BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――激しき4日目

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「やっちゃった……」

 ヘルメットを脱いだ瞬間、激しく顔を歪ませた濱野谷憲吾。4着条件の勝負駆けを落としてしまったことは、本人にとっても信じがたいことのようだった。

 濱野谷がここまで悔恨をあらわにしたことはこれまであっただろうか。苦笑いはたくさん見てきたけど、わりと淡々としていることが多い濱野谷にしては、かなり特別な表情と思えたのだ。

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 一方、次のレース(3R)では、松井繁も勝負駆けを実らせることができなかった。こちらは1着条件で、前付け4コースから自力でまくっての2着。レースぶりがすでに王者のそれだし、いわゆる「やることはやった」戦いぶりだったと思う。だが、もちろん松井はそれで納得はしない。ピットに戻った直後の表情はやはりカタく、予選落ちがほぼ確定的となってしまったことに怒りを感じていたようだった。

 そんな松井に、濱野谷が声をかける。松井は濱野谷を無視するようにして通り過ぎたが、声がかかったことを一瞬遅れて察知して、歩みを濱野谷のほうに戻した。濱野谷がもう一声かけてニッコリ。松井もまたニコリと笑った。ただし、ともに苦笑いではあったけれども。

 勝負駆けの恐ろしさを、強烈なまでに表現したのが、王者とファンタジスタだった。彼らであっても、その苛烈な魔は通り過ぎてはくれない。4日目は、やはりボートレースの醍醐味を凝縮させた一日でもあるのだ。

 

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 そんな激しい一日に、天候は急変した。朝から雨が降ったりやんだり。降るときはかなり強い雨脚になっており、やんでも空は分厚い雲に覆われている。1Rはくもり空での戦いだったが、2Rはまさに雨脚のピーク。それが、池永太の水神祭(あとでアップします)の頃にはすっかりあがっていて、まったく安定していないのだ。これも台風の影響? 変わらないのは、昨日から一気に上がった湿度によるジメジメ感、である。

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 さすがに試運転に出る選手は少ない。作業はおもにペラ調整になっていて、天候の変化が気配の変化に結びついた選手もいるだろうから、ペラ室は昨日の前半に比べれば人口密度が高い。装着場でも、服部幸男と菊地孝平がかなり真剣な表情で話し込んでおり、手には二人とも、自分のペラがあった。調整と方向性の情報交換だろう。

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 そんななかでも、わりとゆったりした選手もいるわけで、ゲージ擦りをしている中島孝平はその一人だ。昨日も同じ姿を見ているが、モーター自体の不安はかなり払拭されているということか。ゲージ擦り自体も立派な作業ではあるが、本体整備やペラ調整と比べて緊急性が薄いため、どうしても「ゆったり」と見えてしまうわけである。その隣には、萩原秀人も陣取った。こちらもゲージ擦りか、と思ったが、先輩に話しかけているだけのようであった。今日も長髪がイカしてるぞ。

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 毒島誠がペラ室に入っていくところを見かけた。ただ、ペラを手にもっていなかった。もちろん、ペラ室に置いたままということもありうるだろう。と思って注目してみていたら、中野次郎と話し込んでいた。次郎はペラ室の奥のほうに陣取っているため、様子をハッキリと確認できるわけではないのだが、しかし毒島はペラを叩いている様子はない。次郎が木槌をふるいながら毒島と話しているのだが、毒島の手が動いているようには見えなかったのだ。好調・毒島、やはり急いで調整する必要はないということか。選手がストイックに整備調整する姿は素敵だが、実はゆったりしている選手のほうが機力は良好。皮肉ではあるが、真実でもある。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)