BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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丸亀オーシャン優勝戦 私的回顧

外れた予言

 

12R優勝戦

①吉田拡郎(岡山) 15

②濱野谷憲吾(東京)13

③徳増秀樹(静岡) 11

④池田浩二(愛知) 17

⑤田中信一郎(大阪)12

⑥瓜生正義(福岡) 08

 

 カクロー、おめでとう!! 今日のレースのことは、あまり多くを書く必要はないだろう。やや慎重なスタートではあったが、ぐいぐい伸び返して1マーク制圧。回った瞬間に優勝とわかる完璧なインモンキーだった。4月に大村周年記念を制した勢い、中堅上位から節イチ級へと仕上げきった整備力、繰り上がりでファイナル1号艇を手にした強運……それらの要素をすべて水面で結実させた優勝。今晩の丸亀水面は、拡郎が勝つためだけに用意されていた舞台だった。

 

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 今日、この場で読者に伝えたいのは、やまと学校時代の拡郎クンだな。90期には石野貴之という超の付くエリート二世訓練生がいた(これは石野がSGを獲ったときに書いたはずだ)。一方、拡郎は石野と正反対、とびっきりの落ちこぼれだった。主任教官だったKさんが言うのだから、これは事実だろう。

「一を言えば十も百も理解する石野と、不器用で融通が利かず毎日転覆ばかりしてた拡郎。ほとんど毎晩、拡郎を呼び出しては厳重注意をするのが日課だった。『吉田拡郎訓練生、吉田拡郎訓練生、ただちに教官室に来なさい』。何十回、放送したかなぁ(笑)部屋に入ると直立不動で『はい! はい!』って元気よく私の説教に答えて『申し訳ありませんでした!』って神妙に頭を下げるんだけど、また次の日もおんなじミスをやらかすんだよなぁ(笑)」

 

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 懐かしそうにそう語るKさんの嬉しそうなこと。ダメな子ほど、手が掛かる子ほど可愛い。その典型的なパターン。私とKさんは飲み仲間でもあるのだが、飲むたびに「拡郎がああした、拡郎がどうした」と必ず90期きっての落ちこぼれ生徒の話題に突入するのである。6年くらい前だったか、こんなことも言ったっけ。

「石野はすぐにでもSGを獲れる。でもなぁ、拡郎はなぁ……無理だろうなぁ、素質はあるけど、どっか抜けてるからなぁ」

 ひとつの予言は、間もなく的中する。石野貴之、2010年SG制覇。舞台は丸亀、オーシャンカップ!!!! そして、もうひとつの予言は、今日、完全に外れた。やまとの鬼っ子が、素晴らしいイン逃げでその予言を覆した。

 

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 うん、私の話はこれでおしまいである。なんのオチもないのだが、ウサギとカメよろしく「落ちこぼれでも、地道に頑張れば天下を獲れる」とか「拡郎って親近感を持てるヤツだなぁ」とか、好き勝手に読み取っていただきたい。一度も言葉も交わしたことのないのに、私も拡郎に対してとびっきりの親近感を抱いている。それくらい、Kさんから拡郎についてのあれやこれやを聞かされたのだ。Kさんの親バカ菌が移って、私も我がコトのように嬉しいのだ。そして、ついに同じ土俵に乗った「90期随一のエリートVS随一の落ちこぼれ」という出来すぎのライバル物語を、これからも砂被りの席で観戦させてもらうとしよう。

 嗚呼、それにしてもKさん、今ごろどこの居酒屋でどんな祝い酒を呑んでいるだろうか。賭けてもいいが、その酒にはちょいとピリ辛の塩味が混じり込んでいるはずだ。

 おめでとうカクロー、そして、予言が外れて良かったね、Kさん!!(photos/シギー中尾、text/畠山)

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