BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――勝っても整備!

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 いやはや、強烈である。1コース1勝! ビッグレースでここまでイン壊滅状態の日なんて、最近あったかしらん? こんな日に1号艇が回ってきた選手は、なんとも巡り合せが悪いとしか言いようがない。

 唯一の逃げ切りは倉谷和信だ! そこまで誰も逃げられていなかったことは当然意識にはあったはずで、その連鎖を断ち切る先マイには気迫が感じられた。そして、ピットに戻ると当然、笑顔満開! ヘルメットを脱ぐ前から、はっきりとほころんだ表情が見えてくるほどだった。安堵の思いもあったでしょうけどね。で、もちろん沖悟は最高のニコニコ顔! 今日は後輩が大活躍し、それをわがことのように喜んでいたというわけだが、次は沖自身の勝利による笑顔が見たいぞ! とりあえず、笑顔の節イチは沖悟で間違いない。

 

 

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 ドリーム戦では、絶大な1コース信頼度を誇る今村暢孝も敗れた。それほど深い進入というわけではなかったが、今日の唐津水面に潜んでいた魔に魅入られたかのように、スタートで後手を踏んでしまっている。もっとも、ノブさん以外は全員がゼロ台だったのだが……。ある意味、今日一日を象徴するかのようなドリーム戦であった。ピットに戻った今村は、さすがに渋面。己への怒りを呑みこむかのように、無言で厳しい表情を作っていた。せっかく掴んだドリーム1号艇を活かせなかったのは、ただただ悔恨をつのらせるものであろう。

 

 

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 この現象が果たして何だったのか? 正直、よくわからないところがある。1号艇が機力劣勢で、外枠に好パワーが揃っていた? ピットで見ている限りは、そのあたりも不確かだ。

 8R、1着だった日高逸子は、レース後すぐに整備室に直行。本体整備を始めていた。3着1着と上々の初日だったのに? この整備は結局、12R発売中まで続いていて、けっこう長い時間、相棒と向き合うことになっていたのだった。途中、やはり整備をしていたらしい熊谷直樹と談笑。この二人、56期の同期生である。日高が整備に没頭していたおかげで、いいものを見たような気になったぞ。

 

 

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 10Rは倉谷が逃げ切ったレースだが、2着は岡孝。6コースから食い込んで、大穴を演出している。その岡も、日高と同様、カポックなどを脱ぐと整備室に直行。本体を外して整備を始めていた。6号艇で2着ですよ? こちらは日高と比べると、整備に残された時間が短いから、それで大急ぎの整備となったのかもしれない。いずれにしても、エンジン吊りを終えたあと、整備室に姿をあらわすのにものの数分ほどしか経っていなかったのだから、その動きは際立って見えた。

 

 

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 同3着の鈴木幸夫も、そのすぐ後に続いた。道中の3番手争いを制しているのに? 急いでいたのは、おそらく岡と同じ理由だろうが、同レースの2着と3着がともに整備室に向かったのはちょっと驚かされる光景ではあった。もちろん着順が悪かった選手のみが整備に走るというものではないわけだが、その行動の素早さという意味で、当たり前の場面には見えなかったということだ。

 ようするに、外枠で好成績を残した選手でも、決して機力優勢だったとは限らないのではないか、と推測する次第なのである。この流れ、明日にも引き継がれるのだろうか。1号艇の選手は気合が入るだろうなあ。

 

 

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 さて、唐津の帰宿バスは、1便2便制。同様のレース場と同じく、10R終了後に1便は出発する。9Rを終え、エンジンを格納せずに機歴簿を見始めた西田靖に、「西田さん、帰らないの?」と熊谷直樹が問いかける。西田は熊谷に冗談をぶちかましながら、調整を続ける旨を伝えて、その言葉どおりに1便出発後もピットに残っていた。熊谷も同様だ。今日の西田は中間着2本で、パワーアップの必要性を感じたのだろう。ちなみに、西田はタブレット端末のほうではなく、紙のほうを使ってチェックしてました。

 

 

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 10Rが終わると、ピット内に「1便で帰る選手は管理室前に集合」のアナウンスがかかる。他の場でもよく聞こえてくるものだ。ところが今日は、5分ほど後にもう1回、同じアナウンスがかかった。さらに、係の方がピットに駆けこんできて、ペラを叩いていた選手に「1便乗らないんですか?」と声をかけている。高塚清一だ。登番でいえば加藤峻二の次の古株であり、8Rで今日のレースを終えているから、誰もが1便に乗るものと認識していたか。しかし、高塚は帰らない。ペラ調整を続けたのだ。結局、最後の最後までペラを叩いており、もっとも遅くまで作業を続けた一人となっていた。江口晃生がBOATBoyのインタビューで「先輩が仕事をする様子を見ていたら、本当にすごい。誰もごろごろなんかしてないし、自分も刺激を受ける」というようなことを言っていたが、今日の高塚はまさにそれを目の当たりにさせてくれたわけだ。改めて尊敬しました!(PHOTO/中尾茂幸 黒須田=倉谷、今村 TEXT/黒須田)