BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――いつもの風景

 

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 田舎(福井)から叔父さんがスカイツリー観光に出てきているので、ネットで見てみると、「強風のため展望台営業は中止」と出ていた。福井弁になるが、「気の毒に……」というほかに言葉はない。

 三国、宮島、徳山も開催が中止順延となっているし、平和島も、もちろん風が強い。1R時の発表で追い風5mとなっているが、時折、それ以上の風が吹く。ピットのボートリフト付近にいながら、本番ピット脇にある滝の水が顔にかかってくることもあるくらいだから、驚かされる。

 それでも、選手たちは、いつもとまったく変わらず、普段通りに作業をしているのだから、プロである。

 さて、弥生さんである。

 フルネームで書けば宇野弥生。

 ピットに入ってすぐに、目に入ったのが彼女だったのだから、これもやはり運命なのか。ただ、そのときは、山川美由紀の隣りに座り、じっと水面を見つめていたので、声は掛けないでおいた。

 しばらくしたあと、僕の前を今井貴士が歩いていったが、僕の存在に気が付くと、にこりと笑って頭を下げながら「おはようございます」と声をかけてきてくれた。彼はいつもそうだが、本当に気持ちのいい青年だ。その後の3Rで1着を取り、準優出にグッと近づいたのだから、僕もうれしい。

 今井の後ろから歩いてきたのは、弥生さんだ。だが、彼女は僕には気づかず、素通りしていった。そうされるとやはり、僕は寂しい。

 

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 閑話休題。

 1R前から、三浦永理は、少し表情が硬かった気がする。これまでSGでは厳しい戦いを強いられることが多かったが、今回は準優出が手の届くところに来ているのだ。

 1R2号艇、9R1号艇の2回乗りで16点を取れば得点率6.00となる。そのことを意識してないはずはない。

 それを察してか、隣りに座っていた山川は(宇野×山川のカップリングのあと、三浦×山川のカップリングになっていた)、身ぶり手ぶりを交えながら、笑って三浦に話しかけていた。緊張をほぐそうとしていたのだろう。山川さんはいつもやさしい人だ。

 その1Rで、三浦は2コースからまくって1着! 準優出がぐっと現実味を帯びてきたわけである。

 それでも三浦は、表情をゆるめずにいたのだから、次走も期待できよう。

 

 

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 その後のことだ。チャーリーと呼ばれる某カメラマンが、僕の目の前で弥生さんに声をかけているところを目にしてしまったのは……。

 これはいけない。

 そう思った僕は、いけない男が傍を離れたあとに「おはようございます」と声をかけている。弥生さんはもちろん、「あっ」という顔をしたあと、にこりと笑って挨拶を返してくれた。

「また、変な原稿を書いていみませんでした」と続けると(BOATBoy参照)、「いえ、ありがとうございました」と、さらにとびきりの笑顔を見せてくれた。

 いけない。変な原稿になってきている……。

 BOATBoyでも、もう「僕の弥生さん」などとは書かないと宣言したのだから、こうした原稿はこれきりにしよう。

 今日の彼女は8R1号艇の一回乗り。準優出は厳しそうだが、水神祭は期待される。距離を置いて、その達成を見守りたい。

 

 

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 ただしである。その8Rが、別の意味で注目レースになっている。

 節イチを争う2人、吉田弘文と山本寛久が同居しているのだ。得点率でもこの二人はともに9.00でトップに立っている。そして、この2人はともに、本日はこのレースの一回乗りなので、1着を取れば、自然と予選1位通過が決まる。それを意識してないわけはないだろう。

 山本のほうは、自然体に過ごしているようにも見えたが、「少し硬くなっているか?」と気になったのは吉田のほうだ。

 1Rの展示航走前にも1R後にも、整備室の隅でプロペラにゲージを合わせていたが、その顔が、集中しているだけではなく、緊張感を漂わせているようにも見えたのだ。

 ここを勝てば準優1号艇、さらには優勝戦1号艇も見えてくるのだから、無理はあるまい。

 この緊張感をいい意味でのプラスにできるのかどうか……。今後の動きと表情には注目したい。

 

 

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 3日目までの得点率3位は、中島孝平だ。

 筆者とは同郷でもあり、顔が合えば挨拶はしてくれるし、話しかければ、饒舌ではないにしても、いろいろと答えてくれる。

 2R前だったろうか。少し遠い場所から「おはようございます」とこちらから声を掛け、「おはようございます」と返してもらった。その際にはニコリと笑ってくれることもなかったので、おや……と多少は気になりはしたが、いつでもニコニコしているわけではない職人気質の男だ。とくに心配はないだろう。

 2Rでは齊藤仁が1着を取って、やはり準優出に近づいたが……。その肩をさりげなくポンと叩いて祝福したいなせな男、山崎智也は、その後に中島のもとへと近づいていった。

 そして二人の賞金王は、いかにも「仲良し」な感じで、にこやかに話を始めた。

 みんな、いつもと変わらない。

 どれだけ風が強くても、そんなピットだった。

(PHOTO/池上一摩、TEXT/内池)