真髄、トライアル!
11R 進入順
①池田浩二(愛知)06
②新田雄史(三重)08
⑥田村隆信(徳島)04
③太田和美(奈良)03
④井口佳典(三重)07
⑤中島孝平(福井)04
どこをどう切り取っても、激しく素晴らしいレースだった。掛け値なしの名勝負だ。
まずは進入。6号艇の田村が、激しく内を攻めたてた。すでに警戒していた他艇はこの動きを封じようとしたが、中島、井口、太田をふりほどいて3コースを奪った。当然、スロー3艇は深くなる。ダッシュ勢は、それに背を向けて颯爽と艇を引く。6人のすべてに勝機がある隊形が生まれる。
そして、スタート。全員がコンマゼロ台。内3艇の起こしは90mあたりだったが、それでもバチッと決めた。意地とプライドが凝縮した、超ハイレベルの横一線。伸びるダッシュ勢のプレッシャーを受けつつ、池田が先マイし、新田が差し、田村がまくり差す。そこに、4カド太田の二番差しが突き刺さる。
太田だ!
そう思わせるバック直線だったが、すんなりとは決まらない。1周2マーク、新田が突進気味に太田の舳先を掠め、先マイを打ったのだ。これをギリギリ避けた太田の舳先が浮く。太田に代わって、機敏に差した池田と奇襲を仕掛けた新田が舳先を並べた。ホーム直線、外の新田が池田に体当たりを食らわせた。凄まじい気合だ。跳ね飛ばされた池田が、体勢を立て直して2周1マークを回る。そこに、新田の全速差しが襲い掛かり、再び2艇が舳先を並べる。このあたりの凄まじい攻防は、VTRで堪能していただきたい。
リプレイには映らない部分でも、死闘が繰り広げられていた。太田に追いすがる田村、さらにその後方でバチバチと艇をぶつけ合う井口と中島。太田に振り切られた田村に、今度は井口が切り返し気味に襲い掛かる。舟券とは無縁の“銀河競り”だが、このトライアルではとてつもなくデカい競り合いなのだ。
先頭からシンガリまで、激しすぎる局地戦に目を回しているうちに、レースは終わっていた。1着から順に、123546。結局、今節のシリーズ戦同様にスロー勢の上位独占という着順だった。だがしかし、この平凡な並びの中に、6人の気持ちとテクがどれほどギッシリ詰まっていたことか。
「これが、賞金王トライアルだ」
胸を張って、多くの人々に見せたいレースだった。
金縛りトライアル?
12R
①瓜生正義(東京)19
②松井 繁(大阪)26
③毒島 誠(群馬)26
④篠崎元志(福岡)35
⑤湯川浩司(大阪)31
⑥齊藤 仁(福岡)25
進入、スタートからゴールまで激しい火花が散り続けた11Rとは、まったく別物のレースだった。穏やかな枠なり3対3、慎重すぎるスタート、内から順に回って徐々に縦長の展開に……これをもって、「11Rに比べて凡戦だった」と簡単にまとめたくはない。賞金王の重さを嫌と言うほど感じている面々だからこそ、こんなレースになることもある。松井にしてコンマ26。冷静に、冷静に、という思いが、逆に金縛りのように王者の判断、行動を萎縮させたのかもしれない。
11Rはピットアウトから6人をエキサイトさせた。その興奮が、ゴールまで選手たちを激しくせきたてた。このレースは、穏やかに進行した分だけ逆の意識=プレッシャーが働きすぎた。今日のところは、そう思うことにしよう。ただ、2度は許さない。同じようなレースが明日以降も続くようなら、私は断固としてクレームを付ける。賞金王の重みが痛いほどわかる面々だからこそ、勝ちたい思いを余すところなく水面に投影してほしい。間違いなく、それができるレーサーたちなのだから。
1億円を提供するスポンサーのひとりとして(何万分の1程度の小口スポンサーだが)、切に期待する。(photos/シギー中尾、text/畠山)