BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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津チャレカ優勝戦 超極私的回顧

HAPPY!

 

'12R優勝戦

①森高一真(香川) 08

②菊地孝平(静岡) 11

③徳増秀樹(静岡) 10

④三井所尊春(佐賀)13

⑤山口 剛(広島) 17

⑥齊藤 仁(福岡) 10'

 

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r 森高一真が、トップスタートで鮮やかに逃げきった。デビュー15年目で、銀河系5人目のSGウイナーになった。レースとしての“勝者”を語るのは、今日はここまで。

 昨夜、私は「森高が優勝したら、どんなことを書こうか」そればかり考えていた。書きたいことが、ありすぎる。別に私は、森高とそれほど懇意なわけではない。『ボートボーイ』のトークショーでゲストとして上京した森高と、一度だけ朝まで飲み明かした。ほとんど、それだけのつながりだ。

 

 が、その一夜の酒で、私は森高一真という男に惚れた。とりわけ込み入った話はなかった。ただ、あまり飲めない酒をチビリチビリとやりながら、さりげなく口にする言葉。それに痺れっぱなしだった。

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 たとえば、腕に付けたブレスレット。かなり年季の入った感じだったので尋ねてみると、

「ああ、これな。じいちゃんからもらって、絶対外さないって約束して……一生腕から取れんように、完全に固めてある。一生、絶対に外れんように、固めた」

 心にじん、と響く。森高は真顔で続けた。

「アロンアルファ、でな」

 たとえば、ひっきりなしにくわえるハイライト。森高の世代としては古風な銘柄なので、「もしかして、お父さんもハイライト?」と聞くと、妙に嬉しそうにコッチを見て小さく頷き「うん、そう」と照れくさそうに答える。ただそれだけのやりとりなのだが、またしても心にじん、と響くのである。その返事と、照れた笑顔に。

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 その夜、何やらかにやらをとりとめもなく話しているうちに、私は森高の大ファンになっていた。断言していいが、森高と1時間でも接した人間は、誰でもやられる。照れ屋で無口で話し出すと愉快でやんちゃで古風で家族思いで仲間思いで……一言で言うなら、昭和の匂い、だ。寅さんとか横山靖とかドリフとかトラック野郎とか、温かいけどハチャメチャな、昭和にしか存在しないようなキャラクターなのである。

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 それ以降、黒須田から森高ネタを聞き出すのが、私の趣味のひとつになった。もちろん、黒須田からも「今日、森高がねぇ」と嬉しそうに話しはじめる。そのたび、私の心がじん、と疼く。一例を挙げると

「昨日、森高から電話があって『あのなぁクロちゃん、お笑い芸人のモンキーターン坂元ゆうヤツと会ったんやけど、クロちゃん、なんかアイツに書かせてやれんか。いや、無理ならええ、無理ならええんやけどな、なんとかならんかなぁ。で、1回でもなんか書かせて、ダメやったらそれでええんや』って。なんか、書いてもらいましょうかね」

 

 

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 毎度毎度、こんな感じ。自分のことではなく、常に仲間や知人のことを気にかけている。ただ、押し付けることは一切なく「嫌なら断ってな、こっちの勝手やから、な、クロちゃん」と黒須田の立場もしっかり踏まえてくれる。

 2度目のトークショーでは、丸岡正典と際どい話?をしている途中で時計を見て

「あ、ちょっとええかな、もうすぐ、ウチの同期の田中健太郎が優勝戦1号艇に乗るんや。初めての1号艇でメッチャ緊張しとると思うんやけど、なんかの画面で見れたら、みんなで応援してくれんかな」

 じん。

 その優勝戦、健太郎はなんと2号艇の同期・井口佳典にインを奪われ、なす術なく敗れ去った。ガックリ肩を落とした森高は、1時間後くらいに井口に電話をかけて

「みんなでお前じゃなく、健太郎を応援してたんや。みんなに謝れ~!」

 ムチャ振りの意味がまったくわかっていない井口も、電話越しに「すいませんでした!」叫んだ。続いて、健太郎本人にも電話を掛けて

「こらぁぁ、同期にインを獲られたらあかんじゃろ!!」

 叱りつけつつ

「な、次は……頑張ろ。な」

 じん。

 嗚呼、じんじんネタがありすぎて、キリがない。それに、これ以上書くと、森高本人にも「照れくさいことばっか書くなやぁ!!」と叱られそうなので、これくらいにしておこう。あと、20くらいあるけど。

 結局、何が言いたいか。インタビューでは笑顔ひとつ見せず、「はい、はい、そうですね、頑張ります」くらいしか言わない森高だが、実はとんでもなく人間くさい魅力的な男なのだ、とみんなに知ってもらいたいのである。SGレーサーになったことだし。1時間でも話したら誰もがそうと分かるけど、一ボートファンはなかなかそこまで会えないし。

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 レース後、記者会見が終わってから、森高の後を追ってピットに向かった。JLCの優勝インタビュー。香川支部の面々はもちろん、松井繁や田村隆信など多くの選手や関係者が取り巻いた。みんな心底嬉しそうに笑い、とりわけ王者は弟を見つめるような視線で微笑み続け、とにかく辺り一帯の空気がハッピー一色に染まっていた。私は思った。

 優勝した森高のハッピーは当たり前だが、この人たちは、みんないつも森高からハッピーをもらってるんだなぁ。

 と。同期も同支部も先輩も後輩も王者も黒須田も、そして今日の私も。

 じん。

 照れくさそうにインタビューを受けている森高の顔を見て、また心が鳴った。(photos/シギー中尾、text/畠山)

 

※気合の3着競りを演じた齊藤仁や、賞金王絡みの話など、他にも書きたいこと書くべきことが多々あったのだが……今日は森高のことでいっぱいで。しかも、どれだけ伝わったことか……すいませんっ!!)