BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――懸命!

 

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 ドリーム組のみを見かけたといってもおかしくなかった午後の整備室に対して、実にさまざまな選手の姿を見かけることになった整備室。整備用テーブルには、外された本体が山ほどみられ、その脇では懸命な整備をしている選手が多数。初日のレースを終えて、気になる点を解決しようと本体整備に取り掛かる選手が続出したのだ。特に、川﨑智幸は実は1R後にも本体整備をしており、後半8Rのあとにも本体を割って、2走のレース後をともに整備に費やしたのだった。なんとしてもパワーアップを、の思いがびんびん伝わってきた。

 

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 篠崎仁志、馬場貴也……などと名前をあげればキリがないが、印象に残ったのは興津藍だ。10Rに出走した興津は、レース後に速攻で整備室に駆け込んでいる。丸亀の選手宿舎は徒歩移動であり、帰宿バスというようなものはないが、やはり10R後には帰宿第1便が出発する。10R組では、松井繁もレース後は急ぎモーター格納をして、これで帰っているが、興津の動きも「帰るために急いで格納」と一瞬は見えたのだ。しかし、興津は本体整備を始めた。今から!? 残された時間は11~12Rの小一時間ほど。だというのに、興津は本体を割らずにはいられなかったのだ。ちょうど川﨑の本体整備が終わったころ、興津はそれを始めた。気になる部分があれば、明日に持ち越してなどいられない! トップレーサーの執念を見たような気がした。

 

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 本体整備ではなく、リードバルブ調整をしている選手も多数。今垣光太郎が西山貴浩と談笑しながら調整をしている姿は、なんだか微笑ましかった。今垣のほうがあれこれと西山に話しかけ、西山はにこにことそれに応えていたのだ。あまり見かけない組み合わせということもあって、印象に残る。ほかには桐生順平も、9R後にすぐに始めている。ターンスピードも速いが、作業にとりかかる動きも速いのだ。

 そんなわけで、整備室は満員御礼! 時間帯によっては、ペラ調整室よりも人口密度が高い瞬間があったほどだ。初日ならでは、ということかもしれない。

 

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 初日らしいといえば、試運転を遅くまで続けている選手も何人か見かけられたことだ。瓜生正義が11R発売中に展示ピットにボートをつける前に何周か走ったのを除けば、もっとも遅くまで水面にいたのは石渡鉄兵。断固たる決意で、パワーアップをはかっていた。ペラ室と係留所の往復を何度か見かけ、叩いては走り、叩いては走り、を続けていた模様だ。1R1回乗りを終えてから、この時間までそれを続けていたわけである。同じ1R1回乗り組では、平本真之もほぼ同じ時間まで走った。これもまた執念だ。

 

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 中野次郎も、なかなか試運転をやめなかった。こちらは2R1回乗り。走り続けた時間は石渡や平本とそれほど変わりはない。久々のSG、やはり懸ける思いは大きいか。

 それにしても、次郎は優しいっすね。試運転を終えピットに上がると、試運転後にペラ調整をしようと陸に上がってきた毒島誠がエンジン吊りに駆け寄った。10R発売中のことであり、ドリームを走る毒島にとっては最後のひと調整だ。それを知っている次郎は、毒島が手伝おうとするのを「いいからいいから!」と制した。俺のことはいいから、調整に向かえ、ということだろう。もちろん、毒島としては、先輩にそう言われたからといって、はいそうですか、というわけにはいかない。結局、毒島は次郎とともにエンジンを架台に乗せ、さらに整備室へと運び込もうとしている。ここで再度、次郎の「いいからいいから!」が飛び出た。今度は毒島を制するというよりは、半ば「自分の調整のほうが大事だ!」と諭すようにして架台を奪い、自ら整備室へと運んだ。毒島は頭をペコリと下げて、ペラ室へ。次郎は笑顔でそれを見送っている。

 う~ん、次郎、頑張れ! BOATBoyに連載コラムを持ってもらっていたこともあって、わりと心安い次郎。彼がいかに好青年であるかは、もう何度も目の当たりにしてきたが、30代になっても結婚しても、変わらずいい男! やっぱり応援したくなるわけである。ドリーム戦は落水失格となってしまったが、毒島も明日は巻き返せ! 言うまでもなく、毒島自身もとびきりの好漢である。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)