BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――Golden Morning

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 朝イチで顔を合わせたのは、太田和美だった。ボートを整備室前に移動し、ギアケースを外す。「ここまできたらアシ云々ではない」と今朝の公開インタビューでも語っていたが、上積みがいらないという意味ではない。決定戦のなかではやや弱めだと認識している以上、諦めずにパワーアップをはかるしかない。 

これが公開インタビュー直後のこと。瓜生正義はまだ花束を抱えており、つまり太田のインタビュー後の動きは実に素早かったことになる。

敬愛すべき先輩に人気があつまる状況の中でも、もちろん太田はその先輩を本気で打ち負かすつもりなのだ。

 

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 では、瓜生がのんびりと構えていたかというと、そういうわけではない。花束を抱えたまま控室に消えると、それから数分後には装着場にあらわれている。まずはプロペラ調整から始めるようだったが、もちろん5号艇だからといって勝利への思いは変わらない。表情はなんとも明るく、試運転で落水した西村拓也を見ながら大笑い。また、坪井康晴を望遠レンズで狙っていたカメラマンに気づき、「あ、すいません! 邪魔しちゃった」と足を止める“らしい”シーンもあった。最高峰に挑む日であっても、その人柄はなんにも変らない。

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 瓜生とは反対に、普段はあまり伝わってこない気迫がびんびんと伝わってくるのは、平尾崇典である。

チャレンジカップの優勝戦の日も、もっと飄々としていた記憶があり、

闘志を内に秘めるタイプと認識していたが、今日はなにしろ足取りが力強く、表情こそ普段とそれほど変わらないが、思いの強さは感じられる。それでも声をかけると、丁寧に受け答えしてくるあたりは変わらず、

マイペースで過ごすなかでも自然と気持ちが前へ前へと向かっているのだろう。

 

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 ペラ室を覗き込むと、山崎智也が外から見て左奥の隅で、鋭い目つきになっていた。

ギアケースが壊れて交換したと公開インタビューでは言っていたが、

そちらには不安がなかったということだろう。隣には川北浩貴。ダービーでもチャレカでも見られた仲良しコンビは、ペラ室でも膝を突き合わせている。1Rが終わって数分後、智也はペラ室を出てモーターに装着を始めた。そこに、川北が歩み寄って言葉をかける。

ダービーでは逆だった。川北に智也のほうから声をかけていた。

結果は残念だったが、川北にとって大きな力となったはずだ。

逆も同様。智也にとって、川北の存在がそこにあることは、心強いことに違いない。  

 

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 井口佳典もペラ室にいたが、こちらは一人黙々と叩いていた。雰囲気などについては、今節通して変わらない。というより、そもそも気合乗りが強く感じられた一人だ。08年の優勝時には、ひたすら表情が厳しく、周囲には目もくれない様子があったものだが、あれから4年経って、やや余裕が生まれているか。

寒い寒いと震えているこちらに気づいた井口は、目を見開き、軽い笑顔になって、ペコンと会釈をして通り過ぎて行った。4年前はこんなことなかったもんなあ。

 

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 で、王者。太田がギアケースを外している頃に悠然と闊歩している姿を発見。地上波中継のインタビューを受けると、ポケットに手を入れて風格たっぷりに控室に向かった。余裕綽々じゃないか。と思ったら、すぐに出てきて装着場にある自艇のもとへ。ハンドルとモーターをつなぐワイヤーをセット、調整すると、颯爽とボートをリフトへと運んで行ったのだ。動き出しが早かったわけではないが、動き自体は実に迅速。寸分も無駄がない。これもまた王者の強さなのかと唸った次第である。 

 それにしても、表情にはなんとも艶がある松井繁。

雰囲気は間違いなく節イチである。

(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)