BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――試運転組と調整組

 

 

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 終盤の時間帯、水面で試運転をしているのはレディチャレカ組だけだった。

 魚谷香織、松本晶恵、守屋美穂、遠藤エミ。今節若手の部類に入る4人だ。魚谷と松本は頻繁に足合わせをしており、何回目かにいったん係留所に戻ってきたとき、「晶恵~、ごめーん」と魚谷が謝っていた。足合わせに失敗したか!? ターンミスだったかパワー不足だったか。そのへんはちょっと不明だったが、その後もふたたび水面へと飛び出していった2人である。20分の6という優出条件はハードルが低いような気がするが、実際は戦う相手がずらりトップレディースである。予選5日間だから巻き返しが利きやすいような気もするが、そんなことを言っていたらあっという間にポイント差をつけられてしまうだろう。初日だからこそ、手を抜かずにパワーアップを目指す。トップ選手の流儀のようなものだろう。

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 で、ようやく試運転を終えてピットに戻ると、女子仲間がエンジン吊りへと集まった。そのなかに一人、瓜生正義が混じっていた。向かった先は松本晶恵。これは恐縮しちゃうシチュエーションだよなあ。同支部あるいは同地区の先輩スターがエンジン吊りに参加するのは普通のこと。松本でいえば、山崎智也とかね。智也とは顔を合わせる機会も少なくはないだろうから、心安くもあるはずだ。だが、これが他地区の大スターとなると、やっぱり恐縮しますよね。それもあの瓜生正義なのである。瓜生はたまたまエンジン吊りを見かけ、当たり前のように参加しただけなのだが、自分の艇旗と艇番を受け取って装着場の隅にある棚に戻しに向かう正義のヒーロー、という図は松本にとっては、ひとつの事件である。というわけで、松本は瓜生の背中に、直利不動でペコリ。かわいかった。

 とはいえ、今後彼女がSGに何度も登場するようになれば、このシーンは日常となる。そしてそれを松本には目指してほしいですよね。気楽に「瓜生さん、ありがとう!」なんて言える日は来ないだろうけど、直立不動までするようなことはなくなるはずである。今日のことは、きっといい経験になったはずだ。

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 SG組は、試運転こそ終盤には誰もしていなかったが、多くの選手がパワーアップの作業に没頭していた。下関のペラ室は整備室の奥のほうにあるので、なかなか様子がうかがいにくいのだが、やっと濱野谷憲吾の顔も見つけましたぞ。ちょっと口をとがらせたような表情になって、キリリとした視線でペラと向き合っていた。うむ、悪くない様子だ。

 本体整備をしていたのは、徳増秀樹。初日6着6着と、いきなり出遅れてしまっている。この成績、最近見た記憶があるなあと思って調べたら、そう、ダービーもこうでしたね。メモリアル(MB記念)も5着5着で初日を終えている。どうも最近のSGでは、初日につまずいてしまっている徳増なのだ。

 ただし、その後にはきっちり1着も獲っている。初日を走って整備に励み、残念ながら予選を突破するまでには至らずとも、巻き返しを決めているのだ。今日もメモリアル、ダービーと同様にレース後の猛整備。これをしなければならないのはおそらく不本意だろうが、しかしこの姿勢がSG優出ラッシュの原動力でもあったはずだ。というわけで、今日の成績で人気が下がるなら、むしろ徳増を狙ってみたい。一本は獲ってくれるんじゃないかなあ、これまでのパターンなら。

 

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 今垣光太郎と赤岩善生は並んでリードバルブの調整をしていた。整備の鬼と、整備士も認める整備巧者が、同じ作業をしていたというのは、偶然だろうけど興味深い。彼らなりの調整方法で、パワーアップを着実にはかっている、という姿に見えるのである。で、二人とも柔らかい雰囲気だったなあ、と見えた。赤岩は1着発進で、今垣は6号艇4着(同じレースでしたね)。赤岩はゴキゲンで当然だし、今垣もそれほど焦って整備する必要はなさそう、ということか(本体をやっていたわけではないし)。

 

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 で、写真は今垣の調整の様子。リードバルブとキスしているわけではありません。こうやって息を吹きかけて、そのときの音で判断する、という話を聞いたことがあります(漫画『モンキーターン』にもそんなシーンが合ったはず)。ざっくりとした印象でしかないが、これをしているのは若手よりもある程度キャリアがある選手って気がするなあ。いや、単に僕が見かけてないだけかもしれないけど。よく見るのは服部幸男、というのが、そんなイメージを僕に植え付けているのかもしれないですね。今垣は何度も何度もこれをやっては、またリーバルと向かい合う、という繰り返しだったが、勝利の予感を告げる音が聞こえましたか? 明日の気配に注目してみよう。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)