BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――容易に満足せず

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 9R、辻栄蔵がイン逃げを決めて、初日の悪い流れを断ち切った。まさに巻き返しの快勝、ピットに戻ってきた辻の目はさすがに細められていた。ヘルメットの奥で光る、なんとも素敵な笑顔。

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 そこに守田俊介があらわれて、笑顔で声をかける。同期生からの祝福(?)に辻の目はいっそう細くなった。ヘルメット越しに言葉を返す辻に、守田の笑顔も深くなる。そして、キック!…………キック!? 辻に放たれたわけではなく、モーターとボートに見舞ったものだった。いや、誤解しないでほしいが、実際は蹴ってはいない。蹴飛ばす真似をしたのだ。つまり、じゃれ合っていたのだ。さらにおかしそうに笑う辻。ちょっと肩をすくめて親愛の情を示す守田。74期の同期愛に乾杯!

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 同じく9R、平石和男のエンジン吊りに関東勢が集まった。埼玉勢は、中澤和志が無念の途中帰郷、須藤博倫が次の10R出走のため、その場には不在。群馬勢、東京勢が平石のモーターを片付けている。着替えに向かった平石に代わって、モーターを整備室へと運搬する関東勢。架台に乗っけたモーターを、誰が運ぶかの会議(?)が始まった。

齊藤仁「あ、俺が行く」

山田哲也「あ、僕が行きます」

毒島誠「いやいや、僕が行きます」

仁&ヤマテツ「どうぞどうぞどうぞ」

 ダチョウ倶楽部かい! 爆笑しつつ、上島役となった毒島が整備室へ。関東軍団の結束にも乾杯!

 

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 てなわけで、気温も上がり、うららかな春の空気に包まれたピットでは、そんな和やかな光景も見られたわけだが、もちろん緊張感が失われていたわけではない。12R出走の齊藤仁は、レースが近づくほどに引き締まった表情になっていったし、11R出走の山田哲也も笑顔が消えたあとには、闘志あふれる顔つきで展示準備に向かっていた。

 整備室を覗けば、やはり奮闘している選手の姿があって、どの顔つきも真剣そのものだ。

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「悪くはないけど、パンチがない」と言った篠崎元志は、クランクシャフトの高さを調整したそうだ。BOATBoy4月号のインタビューでは、高いレベルでの安定感を求め、もっとエンジンのパワーを引き出すことが課題のひとつだと語っていた篠崎。今日は2着1着と好成績だったが、結果に満足することなく、足りない部分は徹底的に補おうとしているわけだ。「エンジンを信頼してペラで調整、って感じじゃないんですよね。だから、本体に手をつけたんですけど」。機力上昇の感性もフル稼働させながら、手を油まみれにして整備に励んだ篠崎。整備終了時点で試運転の時間が残されていなかったので、感触を確かめるのは明日の朝ということになりそうだが、もしそこで納得できる成果を感じ取れなかったら、ふたたび整備室にこもる篠崎元志の姿を見ることになるだろう。

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 クランクシャフトを交換したのは森高一真だ。「いろいろ考えて、シャフトやな、と」と言葉少なではあったが、森高もまたレースや試運転の手応えから何かを感じ取ったのだろう。6Rでは2着となっているが、「ツイとったな」の一言。結果に対して満足しないのは、この男も同じだ。

 ただし、ツキが巡ってきたということは、リズムはアップしているということでもある。シャフト交換が当たる可能性だってもちろんあるわけだ。最後は森高一真らしいトビキリの笑顔で「ま、頑張るわ」。明日は2R1号艇だぞ!

 

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 さてさて、11Rで3番手を走りながら、井口佳典に逆転されてしまった峰竜太。1/2/4着なら悲観するような成績ではないはずだが、表情は冴えない。篠崎や森高と同様、機力に不満が残るのだろうし、結果がそこそこならヨシということにはならないわけだ。

 それはそれとして、峰がピットで突然叫んでいた。

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「カヤちゃーん、ありがとう!」

 カヤちゃん? あ、そうか、茅原悠紀か。中四国勢の出走がなかった11R、茅原は峰のエンジン吊りに参加、そのお礼を峰がしたということだ。

 その数分後、今度は篠崎が叫んだ。

「峰さーん! ●●仕上げておきました!」

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 ●●がちょっと聞き取れなかったのだが、篠崎が峰のために何かをして、それに峰がやっぱり大声で「ありがとー!」と返した次第。別に不思議な光景ではない? そうなんだけど、僕は篠崎が岡崎恭裕のことを「ヤスくん」と呼んでいるのを聞いたことがあるのだ。とにかく仲がいい岡崎、峰、篠崎の九州イケメン三銃士。1期ずつ違うけれども(岡崎94期、峰95期、篠崎96期)、年代も近いことから親友のような間柄なのだろうと勝手に思い込んでいたのだ。でも、篠崎→峰は「峰さん」となるわけですか。なるほどなあ。峰竜太が古賀繁輝(94期)を「シゲちゃん」と呼んでいたのを聞いたことがあるから、やはり県(支部)の違いも関係してるんですかね。どうでもいいことだけど、ちょっと気になった次第。選手同士の呼称についての一考察、でありました。ちなみに、かつて森高が丸岡正典のことを「チャンマル」と呼んでいたこともありましたよ。業界人かっ。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)