BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――仲間とともに

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 11R、12Rともに3着逆転がお見事だった。

 11Rは田村隆信。篠崎元志と激しい競り合いを演じたのち、3周2マークで強烈なツケマイを放ち、篠崎を沈めた。

 もちろん、敗北は敗北である。レース直後の表情が冴えなくても当然。勝った新田雄史とレースを振り返り合う場面では苦笑が浮かんでいたが、エンジン吊りを終えてピットに戻るときには、顔をしかめている。

 森高一真に話しかけられて、一気に表情が変わった。「ひぇ~~」とおどけた声をあげて、競り合いをしのいだ充実感のようなものを見せて、笑顔を浮かべたのである。21点がボーダーの目安とされるトライアル。もし4着だったら、田村は第3戦で1着を獲ってもそのラインに届かなかった。実は大きな3着だったのだ。そうした状況も含めて、安堵の思いはあったはず。森高一真がそれを引き出したというわけである。

 

 

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 12Rは松井繁。1マークではまくって攻めたものの、毒島誠と競り合うようにして後退。5番手あたりを走っていた。しかし2周1マーク、内から巧みな小回りで3番手を走る齊藤仁のふところに潜り込み、2周2マークで捌いた。王者の技を見せつける逆転劇だった。

 田村と同様、これは勝利ではない。というわけで、表情については田村と同様。そして、表情の変化も田村と同じだった。こちらの登場人物は鎌田義。肩を並べて控室に戻る道すがら、松井に笑顔が浮かんだのである。松井に関しても、この3着はデカい。というか、もし5番手のままだったら11点に留まっていたのである。着順を2つ上げてプラス2点。これが王者の航跡である。悔恨の奥にある、メドが立ったことへの少しの安堵を、やっぱりカマギーが引き出したのだろう。その後の松井は、モーター抽選に向かうまで、柔らかな雰囲気を醸し出していた。

 

 

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 トライアルは3回しか走れないから、実は2走目というのは重要だ。たとえば齊藤仁は、松井に逆転を許したことで4着となり、得点は10点止まりとなっている。つまり、もう21点には届かない。ボーダーはいくらでも変動するので終戦ではないが、自力で突破する可能性は薄くなった。

 いつも通り、が仁ちゃんの信条だが、さすがにレース後はいつも通りの表情には見えなかった。通常のSGよりは得点計算が簡単だから、状況はすぐに理解できただろう。さすがに厳しい顔で戻ってくる仁ちゃん。敗戦の、また逆転を許したことへの悔恨と、苦しい状況に置かれたことへの落胆と、その両方が入り交じっていたと思う。

 すぐに寄り添ったのは、ここでも森高だ。チャレンジカップ優勝でも12位には届かなかった森高。12位に残ったのは齊藤で、森高は「仁さんがふさわしい」と潔く認めた。二人はプライベートでも仲が良く、信頼し合う関係。その二人が、大きな大きな分水嶺を挟みあったわけである。だから、森高は齊藤を気遣う。齊藤も森高に心を許す。どうやら森高が激励の言葉を投げかけているようで、齊藤はこれを力にして、明日もいつも通り全力で戦うことだろう。

 

 

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 湯川浩司は、進入で魅せたものの、6着。ゴンロクを並べたことで9点止まりとなり、もっとも苦しい立場に置かれることとなった。さすがにレース後の表情は厳しい。視線こそ上を向いていたが、溜め息が聞こえてくるような悲壮な顔つきだった。湯川は過去3回の賞金王出場で、すべて優勝戦に駒を進めている。実はトライアルではオール3連対だったのだ。トライアルで外枠に入るのも、実は今回が初めて。短期決戦の外枠の厳しさを味わわされるハメになってしまったのだ。

 モーター格納を終えて整備室を出た湯川と鉢合わせした。湯川はこちらを見ながら、悲しそうな顔を見せた。湯川がずっと目をそらさないので、こちらも湯川と見つめ合いながら、無念を視線で伝える。並んで歩きながら、20秒ほどもそうしていたか。ようするにおどけて見せてもいるわけだが、突然、湯川がポツリといった。

「何もない」

 思わずずっこけてしまったが、それは湯川の本音でもあろう。結局、投げかける言葉も見つからず、会話もなく別れてしまったが、湯川はすーっと真顔に戻っていたのだった。まだ何があるかわからない。明日勝って19点までは引き上げておかなきゃ。そんなふうに言うべきだったか。

 

 

 ここからは、昨日に引き続き、トライアルの風景!

 

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中島孝平は実に淡々と、粛々とした雰囲気。まさに、高いレベルの安定感、だ。ただ、会見を聞いていて感じるのは、いつも以上のテンションの高さ。言葉数も多いし、口調も力強い。会見場を出るときには、新人選手のように「失礼します!」と一礼。期すものが大いに感じられるのだが。

 

 

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写真ではやや厳しい表情に見えるが、新田雄史の会見での様子は昨日とは大違いであった。最後には「優勝戦1号艇? 緊張しすぎるので、望みません(笑)」と冗談まで飛ばしてたし。会見時は枠番抽選前で、「前付けはないですね…………たぶん。ただ、他の人が動いてきても、入れるつもりはないです」とのこと。6号艇になっちゃいましたが……。

 

 

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連勝! 池田浩二が2走連続で1号艇を活かし、優勝戦当確。ピットに上がると、西山貴浩、今井貴士とはしゃぎ合っていた。今井がなぜか、池田と大の仲良し(というか池田がえらくかわいがってる)。今井に聞くと、「きっかけ? なんだったんでしょうねえ……」とのことだが。

 

 

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12R後は枠番抽選。愛弟子カマギーが祈りながら見つめるなか、松井が引いたのは、黄色い球。カマギーの顔がゆがむ……。松井自身は苦笑いだが、まあ、こんな状況慣れてる、のかな……。

 

 

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太田和美はまたしても6号艇。どうも今節はツキに恵まれないという印象だ。明日の動きには要注目。

 

 

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岡崎恭裕、峰竜太が抽選を見学していた。先輩である瓜生正義、盟友である篠崎元志の枠番が気になったのだろう。もちろん、同世代である新田雄史も仲良しで、こちらも気がかり。新田が引いたのは……あぁ、緑。その瞬間、大ウケする岡崎&峰でありました。こらこら。ただ、新田もそんな二人を見て、笑いをかみ殺してたけど。「ゆーし、やっちまったな!」「やっちまったぁ」ってな感じ?

 

 

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新田の師匠・井口佳典は2戦目に続き5号艇。外枠に師弟が並んだ! 井口の会見は枠番決定後。「明日はまず雄史を殺してから、2着以上を獲りにいきます(笑)」だって。もちろん「ウソですウソです」なのだが、井口、盛り上げてくれるなあ。ちなみに、笹川賞の準優は5号艇・新田、6号艇・井口と逆の並び。結果はご存じのとおり、新田が優出して優勝!

 

 

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抽選大トリは毒島誠。今節、大トリが多いっすね。今日の枠番抽選では、両レースとも最後まで白い球が出ず、6番目に引いた湯川と毒島に“残り福”状態となっていたのだった。湯川も毒島もこのツキを活かせるか!(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)