BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――3日目だって勝負駆け

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 終盤のピットで目立っていたのは……今村豊だった。あらら。帰郷の準備を整えて、ピットに戻って来ていたのだ。関係者に「お世話になりました」と頭を下げて回る今村は、足をひきずっており、その姿自体は痛々しいものであったが、それ以外は元気いっぱいというか、いつもの「今村ワールド」を全開にしており、心配げに集まる報道陣をジョークで笑わせては、自分も楽しそうに笑っていた。11R後には帰宿バスの第2便が出発しており、通用門のそばに立ってお見送り。後輩たちに手を振っている様子がまたおかしく、今村をお見送りしようとしていた報道陣も笑っていたし、バスの中の選手もきっと笑っていただろう。

 まずは傷を癒してほしい、というのは当然だが、F2の今村は今年のSGにはもう出られない。ということは、今年はこれが見納めということか……。次にお会いできるのはおそらく来春、また元気いっぱいの今村ワールドを見られるのを楽しみにしていますよ!

 

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 いわゆる勝負駆けは予選最終日の明日、ということになるわけだが、実際は3日目もかなり重要。11R6号艇の白井英治が、松井繁の1号艇をめがけて果敢な前付けに出たのも、明日の戦いを見据えて少しでもポイントを上積みしようという、闘志の発露であろう。

 その白井に真っ向勝負を挑んだのは、今村暢孝だ。大きく回り込もうとする白井に、5号艇の赤岩善生も抵抗せんとしたが断念、しかし4号艇の今村は抵抗を続けた。絶対に2コースを獲らんとする白井と、絶対に入れたくない今村の意地が交錯する待機水面。ピットからはその様子がよく見えて、興奮させられたのだった。

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 レース後、歩み寄ったのは今村のほうだった。結果的に白井がしゃにむに2コースを奪い取っており、今村は4コース。しかし、白井は想定した2コースとはならなかったはずで、それについて、今村のほうから頭を下げに行ったのだ。とはいえ、今村に悪びれた様子はなく、その表情がなんともカッコ良かった。己の戦い方を貫いた、あまりに男っぽい表情。ボートレースの真髄を見せられたような気がした。これぞ進入争い、これぞボートレース、これぞボートレーサーでしょ!

 もちろん、白井も言葉を交わしたのみでノーサイドを表明。ただし、白井の顔は相当に激しく歪んでいた。結果6着だったからだ。進入や展開はともかく、もっとも想定外だったのはその結果であろう。これで明日は1着条件の勝負を強いられることになったのだから、心が晴れないのは当然である。

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 10Rでは、今村豊の欠場により、2号艇の井口佳典にインが転がり込んできている。井口はこれをしっかりと活かした。ここまで3、6、6着という大苦戦模様。初戦の1号艇をもモノにできなかった。ここで着を落とせば予選突破が絶望というところで、幸運にも2度目のインが回って来て、初戦の教訓を生かしてきっちり逃げ切ってみせた。これで明日に勝負が残った! ピットに戻ってきた井口の目がキラキラと輝き、そして鋭く突き刺すような獣の視線になるのも当然というところだろう。

 で、その井口の帰還を試運転係留所で出迎えた鎌田義が、なぜかサムダウン(笑)。心安い二人だからこその、お茶目な祝福なのであった。その後に井口のもとに駆け寄った鎌田の顔を見て、井口の目が一瞬だけ細くなった。カマギーも嬉しそうだったな。

 

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 12R、瓜生正義の連勝が止まった。ストッパーとなったのは田村隆信。バックでは瓜生が内から忍び寄っていたが、激しく抵抗して振り切っている。その間隙を桐生順平に差されてしまったわけだが、この競り合いをも制して先頭ゴールを果たした。

 すでに帰宿バスの1便と2便が出発してしまっており、ピットに残った選手は多くはない。そんななかで田村を出迎えたのは井口! 今日の後半レースでインから1着となったのは井口と田村のみで、銀河系の盟友同士が喜びを分かち合ったというわけである。

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 で、いったんは先頭を走った桐生は、2周2マークで振り込んで、落水寸前となっている。身体は操縦席から飛び出すほどだったが、桐生はボートにしがみつき、自力で這い上がってレースに復帰、4着でゴールしている。11年新鋭王座の準優勝戦でも同様のシーンがあったな。同期の松尾昂明と壮絶に競り合い、やはり身体が飛び出して水についたのだが、戦線離脱とはならずに、レースに戻っている。

 ナイスガッツだ!

 残念ながら、4着にしりぞいたことで、明日は1着でも6・00には届かなくなってしまった。また、無理な体勢を強いられたこともあって、レース後は激痛に耐える姿もあった。しかし明日は出走表に名前があるし、このレースと同様、絶対にあきらめない走りを見せてくれるだろう。桐生の強さは衆目の一致するところ。その奥には、こうしたド根性があることも見逃してはならない。ま、桐生の舟券買ってた人は「何してんだよ~」と言いたいところだろうけど、今日のところはそのガッツを称えたいと思う。(PHOTO/中尾茂幸=田村、桐生 池上一摩 黒須田=井口 TEXT/黒須田)