BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――匠の姿勢

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「加藤峻二さんは半世紀、僕が生まれる前から走ってる選手なんですけど、その人が毎日いちばん最初にボートを水面に下ろすわけですよ。僕が一番に下ろそうとすれば、そこを抜いていくんです」

 BOATBoy5月号のインタビューで、江口晃生がそう言っていた。マスターズ(名人戦)には着水一番乗りレースがある!? しかも加藤峻二が常勝!? というわけで、前検の今日、一番最初にボートを水面に下ろすのは誰かと注目していたら、西島義則だった。SGでも一番乗りの常連である西島が、加藤御大の前付けを許さなかった!?

 その様子を見届けてからピットに入ると、西島はなんと、早くもプロペラを叩いていた。唐津は記者席からピットまでの距離が全場でもっとも遠いのだが、その道のりをテクテクと歩いている間に、西島は試運転を行ない、その感触をもとにペラを叩き始めてしまったのである。凄すぎでしょう! 西島が長く第一線で戦っている原動力は、間違いなくこうした姿勢にある。そして、この舞台に登場する選手たちは、西島や加藤よりは着水が遅くても、同様の姿勢をもっているからこそ、「匠」と呼ばれるのである。

 

 

 

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 で、ピットを観察していると、まだモーターを装着もしていない選手も何人かいた。たとえば鈴木茂正。言っておくが、モタモタしていたわけではない。茂正は今節もっとも登番が若い選手。64期、王者や服部と同期っすね。マジか……はともかくとして、つまり茂正は新兵なのである。「いや~、忙しくて余裕ないです~」なんて苦笑しつつ、右へ左へと走り回り、その合間に自分の作業をしているという次第。もちろん、かつてはこの作業を何年かはやっていたわけだが、久々に味わうこの忙しさ、そりゃ大変だろうなあ。

 

 

 

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 それでも茂正はまだマシだったか。スタート練習とタイム測定は9班、いちばん最後なのだ。大慌てだったのは、ドリーム戦1号艇、つまりスタ連&タイム測定が1班の今村暢孝である。今村もまだ新兵の部類に入るし、九州ではもっとも登番が若いわけだから、茂正同様にたくさんの仕事がある。しかもスタ連&タイム測定はイの一番に行なうわけだから、時間が圧倒的に足りないのだ。「いや~、先輩たちにはずいぶん待ってもらってしまったんですけど、なんとか1周だけ試運転させてもらいました」と微笑むノブさん。明日からも、茂正もノブさんも、走り回る姿が見られるんだろうなあ。

 

 

 

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 さて、ドリーム戦といえば、進入がとにかく見ものである。全員が内志向であるうえに、日本を代表するイン屋が外枠に2人、いるのである。どんな並びになると予想します?

 会見での進入に関するコメントを並べておこう。

①今村暢孝「明日はなんとしてもインから行きたい。簡単なインにはならないでしょうけどね。でも深いところは行き慣れているところでもあるので、自分を信じていきたい。100を超えるかもしれないけど、せっかく1号艇をもらってますからね」

②江口晃生「2コースを守るというより、インコース獲りに行くつもりで入ろうと思ってます。だって、そうでなきゃ何コースになるのかわからないでしょう? みんな、どういう技を使ってくるかわからないですから。ただ、3、4、5コースとかに出ることになっても勝てるようにはしておきたいですね」

③今村豊「コースはわからないでしょう? 僕もわからない。わかるところから行きたいんですよ。(A1級の出走回数=90走には)届きそうですけど、それでも90か91でしょう。だから削られるわけにはいかないんですよ。フライングだと削られるかもしれないでしょ(1日1回乗りになってしまうという意味か)。だから、わかるところから行きたいんですよねえ」

④大嶋一也「コースは僕もわからないけど、艇番より外に行くことはないですね。ダッシュはないですね。西山や西島にとられるわけにはいかない(同期です)」

⑤西山昇一「うろうろしてたら6コースになりますよね。最低でも枠なりにいきたいです。5コースなら許せるけど6コースは嫌、というタイプですから。でも6コースの可能性もあるかな」

⑥西島義則「コース?(苦笑)変なコースになるなら、勝てる位置から行ったほうがいいですね。3スローならいいけど、4スローなら意味がないですし。それか、6コースかもしれませんね。スタート練習で6コースから1本やったけど、スタートが未知の世界みたいでした(笑)」

 さあ、どうなる? 私は案外1234/56とか1243/56の線もあるような気がしますが……。

 

 

 

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 さて、唐津のピットには秘密兵器があることをご存知でしょうか。いわゆる機歴簿が、タブレット型のコンピュータで見られるのだ(5場で導入されているとか)。整備室の隅に数台設置されていて、特に今日は前検だから、選手たちが集って自身のモーターの機歴をチェックしていました。加藤峻二も使ってましたぞ~。池上カメラマンによれば、「岡孝さんが『俺は無理!』とか言って紙の機歴簿を見てましたよ」だって(笑)。私も使える自信はありませんが……。でも岡さん、レース場入りの際はスマホを慣れた手つきで使ってましたけど。ガラケーの私より進んでます……。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)