BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――汗だく!

 

 

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 暑い! とオーシャンカップの前検ピットでは毎年書いているような気がするが、暑いものは暑い。オーシャンでのピット取材は、まさに夏の到来を感じさせる風物詩。だから、書かずにはおれないのである。

 選手たちも、当然暑い。全員が、汗だくである。たまたますれ違った白井英治の顔は汗だくの3乗ほども汗が流れていた。汗だくじゃないっすか~、と言ったら、暑いね~と豪快に笑った。この男、汗だくでも爽やかだ。

 そもそも、汗だくになろうというものである。白井はSGジャンパーを着込んでいるのだ。アロハ一丁ですっとぼけている僕でさえ暑いのだから、長袖をがっちり着ている白井が汗まみれになるのは当たり前だ。そんな白井が、僕を見ておかしそうに言った。「ダイエットになるんじゃない?」。だはは、今節終わったら体重減ってるかも! などと笑い返しながら、もしかしたら白井は減量も兼ねて厚着をしているのかもしれないと思った。暑けりゃ上着を脱ぐのは我ら凡人。トップレーサーは暑けりゃ逆に上着を着込んだりするわけである。

 

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 実際、重成一人の格好は、減量中の人のそれに見えたものだ。スポーツタオルを首に巻いているからだろうか。僕がダイエットのためにジョギングしようと思ったら、きっと同じような格好になる。この暑さは、選手にとっては逆に幸運なのか? もちろん、楽なことではなく、むちゃくちゃ苦しいことには違いないが、選手たちは勝利のためなら苦難の中に身を置くことを厭わない。暑いんだから、それ、脱いだら? なんて重成に言ったとしても、きっと頑として脱がないのであろう。

 

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 モーター装着作業を眺めていると、自艇のもとに留まって行なうその作業が、実は力仕事なのだと改めて認識する。モーターをボートに装着する、ということは、いわばボルトを締め続ける動きである。それも渾身の力で。つまり、腕はもとより全身に力がこもっているわけで、この作業をしているだけで汗が噴き出しそうだ。事実、ボルトを締めている中野次郎のあごからは汗がしたたり落ちており、時折右腕でそれをぬぐいながらも、しばらく経てばまた汗は流れ落ちるのであった。こちらの姿に気が付いた次郎は、「いや~、暑いですね~」とこれまた爽やかに笑ったのだが、アロハ姿で突っ立っているだけの僕が「暑い」などと口にするのは犯罪ではないかとさえ思えたのだった。

 30℃、80%。ピット内の寒暖計が指示していた気温と湿気。なるほど、今日の空気は汗を好んでいたわけだ。そんななかで奮闘する選手たち。水分はきっちり補給してくださいね。

 

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 で、そうした気候のなかでは、エンジンは動きを鈍くする。選手の多くが口にしていたのが、「重たい」。つまり回転が上がっておらず、出足が鈍いわけである。梅雨時や夏、天候急変の雨空の日によく聞くフレーズなのだ、「重たい」は。気温も湿度も高ければ高いほど、回転は上がらないのが一般的だ。

 なにしろ、ドリーム戦共同会見では、全員が「重たい」と言った。初っ端に登場したドリーム1号艇の田村隆信の最初のコメントが「上りが悪い」だし、菊地孝平も「みんな同じだと思うが」と言っている。つまり、今日の段階では誰もが回転を合わせ切れずに前検を走ったわけである。このクラスになれば、明日には早々と回転を合わせてきたりするので、気配には要注意。特にドリーム戦組は時間がたっぷりあるわけだから、今日のコメントとはまるで違う足色になっている可能性もあるかも。

 

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 ただ、気になったのは毒島誠だ。「重たいだけならいいけど」と言ったくらい、手応えがなかったようだ。「全部良くなかったっす」だから重症。しかも、ペラが最近の自分の形に近かったというから、難しいところだ。まったく乗ったことのない形に大幅に叩き変えるというリスクか、本体整備という博奕的要素の強いリスクか、いずれにしても大胆な決断が迫れれる局面である。

 毒島は、言わずと知れた、昨年の丸亀MB記念の覇者。この地でSG初制覇を果たし、一気に階段を駆け上がってきた男である。思い入れの深い水面で、いきなりビハインドを背負ってしまった格好の毒島。明日からどんな奮闘を見せてくれるのか。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)