BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

常滑ダービーTOPICS 初日

 

やっぱり1号機は凄かった!

 

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 私の手元には、シンプルで美しい、ただしまだ未完のシナリオが届いている。仮タイトルは『無冠の帝王のバトンタッチ』。仲口博崇、42歳。SG優出7回のうち、2着=準Vが4回。約10年前の多摩川・総理杯では優出1号艇もあった(4着)。白井英治が『無冠の帝王』と呼ばれる以前の数年間ほど、その呼称を独り占めしていた。逆に言うなら、白井がそう呼ばれるようになってから、仲口の存在感はやや影をひそめた感がある。

 だが……先のMBメモリアルをコンマ00で白井が制して、うっすらドラマチックな流れが生まれた。繰り上がりでダービー参戦権を得たのが、仲口。白井ではなく、谷村一哉や寺田祥や辻栄蔵が勝ったら、仲口の繰り上がりはなかった(後に田口節子がケガで不参加となるが、それはあくまで結果論だ)。

 まあ、この程度の話なら、ちょっとした因縁ストーリーくらいで片付けられるだろう。が、白井からバトンを受けた仲口が「怪物モーター」を引いたとなれば、俄然このシナリオが怪しい光を放つ。補欠からかぼちゃの馬車(白井英治の魔法?)に乗って大舞台に行ってハッピーエンド、そんなシンデレラ物語が現実味を帯びる。

 そして今日から、ガラスの靴を測るような“最終審査”がはじまった。成否の鍵を握るのは、もちろんモンスター1号艇の仕上がり具合だ。初戦の私の見立ては、文句なしの合格。

 

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 9R、3号艇3コースの仲口はスリットからヒュッと伸びた。素晴らしい反応だ。ゴキゲンな行き足から伸びなりにじんわり内を締めつけ、インの同期・田中信一郎の手前で減速してまくり差しハンドルを入れた。スリットから一気にまくりに行けば突き抜けたかも知れないが、同期競りを警戒したのだろう。やや弱気に見えたこの戦法は、信一郎を捕えきれなかった。1艇身半ほどのビハインド。2着までか、と思った瞬間に1号機が唸りを上げた。バック中間から伸びて伸びて伸びて、2マークまでに舳先を並べていた。平和島の53号機も凄いが、やっぱり常滑の1号機も凄まじい。追いすがる信一郎を叱りつけるようにして、力強く2マークを回る。あとは独走。妙な喩えだが、「真の名馬は負けると泣く」みたいな、そんな勝負根性を感じさせるパワーだった。展示時計はソコソコでも、実戦に行ったら怪物に変貌する。そんな、あるはずのない“意志”を感じさせるパワーだ。

 

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「もっと良くなる感じがします」

 公開インタビュー、仲口は静かな口調でこう言った。なんと、さらに化けてしまうのか、1号機!? そうなったらもう、手元にある未完のシナリオは……あ、この先は優勝戦の日まで暖めておかなければ。現時点でちょっと不安に思えることと言えば、このシナリオが妙に出来すぎている点だな。それは即ち、仲口のメンタル面に直結する部分でもあるだろう。実のところ、構想から15年以上にも及ぶ大河ドラマなのだから。ガラスの靴を慎重、かつ大胆に履き馴らすことは、口で言うほど簡単ではない。

 

独断パワー診断

 

初日の全レースをチェックして、私なりのパワー評価が定まりました。まあ、ほとんどが成績に直結しており、バレバレですけどね。さすがに10カ月以上も使いこなしたエンジン、ほとんど下馬評通りでもあります。

 

SS級(節イチ候補)

 

★★★仲口博崇

別掲。

 

 

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★★★井口佳典

 

スリットを過ぎてからの伸びは、あるいは仲口以上か。この特長を見越したであろう5Rの井口は、道中3番手から全速全速で前の中尾誠を追い詰め、最終マークだけ一撃の差しを捩じ込んで見事に2着を獲りきった。さらなる圧巻は10R、6コースから伸びなりに内を締めつつ2段でまくりきってしまった。スタート勝ちの印象もあるが、強烈な伸びの裏付けがなければ不可能な大技だ。5・6艇での②①着はデカイな。パワーだけで言うなら、今節は仲口VS井口の一騎打ちとお伝えしておこう。ちなみに、明日の11Rは両雄の直接対決だ。

 

S級(抜群候補)

 

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★★松井繁

 

さすが準エース機。やはり5・6号艇だった王者は、どちらもスロー水域に潜り込み、ゴキゲンなスリット付近の行き足を生かして③③着にまとめた。22号機には「ダントツの展示時計」という看板があるのだが、松井なりの仕上げで?やや伸びは落ちたかもしれない。その代わりに唯一の不安材料である回り足が付けば、臨戦態勢は完璧に整う。

 

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★★吉田拡郎

 

これまたスリット付近の行き足~伸びが出色。3Rは5コースからぐんぐん伸びて、必死に抵抗する桐生順平を高みから見下ろしつつ豪快なまくり差しを決めた。おもろい選手がおもろいモーターを手にした。今節の拡郎も1秒たりとも目が離せないなあ。

 

A級(上位候補)

 

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★石野貴之

 

祭の口開けに相応しいド派手な勝利だった。2コースから強引に握って西山昇一を付け回り、強ツケマイの連発で1着をもぎ取った。ターンスピードの差もあったが、圧倒的な力でねじ伏せた印象も強く感じた。続く5Rは6コースからスタートで後手を踏み何もできず5着。本人も口にしていたように、起こしからスピードに乗るまでの回転が合っていないのだろう。それが改善されれば十分S級に昇格できる。

 

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★山田康二

 

これも伸び。4Rで4カドに引き、スリットからぐいぐい伸びて簡単に2着を取りきった。SGではまだ過少評価されているだけに、この武器は秘宝級のポテンシャルを秘める。どこかで一発、大穴を提供する気がしてならない。

 

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★吉川元浩

 

こちらは質の高いバランス型で、どんなコースからでも舟券に絡みそうなムードが漂う。引き波を楽々と超えていく感じで、かなりの底力がありそうだ。

 

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★上平真二

 

まだ過信は禁物だが、天下の池田浩二を2マーク一撃の全速マイで千切り捨てたのだから看過はできない。全部が強めのバランス型か。超久々のSG参戦で人気の盲点でもあり、ヒモに据えるだけでも美味しい配当にありつけるかも?

 

 他では湯川浩司の行き足、中島孝平の回り足、茅原悠紀の伸び、深川真二のレース足が強めに見えた。(photos/シギー中尾、text/畠山)