き、

がっちりと握手! 泰照さんの顔がくしゃくしゃになっていた。

平尾はTVインタビューやらウイニングランやらがあって、

なかなかピットには戻ってこなかったが、その分、

泰照さんに祝福の声がかけられ続けた。

「も~う、ドキドキしちゃってなあ」と笑う泰照さん。

当人がそこにいなくても、幸せな雰囲気はたしかにそこにあった。  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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共同会見では、「黒明(良光)さんにすごくかわいがってもらってきたので、結果を出したいと思ってきました。それができてよかったです」とも語っていた。今は児島で展示やレースの解説をしている黒い弾丸。

平尾の視線を追うと、そこに黒明さんがいた。

涙を流しながら、平尾の言葉を聞いていた。

岡山のドンというべき黒明さんにとって、愛弟子とも言える

平尾の地元でのSG初制覇は、このうえもなく嬉しいことなのである。  

 

 

 

 

 

 

 

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水神祭を待つ岡山勢は、誰もがにこにこと穏やかに笑っていた。

茅原悠紀は「お前も飛び込め」と煽られて、最初は嫌がっていたが、

気づくと乗艇着に着替えていた。

飛び込む気マンマンになっていたのだ。

敬愛する先輩のSG初制覇。

しかも舞台は自分たちを育ててくれた場所。

「やっぱり一緒に行くべきですよね!」と新鋭チャンプは

目を細めていた。  後輩たちも祝福に駆けつけている。

山口達也、守屋美穂、喜井つかさたちが、

先輩の快挙を直接祝おうととやって来たのだ。

もろもろの行事を終えて平尾がピットに戻ってくると、

山口が平尾の胸に飛び込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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がっしりと抱き合った平尾は、

ふだんピットでは見せないような、爆発した笑顔を見せていた。

ん? 山口達也もなぜか乗艇着を着ているじゃないか。

さっき私服を着ていなかったっけ? 

茅原のものを借りたようだが、山口も嬉しくてたまらないのだろう。 

お子さんたちも、カッコ良すぎるパパを出迎えに、

レース場に駆けつけている。

上の子は野球のユニフォームを着ており、

「今日、優勝したんだよ!」。うぉっ、親子優勝! 平尾家にとって、

こんなにもめでたい日はそうそうない。

平成24年11月25日という日を、

ご家族は一生忘れることがないだろう。  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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というわけで、水神祭。すでに午後5時30分を過ぎ、水面は真っ暗。

テレビライトに照らされながら、まず平尾が投げ込まれて、

山口と茅原が次々に飛び込んでいった。「さむ~い!」と

悲鳴があがっていたが、本来の意味とは違うけれども、

まさしく“嬉しい悲鳴”である。  

レースが終わり、水神祭挙行まで1時間以上。

主役の平尾は表彰式やら会見やらとあちこちを駆けまわり、

仲間たちは相当な時間、待たされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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そんな状況を茅原は「SG優勝するって、すげえなあ」と

しみじみ呟いていた。岡山勢の優勝は本当に久しぶりだが

(05年グラチャンで山本浩次が優勝)、

茅原SG優勝後にこうした行事がたくさん待っていることを

初めて知っただろう。そう、SG優勝というのは、本当に特別なこと。

これを知った茅原は、もちろん川﨑智幸も吉田拡郎も山口も、

次は自分が主役としてこの時間を送れるべく、

ますます奮闘するだろう。 平尾崇典、おめでとう! 

見ているこちらまで、本当に幸せを味わいました。

次は賞金王で会いましょう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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レース後、まず注目したのはやはり、岡崎恭裕である。

トップスタートを決めた。数字的にはコンマ18だったが、

スリットでたしかにハナを切った。これでひとつのハードルを越え、

次に進むことができるのか。それが気になったのだ。 

岡崎は、ぎゅっと唇を結んで、目元をひきつらせていた。

ひたすら悔しそうな表情を見せていたのだ。

敗戦への悔恨。あるいは、少し様子見のスタートとなってしまったことへの悔恨。自分を信じてスタートしていれば、

他が決して早いスタートではなかっただけに、

1マークは違う展開になっていたかもしれない。

それもまた、苛立ちにつながったかもしれない。

ただ、「スタート遅れはしない」というノルマを果たせたことは、

胸を張っていいのではないだろうか。完全にハードルを越えるのは、

次の優勝戦で再びスタートを決め、先頭を走ることだろう。

その第一歩はこの児島で記したのだと信じたい。

岡崎恭裕が真にSGに戻ってきたのは間違いないということは、

言えるはずだ。  

その他の4人は、比較的淡々としていたように思える。

 

 

 

 

 

 

 

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田村隆信が、モーター返納作業をすべて終えた後、

まるで脱力してしまったかのように疲れた様子を見せたのは

印象的だったが、しっかりとコースを獲り、1マークを攻め、

つまりはやることはやったのだという充実感がそこに込められていたのは確かだと思う。もちろん、結果を出せなかったことへの

悔恨のほうがずっと大きいだろうが。  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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篠崎元志も、やることはやったのだと感じた一人であろう。

スタート展示6コースながら、本番は意表を突く4コース奪取。

明らかに、勝つために選んだ戦略だった。

岡崎との3番手競りに敗れ、結果は5着。

最後は田村と接戦になっており、返納を終えると

「僕、最後は何着でした?」と尋ねてきている。

5着と知ると、不満げに「えーっ」。やることはやったとしても、

着を落としたことへの悔いは残ったのだろう。  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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太田和美は、ピットに戻ってきた直後は

さすがに厳しい表情をしていたが、返納作業の間は

穏やかな表情になっていた。それは瓜生正義も同様。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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賞金王当確、数々の大舞台を経験してきた二人は、

悔しい思いも人一倍多くしてきたであろう。

だから、また次の戦いへと向かっていくすべも知っているはず。

淡々としているように見えても、

次への闘志は胸の奥で燃えているのだと思った。

 

 

 

(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)