BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――今年最初のSG勝負駆け

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 今年最初のSG勝負駆けである。ピリピリしているというわけではないけれども、気候が変わり、風も安定していないこともあってか、選手たちの表情には思索深さが浮かんでいる。多くがもろもろと考え込んでいるように見えるのだ。森高一真も、なんかすごい顔でモーター装着作業をしていて、脳裏にさまざまな言葉を浮かべながら作業を進めているといった雰囲気。こうなると縁の深い選手と言えども、やはり話しかけにくく、森高の視界に入っていくタイミングもつかめない。もっとも、作業を終えた森高におはよっすと挨拶すると、「おぅっ! クロちゃん!」と笑みが浮かんだ。気分は悪くなく、またリラックスもしている様子ではあるのだ。だが、一人になれば考え込む。今日のピットはみなが己のコンピュータをフル稼働しているようである。

 

 

 

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 1Rを差し切って後半に勝負をつないだ齊藤仁も、勝利の余韻を漂わせたりはしない。エンジン吊りの間にも終始、表情をむしろ険しくし、次の戦いに気持ちを向けているようだった。2着2本の条件で、1Rの1着はつまり後半の条件を少し楽にした(3着条件となった)。しかし仁ちゃんは浮かれることなく気持ちを切り替え、戦いの渦中から抜け出ようとしない。勝利者インタビューから帰ってきたときには仁ちゃんのほうから声をかけられたが、表情は真摯なまま。仁ちゃんスマイルが飛び出すのは、後半10Rを見事に乗り切ったときなのだろう。

 

 

 

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 勝負駆けは終わってしまっているのだが、田中信一郎の動きも目に留まった。1Rは3着だが、後半1着でもボーダーには届きそうにない。それを我々は時に、終戦と表する。しかし、田中のなかでは戦いは少しも終わっていないのだ。レース後にボートを引き上げ、操縦席に入った水を吸い上げるなどのエンジン吊り作業を終えると、田中は青のカポックを着たままボートをすぐに着水した。7Rに5号艇で登場するのだ。田中はほんのわずかな時間も惜しむように、速攻で次の準備を始めたのだ。ボートを係留所につけると、田中は早足でカポック着脱場に向かう。その後、ほんのわずかな時間を挟んで、もうピットにその姿があった。準優進出は厳しくとも、レースがある限り、頭も体も使って全力で臨む。SGクラスの凄味である。

 後半になれば、勝負駆けの様相はさらに濃厚になる。戦士たちは午後にはどんな表情を見せてくれるだろうか。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)