BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――「最後の戦い」に臨む6戦士

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 畠山シュー長が珍しくピットに入った。BOATBoyの「新鋭バン」として、ぜひ最後の王座での若武者たちの様子を見たいと考えたらしい。手当たり次第にお気に入りの選手に声をかけていたシュー長。優勝戦4号艇の片岡雅裕もその一人だ。

 シュー長に便乗して、今日の様子なども聞いてみる。伸びは来ている。メンタルもOK。優勝戦が楽しみだ、と言った。ただ、あまり口数が多いほうではないのか、あるいは人見知りなのか、短い言葉を話すのみ。とにかく頑張って、と激励して切り上げることにした。

 ところが、片岡はまだ何か言いたそうにして、その場から離れない。3人で、へへへへ、とか笑い合っていると、突如片岡は言った。

「艇界のマーくんでお願いします」

 おぉっ! 楽天の田中投手とは感じこそ違え、同じ「まさひろ」。あっちがマーくんなら、こっちもマーくんでいいですわな。畠山はBOATBoyで片岡のことを「片チン」と書き続けていたが、それに対する抗議とリクエストの意味もあったか。

 ということで、マーくん、了解です! マーくんといえば田中じゃなくて片岡と言われるくらいの、球界のマーくんを超える選手になってくださいよ!

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 畠山が声をかけた優出メンバーはもう一人、中嶋健一郎だ。マッドドッグと呼び、でも本人は草食系と言い、しかし準優を見ればおわかりのとおり、水面に出れば獰猛に攻める男。ピットに入って畠山が真っ先に探していたのがジマケンこと中嶋だった。

 二人の会話には参加せず、遠目に見ていただけだが、実に楽しそうに談笑していた。6号艇ということもあるだろうが、中嶋に非日常のメンタリティはまったく感じられない。同期の古田祐貴の水神祭でも(後ほどご紹介します)自然体の笑顔を見せて古田を祝福していたし、リラックスして優勝戦に臨めそうだ。2Rの高田明のフライングで、全選手が招集されて注意を促されるシーンがピットではあったが、それをたとえば内枠の選手が気にし過ぎた場合、中嶋のこの自然体が活きるような気がする。

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 リラックスといえば、中田竜太も極めて自然体だった。これも5号艇という重圧がそれほどかからない枠番ということもあるだろう。桐生順平と談笑する場面を目撃しているが、その笑顔も実に自然。中嶋と同様の意味で、侮れない存在だと思う。

 

 内枠の実績組も、基本的にはカタさはまったく見られない。

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 桐生順平は早くもペラ調整を始めており、優出インタビューでの言葉を実行に移している。表情は柔らかく、いつも通りだ。SG優勝戦1号艇を経験している桐生が、新鋭王座優勝戦3号艇で震えるはずがないだろう。

 

 

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 前田将太は、特に調整などしている様子はなく、ゆったりと過ごしているようだった。エンジン吊りで福岡勢と話し込む姿は、やっぱり自然。周年記念優勝戦1号艇を経験している前田も、新鋭王座優勝戦2号艇はメンタルを狂わせる要因ではありえないだろう。

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 篠崎仁志も、決して緊張に包まれているわけではない。私物の整理をしたり、ピット内をウロウロしたりという、前田や桐生とは違う行動も見られるが、実はこれはけっこうよく見かける姿である(私物整理は、管理解除となる最終日だけだが)。ただ、桐生や前田と比べれば、ちょっとだけイライラしているように感じた。ということは、本人は「まだ大丈夫」と言っていたけれども、すでに緊張感がジワジワと押し寄せているということである。

 もっとも、篠崎は「緊張がなければ、いい結果は出ない」と言い切った。「緊張するのは当たり前ですよね。だって、ここを目標に来たんだから。だから、レースが近づけば、緊張します」。それを言い切れるのは強いぞ! その覚悟がある者にとって、緊張感はむしろ武器になるのだと僕は思う。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩=前田、篠崎 TEXT/黒須田)