BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――大阪祭り!

 

 

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「今日は大阪祭りや!」

 太田和美が嬉しそうに宣言した。「その通りや!」とばかりに笑う大阪勢。ヘルメットをかぶったままの湯川浩司も、そういうかたちの先輩の祝福に、顔をほころばせていた。

 1R=田中信一郎。2R=湯川浩司。同門の2人が、同じ5コースから快勝! 二人とも厳しい条件の勝負駆けを強いられているが、後半に望みをつなぐ会心の勝利は、本人たちはもちろん、むしろ仲間たちを沸き立たせている。太田、松井繁、岡村仁の笑顔は、「俺たちも続くで!」という決意であり、予告ホームランのようなものと受け取っていいのかもしれない。

 

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 田中の場合、6号艇という不利枠ながら、きっちり勝ち切って後半の条件を楽にしたのだから大きい。ボーダー6・00なら今日は16点が必要。2着・2着という条件だが、1着を獲ったことで後半は3着条件になった。4号艇だから、1Rよりハードルは低いと言うべきだろう。畠山シュー長が前検から節イチと見立て、実際に軽快な足色を見せつけながら、2日目までは結果につながらなかった。しかし昨日の勝利を経て、勝負できる位置につけた。後半はとびきりの気合で臨むことだろう。レース後は嬉しそうに笑っていた田中は、インタビューを終えてピットに戻ると、いきなり鋭い表情! 後半が5Rと、時間がないということもあるのだろうが、さっそく勝負モードに戻って準備を進めていた。幾多の修羅場を繰り広げてきた田中だ。こうした切り替えはお手の物だろう。

 

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 湯川はボーダー6・00なら1着・2着。後半は6号艇だから、ひとつでも枠が内の2Rで1着を獲れたのは、やはり大きい。レース後に笑顔がこぼれるのは当然だろう。また、気持ちで走るところもあるタイプなので、会心のレースができたことが後半にもつながるはずだ。

 公開インタビューに向かう湯川とすれ違ったので、親指を立てて祝福すると、「獲った? まあ、あれは買えんわな」と楽しそうに笑った。意味深に深々と頭を下げると、「絶対嘘や~」とまた笑う。もちろん「アナタは買ってませんでした、すみません」と頭を下げたんですけどね(笑)。いずれにしても、湯川浩司、気分上々。次も大穴をあけてもらうとしよう。

 

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 そうした一方で、実に悔しそうな表情を見せていたのは、1号艇である。1Rは平山智加。地元SGでの初勝利をゲットするのに絶好のチャンスを迎えた白カポック。バックでは池田浩二に差し込まれながらも勝利の目は残されていたが、2マークで田中、池田に捌かれて後退。さらに3周2マークでは山口剛にまで抜かれてしまった。これは悔しい。必勝を誓ったはずなのに、舟券からもこぼれてしまった。ピットに戻ってきてヘルメットを脱いだ平山の顔は、悔しそうに固まり切っていた。

 着替えを終えた平山は、装着場に置かれたボートのもとで作業を開始。溜め息が聞こえるかのような、落胆した雰囲気だった。今日は1回乗りだが、作業を始めたということは、このあとは調整と試運転に励むということだろう。そう、まだ2日間、残されているのだ。このまま大敗続きで終わるわけにはいかない。いわゆる敗者戦ではあっても、地元ファンのために、心をこめた戦いを見せてくれるはずである。

 

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 2Rの齊藤仁も、なんとも悔しいレースになってしまった。湯川浩司にまくり差されたのはともかく、終わってみれば5着というのは、己を責めてしまうような結果だろう。2周1マーク、2番手争いを演じていた平本真之のツケマイを浴びて、ずるっと下がった。2着も充分、悪くて3着、という局面で、一気に後方に置かれてしまったのだ。そのとき、ペラ室では大歓声と悲鳴が同時にあがっている。いや、悲鳴のほうが大きかったか。平石和男が苦笑いしていたように、「あぁ、仁……」というような溜め息混じりの驚きが強かったように思える。それほどまでに見事なツケマイ、あるいは予想もしなかったシーンであり、当事者である齊藤にとっては、悪夢のような展開である。

 カポック脱ぎ場まで、まるでうなだれるかのように視線を下に向けたままだった仁ちゃん。その悔しさを振り切って、12Rで意地を見せてくれ!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)