BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――胸の内

 

 

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 上の毒島誠の写真、なんか違和感ありませんか?

 これは、10R発売中の試運転の写真であります。

 

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 この直前、田中信一郎と湯川浩司が試運転を終えて、ピットにあがっている。田中は6R、湯川は8Rを快勝しており、その後も水面に出ていたのだ。負けたから調整をするのではない。気になるところがあるから調整をするのだ――というのは、昨日も書いたことだが、ともに気持ちのいい勝ち方に見えていた田中と湯川が仕事をやめようとしなかったことには、ちょっと驚き、そしてさすがだと思った。

 リフトを降りた田中と湯川が、その付近でエンジン吊りをしていると、そこに毒島がいるのに気づいた。ボートを押していたので、毒島も試運転をしていたのだと思ったら、違った。毒島は、二人と入れ替わりに水面に降りようとしていたのである。これから試運転? 競技本部のほうを見ると、試運転可能の青ランプが点っていたが、時間的に考えれば、それほど時間は経たずに赤ランプになるはず。というわけで、毒島は急ぐような風情でリフトへと向かっており、そこで田中&湯川の同門コンビとクロスオーバーした次第だ。

 

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 最初は、これから試運転に向かうとは! と驚嘆した。次の瞬間、その恰好が不思議なことになっていると気づいた。

 艇旗が黄色、カポックが緑色、なのである。

 5号艇、6号艇、どっちなんじゃい!?(笑)

 ま、毒島はレースを終えているので、どっちでもいい。試運転のプレートもついているし。つまり毒島は、7R終了後の調整の感触を確かめるため、大急ぎで試運転の準備をし、水面に飛び出ていったということなのだ。調整で足がどうなったか確認するのは明日でいい、とは考えなかった。まだ時間がわずかでも残されているなら、やるしかないっしょ! そんな思いが、黄色と緑色に表われている、といったら穿ちすぎだろうか。

 ちなみに毒島は数周した後にピットにあがり、あとはふたたび調整作業を続けている。篠崎仁志、山田康二、中田竜太と部品室(整備室内)の前で話し込んでいる姿もあった。4人とも交換を考えている? 明日の直前情報は要チェックです!

 

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 そうそう、湯川は試運転後に本体整備をしていました。

 神妙な顔つきで作業をしており、完全に調整に集中し切っている様子。そーっとレンズを向けてみたら、あ、気づかれちゃった。カメラを構えているのがハゲデヴのおっさんと知った湯川は、ニヤリ。ふむ、精神的にはそれなりに余裕もありそうだ。尻上がりに成績が良くなってきているだけに、この整備でさらなるパワーアップがはかれれば、楽しみは大きそうである。

 

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 前半で、篠崎仁志がインで敗れてがっかり、の様子を記した。極度の負けず嫌いの集団とも言えるボートレーサーズだけに、負ければひたすら悔しいというのは当たり前のこと。ただ、インコース(現代ボートレースでは1号艇と言い換えてもいいか)で敗れると、その悔しさはやはりハンパではないようだ。

 10R、吉川元浩の表情には慄然としたなあ。もともと男っぽく鋭い顔つきで、レース前などには迫力ある表情を見せる人だが、このときは目つきが鬼のようだった。いや、鬼だった。もちろん、憤りは自分に向けられていたと思う。敗れてしまったこと、菊地孝平のジカまくりを許してしまったこと=機力に不満が残ったこと……それらに対する怒りのような思いが、その強烈な目にはっきりとあらわれていた。道中追い上げて、最後は3着に浮上しているのだが、そんなものはその時点では慰めにもならないのだろう。これぞ勝負師。吉川のなかで燃え上がるレーサーとしての本能を、そのとき確かに見せてもらったと思った。

 

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 そうした思いはおそらく選手共通、だから気持ちはよくわかる=相手を気遣うというところも選手にはあるだろうか。かつて赤岩善生が「1着を獲ったからといってはしゃぐのは、戦った相手に失礼。自分が負けたときの悔しさを思えば、自分にはそういう態度はできない」と言っていたことがある。

 10R、勝ったのは森高一真である。そもそもこの人は、レース後はなかなかヘルメットを脱がない。しかもシールドは黒。レース後の表情をうかがうのが非常に難しい選手の一人である。だから今日もピットに戻ってきたときには、喜んでいるんだかどうだか、まるでわからなかった。

 

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 ただ、田村隆信がニヤニヤしているのである。田村のポジションは森高の左隣。エンジン吊りを手伝いながら森高に話しかけ、森高もヘルメットを田村の耳元に近づけて何かをささやいている様子。そのたびに田村はニヤニヤとしており、森高、ヘルメットの奥でニッコニコなのは間違いなさそうだった。軽口に近いことも田村に言っていただろう。その様子は、簡単に言えば、内緒話。約9マンシューを叩き出した会心を表に出すこともなく、勝利の喜びを発散することもない。仲良し同期とひそやかに喜び合う、そんな風情である。実際に森高が吉川やそのほかの対戦相手を気遣ったかどうかはともかく、その光景からはさまざまな選手心理が裏読みできるのだった。

 あ、その後、ヘルメットを脱いだ森高の表情も見ましたが、やっぱりニコニコでした。この人、自分の舟券を買った人を喜ばせたいというのが信条だから、配当を見て大満足したでしょうね。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)