BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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準優ダイジェスト

サムライまくり

 

10R 進入順

①茅原悠紀(岡山)22

②毒島 誠(群馬)28

⑥今村暢孝(福岡)22

③服部幸男(静岡)18

④岡崎恭裕(福岡)15

⑤桐生順平(埼玉)15

 

 

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 有無を言わさぬ4カド絞りまくりで、服部が優出を鷲掴みにした。今節の服部はスリット近辺の行き足~伸びが命。その唯一最大の武器を、120%フル稼働しての勝利。進入もまた服部らしい。今村暢の前付けを悠然と招き入れ、何事もなかったかのように4カドに引いた。抵抗する素振りを見せたほうがより有利な4カドになるはずなのだが、そんなせせこましい小技は使わない。そして、真っ向勝負で内3艇を切り裂いた。潔い侍まくりだった。

 これで初日から661111。どん底から最高峰の舞台まで上り詰めた。ミラクル優出と呼べなくもないが、服部にはさらに一段上の「ミラクル優勝」がある。1995年、平和島総理杯で6611151①。明日優勝すれば、もっと鮮やかにしてド派手な数字が並ぶことになる。16年半ぶりのSG制覇という栄光とともに。

 

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 2着は茅原。服部の一太刀をモロに浴びながら、すばやく態勢を立て直して2マークへ。前を行く岡崎を一撃の差しで捉えきってしまった。3-4の舟券を持っていた私だが、悲鳴を挙げる間もないほどの逆転差しだった(嗚呼、岡ピーーーー><)。こんな芸当ができるのだから、優勝戦では間違いなくトップパワーだ。全部の足が抜群なので、センター筋からスリット同体なら十分に先頭争いに絡めると思う。課題は、やはりスタートか。平和島での勇み足が、さらなる大一番で足かせにならなければいいのだが……。

 

最強の武器

 

11R

①山崎智也(群馬)20

②菊地孝平(静岡)05

③平石和男(埼玉)11

④篠崎仁志(福岡)10

⑤吉川元浩(兵庫)10

⑥丸岡正典(大阪)07

 

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 智也が、遅れた。いや、ドカ遅れをやらかしたわけではない。智也のコンマ20は、10Rのイン茅原、12Rのイン今村豊より早いくらいだった。だが、隣にとんでもない男がいたのだ。デジタルスリッター菊地。泣く子も黙るコンマ05。スリットで、智也をキッチリ1艇身出し抜いていた。そのまま、締めはじめる。智也の伸び返しにも見るものがあったが、抵抗しようとしたときには、すでに菊地の艇はその舳先をすり抜けていた。よもやの5着大敗。

 

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 1マークを回って、はや菊地の一人旅。完全にスタート勝ちなので、パワー判断の難しい圧勝劇ではあった。ただ、自信を持ってコンマ05を行けるだけの出足、これがあったことは間違いない。誰も真似できない天性の武器に、この出足が合体したとき、菊地のスタートの破壊力は何倍にも跳ね上がる。明日の優勝戦もまた2号艇。内の艇が少しでも慎重になろうものなら、VTRを再現するようなレースができあがるだろう。誰もがスタートにナーバスになるSG優勝戦。デジタル菊地のアドバンテージは計り知れないものがあるな。

 

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 そして、2着だ。いや、驚いた。菊地が一人旅のバック直線、確かに丸岡は最後方を走っていた。丸岡もコンマ07まで踏み込んでいたが、展開に恵まれず万事休す。そんな1マークだったのだ。が、丸ちゃんは諦めてはいなかった。2マークの最内を全速で差して、苦しいながらも3~5着争いに。で、最内のまま2周1マークを回ってみたらば、平石との2着争い、一騎打ちになっていた。2周2マーク、外の平石を完封して優出ゲット……あっという間の4艇ゴボー抜き。前の艇が団子で競り合っていたという利もあったが、それなりの回り足がなければありえない逆転劇だ。「シリーズ5、6日目に仕上げるスロースターター」と言われる丸ちゃんだが、今節も5日目に上位級~抜群に仕上がったようだ。明日もまた6号艇。アウトからのスタートの予行演習はすでに済んでいる。これでパワーがさらに抜群~超抜までアップすれば、福岡SG名物の6号艇Vも現実味を帯びてくる。

 

あと1勝で……!!

 

12R

①今村 豊(山口) 21

②今垣光太郎(福井)22

③松井 繁(大阪) 15

④吉田弘文(福岡) 12

⑤石野貴之(大阪) 17

⑥赤岩善生(愛知) 28

 

 

 

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 来た。ついにここまで来てしまった。ミスター今村豊、52歳11カ月。あれよあれよと予選をトップで通過し、第2関門の準優も突破した。レースとしては、冷や汗ものの逃げきりだったかも知れない。スタート、コンマ21。威張れるものではなかった。すかさず、センター筋の松井、吉田が伸びなりに襲い掛かる。態勢としては、まくられても不思議ではない1マークだった。

 が、ギリギリ伸び返してターンマークを先取りできたのは、やはり自慢の行き足が存分に噴いたからだろう。松井の攻めをブロックして、あとは危なげなく逃げきった。節イチというほどではないが、今節のミスターの命綱はこの行き足だ。この足さえあれば、ミスターにしかできない「起こしから握りっぱなしスリット全速スタート」の威力が倍増する。それを生かしきって予選をトップ通過し、今日もまたこの足を全速で駆使してギリギリ逃げきった。

 

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 誰もやらなかった全速ターンでボート界に革命を起こしてから30数年、誰も真似できない個性的な全速スリット攻撃で今なおボート界の頂点に立つ男。艇界のエポックメーカー、永遠のプリンス、ミスター競艇、ミスターボートレース。嗚呼、なんて凄いんだ、今村豊。と、あまり書きすぎると明日の記事がなくなるので、このくらいにしておこう(笑)。とにかく、明日もう1回逃げきればSG最年長V、オールスター笹川賞としてはちょうど30年ぶりの優勝というありえない偉業が生まれることになる。機力も気力も申し分なし、唯一の敵は、やはりスタートだ。2号艇にあの恐ろしいレーサーがいるだけに、今日と同じスリットでは自慢の行き足も空を切るだろう。

 

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 2着は、今垣。やはり、この男も凄い。あれだけFや事故に苦しみ、大舞台から遠ざかっていたというのに……最前線に戻ってみれば、あれよあれよの優出である。今節、光ちゃんの足は「悪くはないが」という感じで目立ったものではなかった。逆に、首を捻るようなレースもあった。しかし、ふと気づけば優出なのである。いつの間にかパワーも抜群なのである。光太郎マジック。そして、大一番になればなるほど、離れ業もポカもやらかす光ちゃん。明日は平常心でどんな個性的な走りを見せてくれるのだろうか。

 うーーん、こう書いてみると、明日は王者も瓜池もいないけれど、ありえないほどの個性派が揃った優勝戦だな。単なる勝ち負けだけでなく、できる限りそれぞれの個性が鮮烈に投影される優勝戦にならんことを!!(photos/シギー中尾、text/畠山)