BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――美しきブルーナイター

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 丸亀ボートは、西日を正面から浴びる。夕刻には水面に映った太陽がゆらゆらと揺れ、太陽が沈むにつれて空は青みを増していき、やがてナイター照明が点灯すると夕暮れの空と絶妙なマッチングを見せ、その時間帯、なんともいえない絶景を眼前に立ち上らせる。何度来ても、ブルーナイターは美しいとしみじみしてしまいますな。

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 実は、西日が差す時間帯はちょいと眩しさも覚えてしまう。正面にお日様がいますからね。

「黒須田さんがいるから眩しいのかと思ったら、太陽でしたわ~」

 モーターを装着して水面へと向かおうとしていた重成一人が悪戯っぽく声をかけてきた。そんな、あなたは地元ですからこの時間帯に西日が正面にあることはよくご存知でしょうが~~~。でも、たしかに私のハゲ頭と西日のダブルパンチは目に悪いですわな。

「すみません! もうあっち側には行かないようにします~」

 そう言ったら、重成一人はカハハと笑った。光栄です!

 

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 美しい光景を眺めつつ、選手の様子を観察する。係留所はすでに満艇状態で、選手たちは集中した表情で調整を進めていた。そのなかに、髪の長い女子選手がいる。髪の長い女子選手? 今節の女子は、地元の平山智加と山川美由紀のみのはず。ふたりとも髪の毛長くないよな……。

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 よく見たら、萩原秀人だった。選手入りのときに目にしていたはずなのに、遠目だと本当に女性っぽいんですよ、これが。後ろ姿も、ほんと、女性ですよ。ナンパして振り向いたら萩原秀人だった……なんて妄想したら、背筋がゾッ……じゃなくて、笑えてきました。もちろん、レースと髪型に因果関係はひとつもない。表彰式で黒髪をたなびかせて歓声に応える、なんてシーンがあってもいいんじゃないでしょうか。

 

 そんなこんなでピットを眺めまわしていたわけだが、早くもペラ調整に取りかかっている選手が多いように思えた。タイム測定とスタート練習を終えた登番上位組はもちろん、これからその両方をこなす登番若手組も、かなり多くペラ調整所で見かけられた。

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 見ているとなかなか興味深いのだが、たとえば谷村一哉がかなりの力を込めて、ガンガンとペラを叩いている。これはいわゆる「ペラを叩き変えている」シーンであろう。前操者が仕上げた形と谷村の形は相当に異質だったのだろう。いきなり前検で力一杯木槌をふるって、早々に自分の形に近づけたいわけだ。もちろん、乗った感触が良ければ、前検でここまでやらないだろうけど。

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 一方、峰竜太は実に繊細なタッチで、ペラを叩いていた。柔らかくコツンと叩いてゲージを当てる。さらにコンと木槌を置くような強さで叩いて、さらにゲージチェック。そんなに優しく叩いて、ペラの形に変化があるの? 素人としてはそう思わざるをえないほど、力を入れずに叩いているのだ。ほんっっっとーに、微妙な差なんでしょうね、変化が出るとしたら。そして、その微妙な差が、レースでは大きな差になることもあるということだろう。

 プロペラってのは、誠にもって奥深く、レーサーでない我々には手に負えないものである。選手たちはこうした工夫を重ねて、レースを戦っている。

 

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 さて、ドリーム組では、どうやら松井繁が好感触のようだ。会見では「悪くない」を連発していて、前検での「悪くない」は「いい」に変化していく可能性が濃厚である。賞金王行きを確実にしたことで、松井は「気楽な気持ちで、勝負に出る」と言っている。勝負に出るときってのは気合パンパンになるんだろうけど、王者は気楽な気持ちでそれをするのだ。しかも気配が悪くないのだとすれば、ドリーム戦から怖い存在であるのは間違いない。今節も王者の魂が存分に発揮されそうだ。

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 あと、今村豊が元気です。会見場に入ってくるや「コメント、いります? 明日から付録ですよ」と出合い頭の一発で報道陣を爆笑させ、結果的にいちばん長くしゃべっていた(笑)。スタート練習はオール4コースのスロー。質問者が「おそらく明日も……」と振ると、「ほかに方法がありますか? ああいうふうに行くって思ってるんでしょ? やっぱり期待には応えなくちゃいけない。期待通りに行きます」と持って回った言い方で、ふたたび我々を爆笑させたのだった。機力は「平々凡々」だそうだが、それを上向かせる手応えがあるからのゴキゲン、と見たがどうか。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)