寒いっ! 節イチの寒さである。
気温3℃。
風はキンキンに冷えて、一瞬で手がかじかむ。
巷ではクリスマス寒波とか言われてますが、
賞金王寒波ですよ、これは。
震えていたら、背後から「おはようございます~」と声がかかった。
西村拓也だ。
なんか様子がおかしいな。
「落水しました~」 よく見ればビショ濡れ!
試運転で落水したそうだ。さ、さ、さ、寒ーーーーいっ!
西村選手、早くお風呂へ!
こんな日に、レースでもないのに落水とは、
気の毒な限りである。
そんな朝だというのに、池田浩二は
横澤剛治を水面へ突き落とそうとするのである。
1Rのエンジン吊り。池田は横澤の背後に忍び寄った。
もちろん横澤もこんな寒い日に水に落ちたくなどない。
というか、寒くなくたって突き落とされたくはないわな。
横澤は池田にしがみつき、
池田はそれでも寄り切ろうとする。
大相撲住之江場所か!
とにかく、池田はリラックスしている。
その1Rで1着の川﨑智幸に
「やったな~」と西島義則が声をかけた。
最終走で今節初1着の川﨑。
先輩の祝福に目を細めていた。
西島の次の言葉は……「さむーいっ」。
ですよねえ、西島さん。
安芸の闘将ですら口に出してしまうほど、
本当に寒い!
この気候の中、レースに調整にと戦う選手のみなさん、
本当にごくろうさまです!
この寒風を切り裂いて、
石野貴之は精力的に試運転を続けていた。
1R発売中もそうだし、
2R発売中の試運転OKランプが点ると
即座に水面に飛び出して行ってもいた。
勝つためには寒いなどとは言っていられない。
というより、寒さなど二の次になるのが当然である。
試運転後は丸岡正典、田中信一郎と手応えを確認。
ボート操縦は全身運動だから、
ヘルメットをとった3人の顔は赤く上気している。
それがまた水面の風の冷たさを物語っており、
ふたたび水面に飛び出していく石野には思わず
「がんばれー」と心の中で呟いてしまう。
試運転をしていたのはシリーズ優勝戦では石野くらいだったが、
もちろん他の選手も室内でただ暖をとっているわけではない。
篠崎元志はペラ調整。
もちろん温かいところを選んで作業しているわけがない。
エンジン吊りにはもちろん真っ先に飛び出していき、
積極的にお仕事。まだまだリラックスしている様子で、
ハツラツと動き回っていた。
石渡鉄兵もペラ調整。
1R後にプロペラを外して、作業を始めている。
声をかけて少しだけ声をかけたが、
その表情や雰囲気は普段とあまり変わらない様子。
こちらもまた、緊張感に襲われることなく
寒い朝を過ごしているようだ。
足はかなりいいとのこと。
H記者もシリーズでは節イチでは、と言っている。
このまま落ち着いて過ごせれば、SG初制覇も充分!
で、2Rまでについに装着場で姿を見なかったのは、
湯川浩司だ。
このまま顔を見ずに朝ピットを去るのかな、
と思っていたら、装着場のど真ん中にある控室へと
入っていく姿を見かけた。
室内では田中信一郎と談笑する様子も。
この余裕が逆に不気味に感じたが、果たして。
(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)