BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

びわこ名人戦TOPICS 初日

今日の枠なりVS非枠なり

 

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★枠なり…5レース

★非枠なり…7レース

※うち、1号艇以外の選手がイン…1回(7R5号艇・鈴木幸夫)

 誰が最初に「前付けイン強奪」をやらかすか? と思っていたのだが、『尾張のインファイター』鈴木幸夫だった。

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ちなみに、エキシビジョンマッチに参戦した奥さんの鈴木弓子“選手”は、6号艇の6コース。中道善博選手が回り直したから5コースの権利があったのに、断固として最アウトを死守した。夫婦合わせて、プラマイゼロ??

 

鵜飼はインか、2コースか??

 

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 それは、3Rのスタート展示で起きた。5号艇の山﨑昭生がピットアウトからポーンと飛び出し、1号艇・鵜飼菜穂子の庭とも言うべきインコースを奪ってしまった。

「あらあら、まあまあ」

 そんな感じで、鵜飼はゆっくりと2コースに入っている。ちょっとした事件である。鵜飼姐さんといえば「イン戦は落として小回り、2コースは握ってツケマイ」という超変則タイプだから、コース次第で舟券攻略が540度ほども変わる。

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「げ、本番も2コースか?? んなわきゃないか。本番はイン死守だろ?」

 記者席でブツブツ独り言を呟きながら、私は展示航走を見ていた。ふと気づくと、空席だったはずの両サイドの椅子に、誰かしらが座っている。その存在を知って、私は椅子から20cmほど飛び上がった。右には初代女子王座の鈴木弓子さん、左には『浪速のドン』長嶺豊さんがどっかと鎮座ましましている。午後のエキシビジョンマッチの練習を終えて、ちょいと一服。そんな雰囲気だった。いきなり往年の名選手に挟まれて面喰らいつつ、私は恐る恐る右に顔を向けた。

「あの、鵜飼姐さんって、本番はどうするんでしょうか?」

 かつて姐さんと苦楽を共にした先輩の女流レーサーなら、以心伝心で本番の行動がわかるのではないか。そう考えたのだ。

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「うーーーん」

 少し考えてから、弓子さんは「本番も同じになるかもしれませんね」と落ち着いた声で言った。

「そ、そうなんですか、2コースですか」

 私が反復すると、左から野太いダミ声が……。

「いや、鵜飼はワシが(インを)獲りに行っても突っぱねたもんですわ。本番は許さんでしょう」

 ドンと弓子さんの見解は、真っ二つに割れてしまった。脳内がさらに混乱しつつ、私は楽しくて仕方がない。

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 やっぱ、進入予想って、難しいけどおもろいなぁ。

 しみじみ思う。女流の先輩と、イン屋の達人でも意見が食い違うのである。選手でもない私に、おいそれと正解が分かるわけがないのである。それでも考える。〆切直前までうんうん考えて、どちらかに決めて舟券を買う。これがボートレースの醍醐味なのである。

 10分後。「やっぱり鵜飼はイン死守!」と勝手に決断し、それを根拠に舟券を買った。そして、鵜飼は自分の庭を守り通した。

「よっしゃ!」

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 12秒針が回るはるか手前で、私は叫んだ。残念ながら、その後のレース展開は私の脳内レースとはまったく異質のものだった。舟券は虚しく紙屑と化したが、なんというか、ちょっとした充足感のようなものが心の中に漂っていた。

 ボートレースは単なるヨーイドンの競走ではない。そこに至るまでの人間の心の心理、機微、駆け引き、それらを予想するだけでも十二分に楽しいギャンブルだと私は思う。そして現状の艇界で、それらがもっともドラスティックな形で水面に投影されるシリーズ。それが、名人戦だ。

 明日も、私は記者席でうんうんうんうんうんうん考え続ける。間違いなく。

 

連載企画 今日の“アラセブ”

 

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2人合わせて140歳の挑戦。今節は毎日欠かさず、勝っても負けても『走る人間国宝』加藤峻二(71)と『瀬戸内の静かなるドン』万谷章(69)のレースぶりを記録しておきたい。

 

'★加藤峻二…1R4号艇⑤着 節間2・00

★万谷章…2R4号艇⑤着 節間2・00' 

 

うーーーーん、ちょっと気勢が上がらない初日ではあった。1R、2Rに出走したふたりは、ともに4号艇で5着。

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 1Rの峻ちゃんはスタートで後手を踏み(コンマ21)、外の古場輝義に叩かれて万事休す。ただ、最大で5艇身ほど前にいた5番手・佐藤幸子をジリジリ追い上げ、3周目にあっさり逆転した足には、わずかだが光るものがあった。突き抜けるほどのパワーではないが、なんとか戦えるレベルだと思う。「今日はスタート負け」と割り切り、明日に気持ちを切り替えたことだろう。

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 2Rの万谷親ビンは、5コースからコンマ07まで踏み込んだ。しかも、その内の4カド北川敏弘がコンマ01の悶絶タッチ。そのまま絞ってくれればマーク差しの展開もあったのだが、北川はスリットからガックン減速……(=「アジャストで助かった」と言うべきか)。結局はこれが高い高い壁になってしまって、親ビンは何もできずに惨敗した。が、評判モーターの藤井定美とビッチリ5着争いを演じ、これに競り勝ったことは評価できる。悲願の通算100Vへ、苦しいスタートではあるが、まだまだ巻き返せる5着だと思いたい。 ちなみに、明日は親ビンが1R5号艇で、峻ちゃんが2R5号艇! 番組さんも、このふたりを一蓮托生と見ているのかも?

 とにかく頑張れ、峻ちゃん、親ビン!!(photos/シギー中尾、text/H)