BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――勝負!

 

 

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 真っ向勝負は気持ちいい!

 11R。6号艇の土屋智則が前付けに動いた。もちろんイン山田康二は譲らないし、2号艇・西山貴浩も同期にやすやすとコースを奪われるわけにはいかない。スローのならびは126。スタ展で土屋も意思表示をしていたから、本番はわりとゆったりした動きで、この並びに収まっている。進入から真っ向勝負!

 レースも真っ向勝負だった。土屋が3コースから渾身のツケマイを放ったのだ。がっちり受け止める山田。土屋が前に出そうな勢いだが、山田も意地でもそれを許さない。バックでは完全に併走! 力のこもる激突だった。勝ったのは山田。渾身の勝負に勝った充実感が、レース後にヘルメットをとるとあらわれている。敗れた土屋も、果敢に攻めた結果の2着に充実感を得たのか、さっぱりした表情になっていた。

 

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 さらに、控室に戻る際、二人は並んで向かっている。1周目バックを再現する併走!? もちろんそんなことはない。真っ向から剣を交えた二人だから、ひたすら爽やか! ガチンコで心ゆくまで勝負した者同士は、闘いのあとには爽快感を得るのである。二人の様子は、戦友と表現するしかないほどの心の通い合いを感じさせるものだった。

 

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 一方で、西山はただただ悔しい。コースを主張したまではよかったが、二人の戦いからは蚊帳の外に置かれてしまっているのだ。

 レース前、自分のボートを磨いていた黒井達矢に、西山は大声で話しかけている。

「黒井ぃ~、俺のボートも磨いてくれ~」

 これからレースなんですけど(笑)。黒井も困ったように苦笑いを返す。西山はさらに重ねた。

「黒井ぃ~、俺の腕も磨いてくれ~」

 うまい! 座布団1枚! 黒井は「はーいっ!」と快活に返していたが、どうやって磨くつもりなんでしょうか? 足合わせしまくります? それはともかく、自分のレースが間近に迫って、緊張感でパンパンになっていても、ユーモアを失わない西山はたいしたもんだと思う。

 しかし、レース後はそうはいかない。3着とはいえ、1着の勝ち負けに加われなかったことは、ただただ西山の顔を歪ませるのだ。何度も書いているとおり、西山貴浩は勝負師である。そして、極上のエンターテイナーである。そのバランスが常にとれているというわけだが、なかなかできることではないはずである。

 

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 明日は勝負駆けなので、得点率に余裕がない選手たちは必死だ。明日1着でも1点足らずの相手待ちとなってしまった新田雄史も、望みがゼロではない以上、奮闘するしかない。いや、そうでなくとも、新田の立場を思えば、このまま終わるわけにはいかない。というわけで、今日のレース後も本体整備をしている新田の姿があった。

 新田は今のところ毎日、セット交換をしている。ピストン2本、ピストンリング4本、シリンダーケースの交換。シリンダーのなかでピストンが往復運動をし、ピストンリングとシリンダーが摩擦して燃料が爆発する、というのが超大雑把なエンジンの仕組み。つまり、その部分を総とっかえするのがセット交換だ。ある意味、別物のエンジンにしてしまう部品交換である。それを新田は毎日やっている! 当然時間を要する整備だが、新田は飽くことなく、レース後にはこれをしまくっているのだ。こんなにもセット交換を連続するのを初めて見たぞ。

 これはもはや、パワーアップをはかる作業というより、何としても立て直すのだという新田の執念の発露である。今年はどうにもエンジンの引きが悪く、SGなどでも苦戦を強いられることが多かった。格上として参戦しているヤングダービーでも、同様の事態に苦しんでいる。そんな状況を打破したいという思いが、新田の整備連発からは伝わってくる。今日の整備がセット交換だったかどうか明日の直前情報を確認してほしいが、とにかく新田は整備室で死闘を繰り広げているのである。

 

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 長田頼宗は、10Rが発走するころに本体整備を始めている。もう時間はあまり残されていないのに、手をつけずにはいられなかったのだ。

 10R発売中に長田は試運転を切り上げた。一緒にボートを引き揚げた秦英悟のもとに駆けつけた長田は、頭を下げている。

「ごめん。なんかおかしいんだ」

 試運転を見ていないので推測でしかないのだが、二人はおそらく足合わせをした。しかし、まったく足合わせにならなかった。長田が秦についていけなかったのだろう。だから、せっかく足合わせに付き合ってくれたのに、秦には何も実がなかった。それを謝ったのだと思われる。なぜそうなったかといえば、長田のモーターが「なんかおかしい」からだ。

 エンジン吊りを終えると、長田は整備室の整備テーブルに直行。すぐに本体を外している。何がおかしいのかを確かめ、解消するためだ。時間が残されていなくても、やらずにはおれない! そんな長田の必死な思いが伝わる一連の動きだった。

 長田は明日、連勝条件! SG経験も増えてきて、ヤングダービー次第ではチャレンジカップ出場も見えてくる長田としては(賞金王は地元開催!)、なんとしても予選は突破したいところ。明日は1Rに登場なので、やはり今日、ある程度メドをつけておかねばならなかった。その1R、どんな気合を見せてくれるのか、楽しみになってきた。

 

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 さて、同期うんぬんという話を何度か書いてきた。SGでも同様だが、こうした若者たちのレースでは同期の絡みは特に目立つ。ついつい目が向いてしまうのです。

 整備室の隅で、ゲージ擦りを始めていたのは西川昌希。その横に、中田竜太がにこにこ顔で座った。話しながら、中田もペラにゲージを合わせる。直後、中田は立ち上がって整備室内のペラ調整所でハンマーをふるっていた松田大志郎のもとに歩み寄った。またニコニコ。

 彼らは104期の同期生であります。これまで、この期の絡みはたぶん書いたことがない。SGはもちろん、新鋭王座への参戦も少なかったからだ。去年の桐生では中田と岡村慶太がいたが、それまでは常に中田の単独参戦だった。そこに、GⅠデビューでいきなり猛烈なインパクトを残している西川と松田が加わったという次第。これからもこの絡みは何度も見ることになるだろう。

 

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 あと、最大勢力のひとつである100期勢は、本当に仲がいいなあ。今日はこんな写真が撮れてしまいました。ピースサイン、あざーっす!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)