BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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平和島総理杯TOPICS 2日目

'今日のイン戦

①②①⑤③④③④①①①③

1着率42% 2連率50%'

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 やっと平和島らしくなった?? という今日のインの弱さだったが、最たる原因は明白。今日のイン戦はパワー的に不安な選手が数多くいた。「このインは危ないな」と誰もが思っていた選手が、ほぼその通りに飛んだ。明日のメンバーを見る限り、今日のようにはならんだろうなぁ。そうそう、本日“1年1組”の今垣光太郎がしっかり逃げ切って、明日以降に希望を残した。ミラクル光ちゃんの挑戦は続く!

 

モンスター覚醒

 

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 もう、首を捻る必要もないだろう。エース64号機を駆る吉田弘文が、怪物パワーの潜在能力を惜しげもなく披露した。まずは2R、6コースから展開が見当たらず、後手を踏んでの差しハンドル。並のパワーなら5、6着確定の1マークだったはずだ。が、そこから伸びる伸びる伸びる。最内から2艇3艇と追い抜き、2マークでは無理気味ではあったが2番手で旋回した。マイシロのないターンだから、当然流れる。開いて差した宇野弥生の舳先が入る。2マークまで鼻面を合わせての2着争い。だが、艇の勢いで外の弘文に分があることは、はっきりと見てとれた。

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 2周1マーク、「差しやらまどろっこしいことはすな!」と64号機が弘文に耳打ちしたのだろう。力任せの強ツケマイで、弥生の艇は哀しく引き波に揺れた。まさに、相手が悪かった。

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 後半の11Rも2着止まりだった。が、空恐ろしい2着だった。5コースから内外に同体で挟まれた弘文は、「とりあえず握っとくべ」という風情で抱きマイに出た。展開的に、あまり迫力のない握りマイだ。外に構えるは、峰竜太。昨日、「仕掛けから1マークに到達するスピードが艇界一速い」と決めつけた峰リューだ。今日の峰も、早くて速かった。文句の付けようのない、惚れ惚れするようなマーク差しだった。1-6の目を買っていた私は、峰がターンマークを回る前に「できたっ!!」と叫んだ。

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 だが、次の瞬間、私は目を疑う。峰のはるか外、そして2艇身ほど前にありえないはずのボートが見えた。

「ナニ、あれ、なんでいるの??」

 私は叫んだ。テカテカの逆光で、私にはそれが特定できない。

「ありゃモンスターでっせ、旦那」

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 隣のチャーリー池上がへらへら笑う。嘘つけ、私は思った。が、それは紛れのない黄色のカポックだった。展開の乏しいとりあえずの握りマイを打った弘文だった。レース後に、何度も私は1マークのVTRを見た。展開の乏しい抱きマイから、力強い航跡でイン幸哉に肉薄する弘文の姿がはっきり映っていた。艇界一早くて速い峰リューの完璧な差しを、外から軽々と超えていた。そして、モンスター弘文は追いすがる峰など歯牙にもかけずに、先頭の幸哉にぐんぐん近づいていった。

 今日の弘文は、勝ったわけではない。2戦ともに2着。だが、6・5号艇での16点はあまりにもでかい。昨日までは「まだちょっと……」と弱気な一面を見せていた弘文も、今日の2戦で己の相棒に絶大な信頼を置いたはずだ。1・2・2着(予選2位)で、残るは2・3・4号艇。モンスターの機嫌を損ねない限り、このコンビの快進撃が止まることはないだろう。

 

ふたつの減点

 

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 平和島総理杯名物、激しい春の嵐の予兆なのか。今日の前半戦は事故や違反などのアクシデントが相次いだ。しかも、1着で入線したレーサーのうち、2人が不良航法で減点を喰ってしまった。まずは2Rの平本真之。やまとの後輩・茅原悠紀が独走ムードになった2周ホーム、平本は馬袋義則とゴリゴリの2着争いを演じていた。内でギリギリ舳先を残す馬袋、外から力任せに被せてその命綱を断ち切ろうとする平本。ぐんぐん内に寄りながら、最後は馬袋にツケマイを浴びせた。それはもう、2周1マークの5mほど手前だった。おそらく、平本には馬袋以外の艇を見回す余裕がなかっただろう。やっとのことで敵をねじ伏せ、その勢いのまま2周1マークを回ったら、そこに先頭の茅原の舳先があった。避けきれずにその舳先を弾き飛ばし、茅原は転覆……。平本はなんとか態勢を立て直し、馬袋とのリターンマッチも制して先頭でゴールした。

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 私はこのレース(接触)を、自宅のネット画面で見ていた。その画面は、熾烈な2着争いだけを追いかけていた。独走ムードだった茅原が2周1マークでどんなターンをしたのか、それが私にはわからない。ただ、この接触・転覆で平本が妨害失格にならなかったということは、茅原にも油断があったのだろう。とにもかくにも、航走中の義務である「先着艇の位置、航跡確認」を怠った平本は、不良航法の裁定となった。

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 4Rで不良航法の罪に問われたのも、やまと軍団(←死語??)の石野貴之だった。スリットから半艇身ほど覗いた4カドの石野が、ゴリッと絞った。それがカド受けの山崎智也を圧迫し、さらに智也が2コースの中澤和志を圧迫し、さらに和志の艇の舳先がイン石川真二の艇尾に接触し、たまらず和志の艇がひっくり返った(それからまた反転して元に戻り、記録としては「エンジン停止」)。典型的な玉突き事故だ。石野の絞りまくりに落ち度はないし、たまたま体形の悪さがアクシデントにつながった。玉突きの最終的な結末を、4カドの石野が予見できるはずもない。あの絞りまくりは、当然の戦法だった。むしろ、あの体形で4カドから直進や抱きマイをするようなレーサーがいたら、私はその選手をアタマ舟券の対象として二度と信頼を置くことはないだろう。

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何度も言うが、あの石野の4カドまくりは“反則”ではない。起こってしまったアクシデントに対する因果責任のような形で、減点を食ったのである。「誰かが転覆したから、とりあえず誰かを罰しなければ」という魔女裁判的な裁定は、昔から今に至るまで連綿と続いている。しかも、どんどん厳しくなってもいる。ファンの暴動などが起こる気配すらない現代のボートレースで、こうした不条理な裁判が必要なのかどうか。関係者の再考に期待したい。このままだと、選手がビビリ倒して「4カドまくり」がイリオモテヤマネコ級の稀少なものになりますよっ!!(photos/シギー中尾、text/畠山)