BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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賞金王ファイナル 私的回顧

出来すぎサンタ

 

12R賞金王決定戦

①松井 繁(大阪)22

②井口佳典(三重)18

③太田和美(奈良)21

④山崎智也(群馬)19

⑤瓜生正義(福岡)22

⑥平尾崇典(岡山)20

 

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 智也ァ、お前さん、ちょっとカッコ良すぎやしないか??初日・開会式「今節はカミさんの力をもらってやって来ました。優勝します」2日目・モーター抽選会「カミさんが舞台を整えてくれたんで、優勝しかないと思ってます。優勝します」今日・優出インタビュー「1号艇が王者なんで、ここを勝って今年の主役になります」

 言うだけなら、誰でも言える。でも、それを実現させるのは、とても難しいことだ。賞金12位でギリギリ滑り込んだレーサーなら、なおのこと。

 

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 山崎智也は、クリスマス・イヴの夕刻にそれを成し遂げた。絶品のまくり差しで。4カドからわずかに覗くと、「まくらんかな」の勢いで太田和美を絞った。太田に、抵抗できるだけの伸び足はない。軽々と超えた。

 このまま松井まで叩きに行くのか、智也??

 と思ったところで、智也は舳先を左に向けた。逃げる松井繁と差した井口佳典のど真ん中に、その舳先は食い込んだ。振りほどこうとする王者。舳先を捩じ入れたままフルッ被りで直進する智也。

 

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 雌雄を決するバックの伸び比べ。舳先が抜ければ、松井の4度目の賞金王が決まる。昨日までの足だったら、そうなっていただろう。今日の智也の足は、節イチを自認する王者に負けなかった。

「いろいろ迷って、最後は自分の感性を信じて思いきって叩いてみた」

 その感性が生きた。舳先をしっかり掛けたまま、智也は2マークを先取りした。差しを狙った松井は、切り返し気味に攻めてきた瓜生とそれをブロックしようとした太田に進路を塞がれた。この瞬間、4度目の黄金ヘル戴冠の夢は絶たれた。

 

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 栄光のゴール。高らかに右手を突き上げ、さらに人差し指も天空へ突き刺す。1マークの手前、状態を後ろに反らして艇尾にもたれながら、今度は両手を高らかに突き上げた。スタンドの1マーク付近で見ていた私は、この一連のパフォーマンスがあまりにもサマになりすぎていて、ちょっとイラッとした。カッコ良すぎるにもほどがある。だが、周辺の群集は、みんなこのイケメンに魅了されていた。うっとりしていた。わかる。わかるが、カッコ良すぎるにもほどがある。

 

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 ウイニングラン。1マークの突き当たりまで行って反転するとき、智也はエンジンを唸らせ豪快なモンキーターンをやらかした。ターンしながら減速し、顔だけスタンドに向けて群集を見回した。そして、にっこり笑った。

「ウォォォォ!」

「キャーーー!!」

 男たちの雄叫びと女たちの黄色い声が、爆音となって響いた。やっぱりみんな、うっとりしていた。ロックアイドルのライブ会場みたいだ。わかる。わかるけど……あ。

 このとき、私は5年前のクリスマス・イブを鮮明に思い出した。あれは、住之江ではなく福岡だった。6コースからのまくり差しV。凄いレースだった。そして、カッチョ良すぎた。ウイニングランで、みんなうっとりしながら雄叫びと黄色い声を出していた。そして、私はカッコ良すぎる智也に、得たいの知れないジェラシーを感じていたのだ。

 

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 あのときと、同じじゃん。

 いや、大きな違いがあった。5年前はシリーズ優勝戦だったのだ。今日は……。

 記者席での共同会見。そこには、サプライズゲストのような感じで横西奏恵さん(正しくは「山崎奏恵」さん)がいた。ふたりは照れ照れの顔で、寄り添うように座った。「ご主人にひとこと」というリクエストに、奏恵さんは「はい? えーーーと、おめでとう、です。あとは、家に帰ってから(笑)」

 

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 さらに照れて、顔をくしゃくしゃにする旦那。くしゃくしゃでも、カッコ良すぎるぞ、智也。奏恵さんの傍らには、娘さんもいた。智也は笑いながら、ちらりと娘さんに目をやった。父親のような眼差しが、またカッコいい。要するに、智也のすべてがカッコ良く見えて仕方がないのだな。

 5年前にも書いたと思うのだが、今日もまた書こう。今日の智也にはサンタさんはいらない。智也自身がファンにとってのサンタクロースなんだから。いや、今年はファンだけではない、とても大切な人にとってのサンタさんでもあったわけだ。

 おめでとう、カッコ良すぎる有言実行のサンタさん。今年のプレゼントは、靴下の中にはとても入りきらないね。(photos/シギー中尾、text/H)

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