BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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平和島総理杯TOPICS 3日目

明日の8Rで……!!

 

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 また、不思議なものを見た。3Rだ。1マークを回った直後までは、ごくありふれた光景だった。インの平本真之が逃げて、2コースの吉田弘文が差す。1-2か、2-1か。ターンの出口では、明らかに弘文の出足が勝っていた。あっという間に舳先が入る。そうと知った平本は、わずかに内にハンドルを切った。コツンと弘文の舳先に当たり、2号艇はバランスを逸して失速した。先行艇が後続を振り切るための、常套手段だ。これで平本の勝利は、不動のものになった。はずなのだ。

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 だが、そうではなかった。物理的にありえないはずの光景が目の前で起こった。平本はわずかにハンドルを切っただけで、ほとんど加速度に影響はない。すでに出足から行き足へ、1速から2速へ移行している。一方の弘文は失速したことによって、また1速から出直しという状態のはずなのだ。物理学的に、2艇の差はさらに広がらなければならない。

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 私が目撃した光景は、それとは真逆だった。平本が止まって見えるほどの加速度で、弘文が伸びてゆく。64号機が、というべきか。バック中間を過ぎたあたりで舳先が並び、2マークの手前では64号機が1艇身抜け出していた。どう考えても、ありえない。昨日の11R同様、弘文64号機は、いるはずのないところに存在した。描けるはずのない航跡を描いた。

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 1・2・2・1着。昨日までの予選リーダー井口佳典は、6着3着でトップから転落した。不気味な伸びを誇る太田和美は、エンスト失格。もっとも一発が怖い男・峰竜太はフライングに散った。明日の8R3号艇を勝てば、その時点で弘文のトップ当選が確定する。そうなってしまえば、準優1号艇→ファイナル1号艇→SG初制覇へ、物理学の常識を覆す必要もなく一直線に進むことだろう。もはや敵は己自身のみ、明日からはメンタルとの戦いになる。

   (インターバル)

 上記の文章には、おそらくひとつの間違いもない(と思う)。だが、私はとんでもない勘違いをしながら、ここまでの文を書き綴っていた。疑いなく「弘文が暫定トップ」と思い込んでいたのだ。

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「山本寛久が暫定トップ」と知ったのは、つい今しがた、記者席に節間成績表が配られたときだった。なるほど、そうか。すぐに合点がいった。昨日は4コース差し。今日は4Rのイン逃げと、ついさっき終わった12Rの2コース差し。この3連勝は、どれも文句のつけようのない圧勝だった。楽勝のレースというのは、記憶に残りにくい。常識破りのレースを連発している弘文ばかりが脳の襞に焼き付き、ワンサイドゲームで勝ち続ける寛久を素通りさせていた。寛久の寄り切り、弘文のうっちゃり。ド派手な大技だけに目を奪われていた。では、どちらも節間勝率9・00(1着数の差で寛久がトップ)の両雄の、どちらが強いのか。それはまた、「エース機・弘文と準エース機・寛久の、どちらが強いのか」と置き換えられる。ふたりのこれまでのレースっぷりが違いすぎて、今の私にはわからない。弘文60号機の怪物ぶりはわかるが、独走続きでまだ底が割れていない寛久22号機のMAX指数が判然としないのだ。

 明日の8R……両雄の直接対決によって、我々はそれを知ることになる。近年、希に見るドラマチックな「勝負駆け」。予選1位の準エース機VS予選2位のエース機。勝ったほうが、予選トップ当選。3号艇の弘文がどう仕掛け、その仕掛けを外から監視できる5号艇の寛久がどう捌くのか。あるいは、それを意識しすぎて共倒れになり、トップを他の選手に譲るのか。ふたりのパワーを見る限り、予選トップの意味はあまりにも大きい。我々は、明日の8Rを見逃してはならない。

 

ドラゴンヘッド

 

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 先にも触れたが、V候補のひとり峰竜太がフライングに散った。コンマ01、数十センチ……45号機がパワーに乏しいことは、我々の多くが気づいていた。もっとも痛感していたのは、峰リュー本人だったろう。多少パワーがなくても強気で押し通すことの多い峰が、今節は泣きのコメントを入れていた。今日の6Rは待望の1号艇、勝てば準優の好枠がぐっと近づく力こぶの一戦。正味のパワーがなければ、どうするべきか。

 峰は行った。際のキワまで行って、ハミ出した。「己のはやる気持ちを律することができなかった」と言えばそれまでだが、私の見解は違う。勝つために、己に妥協することなく、とことん攻めた。それが峰という男の生き様(今まで、何度ここ一番でのタッチSを見てきたことか)であり、今日もそれを貫いただけだ。このフライングだけでなく今節のレースっぷりを見続けて、私は改めて確信した。

 峰竜太は、どんな枠でもアタマから買い続けるべき男だ。

 今の私はツヨポンこと山口剛を「絶対にアタマだけしか買わないレーサー」に指名している。今節、第2号アタマ固定レーサーが誕生した。(photos/シギー中尾、text/畠山)