BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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トライアル第2戦 ダイジェスト

乾坤一擲

 

'11R

①新田雄史(三重)16

②田村隆信(徳島)18

③瓜生正義(東京)22

④中島孝平(福井)20

⑤篠崎元志(福岡)24

⑥湯川浩司(大阪)27'

 

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 朝から何度となくスタート練習が繰り返され、そのたび隊列が猫の目のように変わったのだが、最終的に枠なりに落ち着いた。が、キーマンの湯川が攻めに攻めて、回り直した5対1の枠なりだ。そして、湯川の展示タイムは他をぶっちぎる6秒57! 当然、私の目は単騎がましに釘付けになった。が、そのスタートが届かない。スリット全速を意識しすぎたか、スロー発進ばかり練習してきたためか。湯川は節イチ級の伸びを生かせぬまま、トライアルの2戦を終えた。

 

 

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 内に目を向けると、新田が追いすがる田村を振り切り、きっちり逃げていた。スタート展示のドカ遅れで「どうか」と見ていたのだが、この若者、本番に強いというか、かなりの強心臓の持ち主だ。昨日と今日の2戦で、私はやっと新田の超大物ぶりを肌身で感じた次第だ。遅いか。

 バック直線で、新田の1着=19点で優勝戦当確が約束された。が、トライアルはここからが本番だ。2着、3着、4着、5着争い。このレースもまた、凄絶を極めた。とりわけ激しかったのが、3周1マーク。それまで全速戦を主体に攻め合ってきた元志が、一転して最内に切り返した。ターンマークすれすれを回る絶妙な奇襲で、3番手の田村を捕える。元志という男、当たり前だが賞金王トライアルに相応しい。改めて、そう思った。

 

 

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 が、この奇襲を喰らった田村も、引き下がれない。ここで4着なら2戦で10点。ファイナル出場へ、ほとんど赤に近い黄信号が点ってしまう。田村は、直線から元志を攻め立てた。ガツンッと艇をぶつけ、内へ内へ締め付けようとする。元志も負けじとぶつけて跳ね返そうとする。やんちゃな男同士が額と額をくっ付けて力ずくで押し合うような光景。ザッツ、トライアル。とことん意地を張り合ったふたりは、舳先を揃えたまま最終ターンマークに向かった。内の元志が、脱兎のごとくブイに向かう。とにかく先マイし、ターンスピードで決着を付ける。そんな決意が見てとれた。

 

 

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 一方の田村は……この若者のスピードに打ち勝つには、開いての全速差しか。剛には柔か。私が思ったときには、田村は握っていた。握りっぱなし、と言うべきか。元志のスピードに、真っ向からスピード勝負を挑んだ。そして、ものの見事に元志を引き波にハメた。まさに、乾坤一擲の強ツケマイ。銀河戦士の底力を、全国の人々に知らしめた。

 田村、3着。これはデカい。決定戦ボーダーを21点とするなら、明日の第3戦は1着で手が届く。この阿波の勝負師が「自力1着条件」で、燃えないはずがない。明日がさらに楽しみになったし、この決定戦12人の中に田村がいてくれて、本当に良かった。

 

起死回生

 

'12R

①池田浩二(愛知)04

②毒島 誠(群馬)07

③松井 繁(大阪)08

④齊藤 仁(福岡)04

⑤井口佳典(三重)10

⑥太田和美(奈良)09'

 

 

 

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 今日も池田は強かった。強すぎて、怖いくらいだ。昨日のスタートがコンマ06で、今日が04。3号機の出足がよほどしっかりしているのだろうが、それにしても凄まじい踏み込みだ。他艇も負けじとゼロ台で迫ったが、盤石の逃げで20点満点を手にした。もちろん、これでファイナルに当確ランプが点り、明日はトップ当選を懸けた勝負駆けとなる。予断を許さぬトライアルとはいえ、ファイナル1号艇の可能性は極めて高いだろう。

 

 

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 そして……後続の争いは熾烈を極めたが、私の目は王者・松井ばかり追いかけていた。 松井、ヤバイ!!

 そう思いながら。1マークでツケマイを毒島にブロックされた松井は、差はないもののバック6番手。2マークでなんとか5番手に進出したが、まだまだ6着もありえる態勢だ。6着なら、2日間で10点。前述の田村と同じ、赤に近い黄信号が点る。王者が2日目にして絶望的な立場に立たされる。それは、地元ファンのみならず全国の多くのファンを落胆させるだろう。今年、ボートボーイで王者にはじめて◎を打った私も……。

 

 

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 だが、やはり王者の辞書に絶望の文字はなかった。2周1マーク、最内にいた松井はマイシロのないまま、ブイを舐めるようにターンした。当然、艇がほぼ真横に流れる。その流れた延長戦上を、ちょうど3番手の齊藤が駆け抜けようとしていた。コツンと当てて、軌道が横から前に変わる。いわゆるダンプと呼ばれる戦法だが、松井はその接触点をターンマークのはるか手前から見据え、決め撃ちでマイシロのないターンを放った。あくまでこれは私の想像なのだが、そうとしか思えない絶妙なダンプだった。動いているビリヤード玉に、狙いすまして別の玉をぶつけるような。だとしたら、とてつもない高等技術であり、同時に松井の必死さを実感させる“奇襲”でもある。とにもかくにも、文字通りの起死回生のダンプが決まったのだ。

 

 

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 その後も、松井は懸命な走りで3着を守りきった。後続を突き放せなかったパワーにやや不安はあるものの、明日の第3戦に「②着条件」という希望を与える3着だった。明日の12Rは5号艇。次に王者がどんな手を下すのか……11Rの田村とともに、楽しみは尽きない。(photos/シギー中尾、text/畠山)