BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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丸亀MB記念 準優ダイジェスト

やまと制圧

 

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'9R 進入順   st

①秋山直之(群馬)15

⑤深川真二(佐賀)11

②毒島  誠(群馬)06

③岡崎恭裕(福岡)02

④丸岡正典(奈良)01

⑥新田雄史(三重)03'

 

 

 

 昨日は外枠で動かなかった深川が、この大一番で嬉々として前付けに出た。スタート展示では枠番を主張した毒島も「付き合いきれません」という風情で招き入れる。結果的に、この判断が功を奏した。

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 スタート、秋山が遅れる。いや、スリット1艇身は賞典レースの常道だ。他が早かった。ほぼタッチSだったダッシュ3艇はじめ、3~6コースがゼロ台。これを感知した深川は、「差しでは誰かに攻め潰される」と思ったかもしれない。強引に握って出た。2コースのジカまくりは、これはさすがに流れる。それを尻目に、3コースに構えた毒島が颯爽と差し抜けた。笹川賞ファイナルの新田と、ほぼ同じような展開の勝利だった。

 

 

 

 

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 2着には、その新田。握って攻めた丸岡の外から、一目散にブイを目指した。差し・差し決着。こういう荒れた展開になれば、若いターンスピードが生きる。3着にも混戦から岡崎が抜け出し、やまと軍団の3騎が“ベテラン勢”をスピードで制圧した。

 1着・毒島、2着・新田。

 ふたりの足は……もちろん悪いはずもないのだが、今日のこのレースでは何をどうこうと断定できない。パワー云々よりも、展開とスピード。それがこのふたりに明日の優勝戦をもたらした。

 

鬼足、全開

 

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'10R

①瓜生正義(東京)10

②平石和男(埼玉)14

③中島孝平(福井)10

④辻  栄蔵(広島)13

⑤山崎智也(群馬)17

⑥池田浩二(愛知)16'

 

 

 

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 こちらは、「パワーの勝利」と言っていい。スリット隊形こそトップSタイの瓜生と中島に挟まれて窮屈そうだったが、いざ差しのハンドルを入れたらググッッと力強く前進した。いわゆる「ターン出口から押して行く足」。今節の平石は、ココが凄い。先マイした瓜生も、絶品のまくり差しを突き刺した中島も、この節イチのレース足を捕えきることはできなかった。バックで3艇が並走状態になったが、「アタマは最内の平石で間違いないな」と思わせる安定感抜群の行きっぷりだった。

 

 

 

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 三者接戦ながらも、焦点は2着争いに。内に中島、外に瓜生で舳先を並べていたが、2マーク、平石に続いて中島が差しハンドルを入れると、それで瓜生は千切れてしまった。今節の瓜生の足は、ターンでの粘り強さが決定的に欠けていた。いわゆる「サイドの掛かりが甘い」というヤツか。3日目の道中で毒島に追い抜かれたのも、しかり。思えば今日の1マークも、ターンミスというより回り足が甘すぎたのかもしれない。瓜生は自分のスタイルにペラを叩き変えることが多いから、今後もこの部分の調整が課題になるだろう。「伸びるけど、ターンでやられる」というケースが、2年ほど前より激増した感がある。とにもかくにも、平石と中島とにズブリズブリと差し抜かれ、3連覇を狙った瓜生の夏は終わった。

 1着・平石、2着・中島。

 

 

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 今節、何度か書いてきたように、平石の足は文句の付けようのない節イチだ。出足がしっかりしていて、ターン回り~出口が超抜、さらに伸びもトップ級。前後の準優より1秒以上も速かった勝ち時計が、その優秀さを露骨に証明している。明日も2号艇、若いイン選手にとって、このパワーはとてつもなく厄介だと思う。

 中島の足は、例によって「伸びはサッパリ、回り足はゴキゲン」、らしいスタイルに仕上がりきっている。だからこその3コースまくり差し。本人も自信を持っているからこそ、迷わずまくり差しを選択したのだ。自力ではなかなか攻めきれないが、わずかでも展開にホコロビが生じたら、この足は怖い。いつものように。

 

異次元モンキー

 

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'11R

①菊地孝平(静岡)07

②齊藤  仁(福岡)07

③篠崎元志(福岡)12

④太田和美(奈良)11

⑤桐生順平(埼玉)12

⑥寺田 祥(山口)11'

 

 

 

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 驚いた。なんだ、あのターンは。

 9Rが「展開のレース」、10Rが「パワーのレース」だとするなら、この11Rは「才能のレース」だった。そうとしか言いようがない。10Rの中島は、スリットで優位に立って、平石の差しを見届けてからまくり差しのハンドルを入れた。これが3コースまくり差しの常套手段だ。

 が、篠崎のそれはまったく別物だった。スタートで、内の2艇に出し抜かれた。スリットでの1/3艇身の差は、小さいものではない。しかも、篠崎の伸びは内2艇より弱い。こうなると、少なくともインと2コースの間を割るまくり差しは考えにくい。論外だ。届かずとも思いきり握っておいての2マーク勝負か、二番差しからの2マーク勝負か(彼の気質から言って、これは考えにくいが)、自動的にどちらかの選択になるはずなのだ。

 

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 だが、1マーク、篠崎のちょっと特殊で美しいモンキーターンは、2艇の間を切り裂いていた。バック直線、実は、私は何が起こったかわからなかった。

「なんであんな水面のど真ん中を、先頭で走ってる??」

 本当に、意味がわからなかった。わかったのは、リプレイを観てからだ。1マークの手前、篠崎は半艇身ほど遅れた位置から、2コースの齊藤が差しハンドルを入れたと同時にツケマイを放ち、それを鮮やかに決めつつイン菊地に接触することもなく突き抜けている。ありえない、というか、私の経験則で言うなら、まるで見たことのない3コースまくり差しだった。もちろん、これは非凡なる「スピード」と相応の回り足=「パワー」があってこその大技だろう。だが私は、そういうことではなく、「あんなことをやろうとした、そして、成功させてしまった」篠崎元志という男の存在そのものに驚愕してしまった。それを評価する言葉として、もっとも適切なのは、やはり「才能」ではないか。

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「本当は握るつもりだったけど」

 共同記者会見で、篠崎はこう振り返ったという。それはわかる。“アレ”は理性的な判断から生まれるものではない。「見る前に翔ぶ」のは、超一流レーサーに不可欠な要素だ。が、あのスリット状況から、あの戦法で見る前に翔んでしまうレーサーは、何人いるだろう。いないのではないか。誰がどう試しても、見る前に翔ぶどころか、彼方にブッ飛んでしまうと私は思う。それくらい、ありえない3コースまくり差しだった。

 1着・篠崎、2着・菊地。

 

 

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 明日の篠崎は、同じ3号艇。この天才が明日は何をやらかしてくれるのか、もう私には見当すらつかない。一方、優勝戦の1号艇を奪われた菊地は、4号艇で闘うことになった。もちろん、天性のスタート勘といい今節のパワーといい、十分にVを狙える枠番だ。そう、今度は4カド&コンマゼロ台スタートで、逆に篠崎を外から責めることができるのである。若き天才が飛翔する前に、その翼をへし折ることも……。(photos/シギー中尾、text/畠山)