BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――格上とは

 

 

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 朝一番で顔を合わせたのは峰竜太。いつも通りのアロハシャツ姿の僕を見て、「寒くないっすか!?」と笑っていた。寒いどころか、暑い! 事実、ちょっと汗ばんでいたのだ。峰はニュージェネTシャツの下に長袖のウェアを着ていた。二人並べば、季節感がまるでわからんだろう。まあ、こちらは皮膚の下に相当厚着をしている。なにせ体重は峰の2倍なのだ。体を半分に割ったら、峰竜太が二人……なんて話してたら、峰がキャハハハと笑った。予選トップのプレッシャーはまったくないようである。

 

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 で、その後にピットの温度計を覗いたら、峰のフリの意味がわかった。気温は22℃を示しており、26℃だった昨日から4℃も下がっているのだ。マジか! まったく気づかんかった。そう言われると、なんだか体が冷えるような気が……。てなことはともかく、この冷え方はモーターの気配に影響を与える可能性がある! 準優組のなかでは桐生順平が1R後にはボートを水面に下ろしており、これはかなり早い動き出しだったが、そういう理由もあるのだろうか。表情は昨日までと変わらず、リラックスしている雰囲気もあったが、実際はこの気候に対応して、決して優勢ではない足を上向かせようという強い思いはあるだろう。

 

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 そうそう、埼玉のもう一人の準優メンバーである黒井達矢は、ギアケース調整。プロペラ以外を調整しているのは、黒井だけだった。黒井もやはりリラックスした表情で、まだ緊張感は伝わってこない。しかし、もっとも早い動き出しが桐生で、ペラ以外の作業をしていたのが黒井、というのは単なる偶然なのだろうか。そこには特別な思いを感じるし、また地元だからこそ調整の方向性をよく知っているのではないかという推測も生まれてくるのだが。

 

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 準優に4人残った福岡勢は、ペラ調整。なかでも、松尾昂明が整備室内の調整所に根を生やしていた。エンジン吊りには出てきて、福岡勢の出走がなかった2Rでも坂元浩仁をヘルプしていたが、それが終わると即座にペラ調整を始めるといった按配で、ほとんどの時間をペラ叩きに費やしていたのだ。松尾の伸びは、芦屋新鋭王座を思い出させるほどの鋭さがある。さらに磨きをかけようというのか、あるいは3コース向きに多少の変化を加えているのか、なにしろ忙しそうなので確認することはできなかったが、とにかくあの再現を狙っているのは明らかである。

 

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 西山貴浩も、多くの時間をペラ調整にあてていた。こんな叩き方、初めて見たのだが、身体を深く折り曲げて、翼面を直接覗き込むような態勢で、木槌を振り下ろす。普通は、ペラにゲージを当てて形状を確認し、ペラを叩いて、またゲージを当てて確認、という流れになるのだが、西山は翼面を見ながら叩いているので、カンカンと叩いている時間が長い。西山流オリジナルハンマリング、という感じ? ハンマリングなんて言葉があるのかどうかはわからんが。

 

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 さてさて、まだまだ動きが本格化してはおらず、表情にも余裕があった朝の準優組だが、力強い何かを発散しているように見えたのは、平山智加と山口達也である。

 今節の銘柄級といえば、峰竜太、篠崎兄弟、桐生順平。予選落ちした選手では新田雄史、前田将太といったあたりか。そこに、本来であれば平山と山口を加えなければならない。準優メンバーでGⅠ以上を勝った選手は5人しかいないが、そのうちの一人が平山である。松尾は新鋭王座だが、平山は尼崎周年。その意味では、篠崎兄弟と峰に匹敵する実績なのだ。また、SG優出経験があるのは4人。そのうちの一人が山口である。女子選手はなんとなくチャレンジャー感があるし、山口は6号艇ということもあるだろうが、実際のところ、彼らは間違いなく格上なのだ。

 

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 それを彼らが自覚しているかどうかはともかく、準優に向けて着々と準備を進めている姿には、やはり風格があった。そして、ある種の決意を感じずにはいられなかったのである。

 準優はおそらく、峰だ篠崎だ桐生だというあたりに人気も集まる。注目度も彼らが高い。だが、平山と山口も同等の注目をすべきだろう。少なくとも、大仕事を果たしそうな雰囲気は、彼らにはある。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)