BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――気持ちのいい光景

 前半ピット記事でエンジン吊りの話を書いたが、ピット取材をするようになって8年ほどが経っても、選手たちが協力し合ってテキパキと作業を進める姿は本当に気持ちがいい。

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 終盤の時間帯になると、選手たちが翌日の艇番艇旗の準備を始める。基本的には支部の最若手が同県の先輩の分を準備するわけだが、たとえば今日で言えば、福岡支部の最若手である篠崎元志は12Rに出走しており、今井貴士が当然のように代わって準備をするわけだ(そして、レースを控えながらも篠崎は今井に「すみませーん」と礼を尽くすのを忘れない)。

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 10R終了後、中島孝平が自分と今垣光太郎の分の準備を進めていた。そこに、深井利寿があらわれて、守田俊介の分もあわせて準備を始めようとしていた。すると中島は「あ、深井さん、僕がやっておきますよ!」と申し出た。平和島の帰宿バスの第一便が出発するのは10R終了後。深井は、これに乗って宿舎に戻る予定になっていたのだ。それを知った中島は、深井の役割を引き継いだという次第。深井は恐縮しながら中島に礼を言って、バスへと走った。深井が乗り込むとものの数十秒でバスは発車。まさに中島が深井の危機を救ったのだ(大げさか?)。

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 齊藤仁が地元勢の準備をしているのも見かけた。山田哲也も12R出走だったのだ。仁ちゃんはとにかく好人物で、エンジン吊りでも、たとえ関東勢が出走していなくても駆けつけて、手薄な陣営をヘルプしている。モーター架台をボートリフトの付近に運ぶのは全体の新兵たちの仕事なわけだが、仁ちゃんはこれを率先して、しかもごく自然に手伝ったりもしているのだ。今日の午後も、峰竜太、平本真之、山田哲也が運んでいる輪に当たり前のような顔をして加わっていたし、12R前にはこれまた当然のようにたった一人でこの仕事をしていた。それに気づいた石野貴之が慌てて駆けつけたほどだ(石野も本来であれば、この仕事は免除される立場)。こうした姿を見ていると、応援せずにはいられない! 明日の勝負駆けをクリアして、地元スピリッツを見せてくれ!

 

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 3日目、連勝を決めた選手が3人も出た。山崎智也、山本寛久、向所浩二だ。このうち、山本の雰囲気の良さがとにかく目を惹いた。レースを目前に控えた選手は、緊張感も高まり、精神統一をはかったりもしているので、声をかけないようにしているし、挨拶を投げかけることも遠慮しているわけだが、12R直前の時間帯、山本のほうから柔らかい表情で「お疲れ様です」と会釈をしてきたので、驚いた。好調の余裕、なのか。それとも、これがカンキューなのか。12Rの1着で予選トップに立ったわけだが、ピットでの様子を見ていれば、なるほどとうなずいてしまう。

 山本といえば、平尾崇典と従兄弟同士の関係にある。平尾は昨年秋、地元で悲願のSG初制覇を果たした。次はカンキューの番! 同年度内の従兄弟SG初制覇もおおいにありうるだろう。

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 向所浩二も、非常にいい雰囲気を醸し出している。それに引っ張られてか、10Rを勝って帰還した向所を出迎えた兵庫勢が、向所の言葉に爆笑していた(ヘルメットをかぶっていたので、何を言っていたのかは不明)。

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 その少し前、吉川元浩が険しい表情をしていたのを見かけている。完全に自分の世界に没頭している様子で、12Rの戦略や調整の方向性を考え込んでいたのだろう。レースまでにはまだある程度は時間があるタイミングだったが、このときの吉川には、すれ違った際にも声をかけることはためらわれた。

 その吉川も、向所の出迎えで爆笑! 吉川に男っぽい笑顔を浮かべさせた向所は、この連勝でさらに勢いに乗っていくことだろう。思わず水面際に行ってクラゲを探してしまった私でした……。

 

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 さて、6Rで痛恨の勇み足をしてしまった峰竜太。落ち込んでいるだろうなあ、と想像していたのだが、意外にも表情は明るかった。まったく下を向いている様子がないのだ。

 ここでどうしても1着が欲しい、と勝負をかけたのだという。機力に不満が残る状態だったこともあり、勝ってリズムを変えたいという思いもあった。だから、F自体を反省はしているけれども、後悔はない。渾身のレースができたことで、峰の気持ちに影がさすことはなかったのだ。多少の強がりはあったかもしれないが、こうした精神状態でいられることは大きい。

 というわけで、明日、F後で人気が落ちるのなら、絶好の狙い目になるかも。「まったく諦めるつもりはないですよ」と力強く語ってもいたし、決して勝負を投げることはないだろう。ペラ調整もとことん行なっていたし、かなり気になる存在になってきたぞ。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)