BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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スリット姫だーー!!

 

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 いやはや、ここ8年ほどほぼすべてのSGのモーター抽選会を見てきたが、これほど選手たちが熱狂した抽選会は記憶にない。凄まじい盛り上がりだった。

 その立役者は“ふたり”いた。まず、何はなくともエース47号機。篠崎仁志が福岡周年を制した超抜エンジンだ。この伸び足は相当にヤバく、2節前の池永太のコメントは「行き足、伸びオバケ」!!なのである。平均展示タイム順は、1・5前後なのである。つまり、47号機が参戦したレースは、ほとんど展示トップなのである。福岡の水面は、とことんまくりが利く。行き足~伸びが他場よりはるかに大きな武器になる。まくりモーターの47号機を引けば、どれだけ有利か。

 私の前にテラッチこと寺田千恵がいたので、試しに「よんじゅうなな、よんじゅうなな」と呪文のように囁いてみた。するとテラッチは血相を変えて「ダメ、そんなに言わないで、ワタシ、プレッシャーに弱いんだから。欲しがりすぎると、絶対に引けないんだから。もっと普通のエンジンの番号を言って!!」と、それなりに真顔で答えるのである。うん、やはりみんな、マジで47号機を狙っている。

 

 

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 で、もうひとりの立役者が、選手班長の今村豊だ。若手ばかりの福岡勢では頼りない??ってな感じで重役を担ったのだろうが、さすがミスター、ガラポンの数字を読み上げるだけで選手たちをドッと沸かせてしまう。

 たとえば、井口佳典のとき。ガラガラポンで落ちた玉をつまんだミスターは「おっ、よんじゅう…………よん!」溜めに溜めて、“ハズレ”を宣告する。井口は苦笑。まだ引いていない選手たちは、安堵の表情とともに大笑い。

 

 

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 たとえば、今村暢孝のとき。74という数字を引いて「うわぁ、逆やったなぁぁ」と悔しがる暢さんに、すかさずミスターが「なんなら逆から読んでやろうか?」。暢さん苦笑、場内爆笑。

 

 

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 こうしてミスターが笑わせているうち、ガラポンはずんずん進んでいく。そして、47は出ない出ない。あっという間に、残り5人になった。予備抽選で47(ガラポンを引く順番)を引いていた桐生順平は、そのゲンのいいプレートを両手に挟み、お題目を唱えるようにして祈っている。もはや確率は5分の1、20%もあるのだから気持ちは良くわかる。が、ハズレ。がっくりとうなだれる桐生。

 

 

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 そして、選手垂涎のお宝は、その次に現れた。桐生とは対照的に、『スリット姫』宇野弥生がぶっきらぼうにガラポンを回す。ポトリ落ちたミスターがそれを摘み上げる。しばし、無言。それから、高らかにこう叫んだ。

「よんまんななせ~んっっ!!!!」

 ゴオオオオッッ、会場が地鳴りのように沸いた。おそらく、全部の選手が何がしかの声を上げただろう。ミスターの名調子と47号機の御威光。テラッチは満面の笑みで「姫かぁぁ、やっぱ姫かぁぁぁぁ!!」と叫んでいた。

 

 

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 で、最後に引いた服部幸男は「大トリです、さんよんふたふた(←登録番号)」と悪戯っぽく言いつつ、ちょっと寂しそうにガラポンを回した。

「実は、最後まで(47が)残るんじゃないかって、ちょっと緊張してたんだよね~」

 気の抜けたビールのような調子で呟いたものだが、なんのなんの、最後に残った20号機は前節、田頭実が高らかに節イチ宣言した絶好調モーターなのである。

「ふたじゅう!」

 47号機よりはるかに小さいが、会場のあちこちから「おおっ」という声が漏れる。それを聞いて、え、え、嘘でしょ?みたいに周辺を見回してから、にんまり笑うお茶目な服部であった。(photos/シギー中尾、text/畠山)