BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――真夏の日差し!

 

 

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 エンジンがカポック着てるぅ~。

 ボートレーサーたちは、ボートから離れるときにはこうしてエンジンにカポックをかぶせるのである……というのは真っ赤なウソで、これは「直射日光が当たる場所にボートを置くことがあるレース場のピット」に限られる。特に、今日のように夏の日差しがガンガンと降り注ぐ日には、丸亀では過去にも何度か見かけたものだ。エンジンは機械、金属、そして生き物。激烈な直射日光を当てないほうがいい、というふうに考える選手も多いわけですね。こうしていない選手もいるので、どちらが正解かは僕には判断する由もないが、こういう場面でも選手はできることはすべてやって、戦いに臨んでいるというわけである。

 

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 1R、西山貴浩がピットに戻り、九州勢がエンジン吊りに参加。操縦席の水分を掃除機で吸い取り、艇旗などを交換し、岡崎恭裕と峰竜太がボートの前後を受け持って、上の写真のボートレースロゴ入り背景の前にボートを運んだ。そこで、笑いが起きる。誰が何を言ったかは確認できなかったが、その笑いを受けて岡崎と峰はボートを後方にズラした。どうなったか、というと、写真をよく見ていただければおわかりのとおり、エンジンが日陰に入るように動かした、のである。なるほどぉ。レース後だから、ひとまずカポックは返さなければならない。でも、エンジンを日光にさらしたくない。ボートの部分は日向に置いたほうが早く水分が乾くだろう。というわけで、こういう置き方になった次第なのだった。選手の動きには意味がある、わけである。

 

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 それにしても、今日は節イチの太陽ギラギラである。まだ100%の太陽ではないが、日向にいると、肌がジリジリ焼ける感覚。エンジンだけじゃなく、僕にもカポックかぶせてください……って、さらに暑さが増すな、それでは。ようするに日影が恋しい陽気なのである。

 しかし選手はそうは言っていられない。というか、別に気にしない。レース後、やはり日の当たる場所にボートを動かした谷村一哉は、着替えるとすぐに駆けつけて、後半のための準備を始めた。日差しは容赦なく照りつけるが、谷村はまったく意に介さない。暑かろうが寒かろうが、ただただ勝利を求めて、するべきことをするだけなのだ。

 

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 菊地孝平も同様。谷村と同様の行動で、日差しを浴びながら作業を始めていたが、その集中力がまた凄まじい。ちょうど通路のようになっている場所ギリギリにボートがあったため、横を通過するときに挨拶をしたのだが、菊地はまったく気づく様子もなく、モーターを見つめ続けていた。いや、きっと目に映っているものは脳裏に浮かぶ何か、なのだろう。そのとき、菊地のスーパーコンピュータはフル稼働していたはずだ。で、視界にチラリとデブが入ってはいたのだろう。ふと振り向いて、やっぱりハゲかとばかりに目を見開いてニコッ。菊地の深き思索をわずかでも邪魔したかと思うと、ちょっと心苦しかったりする。

 

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 さてさて、吉田拡郎が波に乗っている。2R、見事な4カドまくり! 拡郎の持ち味を最大限に発揮した一撃であった。宮島GⅡモーターボート大賞Vの勢いはまだまだ継続しそうな雰囲気だ。

 レース後の表情も、また充実感いっぱいだ。勝利にはしゃぐわけではなく、頬をグッと引き締めながらも、一緒に走った作間章、吉川元浩ら先輩に声をかけられると、深い笑顔がすぐにあらわれる。からかい気味の言葉だったのか、やや苦笑いも混じっていたように思えたが、しかしちっとも困ったふうではなく、むしろ「会心のまくり決めちゃってすみませーん」というふうな満足感も見えたのだった。

 ちなみに、3着だった毒島誠がレース後の礼を言う際、「カクさん、ありがとうございました!」と声をかけていた。カクさん! スケさんはどこだ!? というのはともかく、なんだか実に新鮮でした。艇界のカクさんは今節、何度印籠を突き出して、ライバルたちをひれ伏せさせるだろうか。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)