BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――いや~、勝負駆けっていいな~

 まず、山口剛が元気な顔でピットにあらわれ、関係者に挨拶回りをしていたことをお伝えしておきたい。何はともあれ、姿を見られてほっと一安心。声をかけると「大丈夫ですよ!」と笑ってくれた。心残りのあるまま下関を去らねばならないが、リベンジの機会はいくらでもある。できれば平和島で会いたいですね!

 

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 というわけで、勝負駆け。注目していたのは今村豊で、予選19位で迎えた今日、気合が違うだろうなあと想像していたわけである。もしかしたら走ることができる最後の下関SGかもしれない、というなか、何としても予選突破の思いが強いだろう。それだけに、闘志あふれる今村豊が見られるのではないか、と思ったりしたのである。

 はい、ミスターはミスターでした(笑)。海野ゆかりとじゃれ合って大笑いしているのを見て、「まあ、そうだよな」と。SG優勝戦1号艇の日でも、ピットでは笑いを振り撒いているような人である。背景によってよそゆきの今村豊になるはずがなかった。その意味で、やっぱりこの人はすごい。

 

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 石渡鉄兵にも注目していた。地元グランプリというとまずは濱野谷憲吾に目が向くわけだが、この人だって出場への思いは強い。今日はやっと回ってきた内枠デー。なんとしてもモノにして、望みをつなぎたいはずなのだ。断固たる決意、それを強く意識して、今日に臨んでいるはずなのである。

 こちらは想像通りであった。2Rはイン逃げ快勝。それでも表情を大きく崩すことなく、凛々しい顔を見せていた。石渡は、ひたすら好人物である。素顔は穏やかだし、控えめだし、柔らかい。だが、秘める思いは熱い。特に今回、自分こそが地元グランプリに名を連ねるのだという思いは強いのだ。勝利者インタビューを終えたあとは、すぐに次への準備に取り掛かった石渡。1勝で気を緩めることなど、まったくありえないのであった。

 

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 準優は安全圏だが、石野貴之は熱い勝負駆けを戦っている。賞金ランク19位で今節を迎えたのだから、これはアツい。予選突破はまずその第一関門で、しかしそれで満足しているわけにはいかない。3日目終了時点で予選8位だが、当然一つでも上の順位、一つでも好枠を狙っているはずである。

 だから、凛々しいぞ~、石野の表情が。基本的には童顔で、笑顔にはかわいらしさもあると思うが、凛としたときの表情は鋭くとがっている。前をきっと見据える目つきは、迫力すら感じさせるものだ。おそらく風を見ていたのだろう、石野が水面をじっと見つめて数秒間動かないという場面を見た。いや~、強烈だった、その顔つきは。今日の石野は、間違いなく気持ちの伝わるレースを見せてくれる。いや、今日も明日も明後日も、だろう。

 

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 女子はといえば、勝負駆けは明日なので、まだ空気が緩やかなのかな~、と思っていたら、そうでもなかった。20人のなかで、勝ち上がれるのは6名のみ。賞金ランク13位以下の選手はその6名に入れなければクイーンズクライマックス(賞金女王)への望みが断たれるわけだから、予選後半に差しかかれば気が抜けないのは当然なのであった。

 現時点で予選5位、というのは痺れる位置だろう。魚谷香織だ。昨年は出走回数の少なさもあって、地元賞金女王に出場がかなわなかった。だからこそ、舞台は変わるけれども今年こそは、とかつての地元水面でのチャレンジに闘志を燃やしている。ここまではそれなりに順調ではあるが、明日の勝負駆けを戦ううえで今日は大きなカギを握る一日となる。表情が鋭くなって当然と言えるだろう。

 3Rがゴールした後だったか、魚谷の姿が係留所にあった。普通なら、すでにボートリフトで待機しているタイミングだ。しかし、まだ仲間がリフトに戻ってくるまでには、わずかだが時間がある。ならばそのわずかの時間を無駄にはしたくない、ということだ。ギリギリまで調整の手を止めず、その後はもちろんリフトに猛ダッシュ。表情の鋭さは痺れるほどのものだった。

 

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 1Rで今節初1着。得点率6点オーバーとなって、明日に大きく望みをつないだ向井美鈴も、勝利の余韻に浸っている様子はない。今日はこの1回乗りだが、仕事を終えるつもりはいっさいなさそうなのだ。すぐに作業に取り掛かり、3R発売中には水面に降りていく姿を見かけている。向井は選考順位20位でレディチャレカに乗り込んだ。まさに一発逆転を狙っての、地元ビッグなのだ。優勝でもちょっと微妙という賞金差ではあるが、もちろん諦めている場合ではない。そんな思いを表現するかのような、レース後の動きなのであった。

 いや~、勝負駆けのピリピリ感が高まってきたな~。だからチャレカは面白い。二本立てとなった今年は、まったくもって贅沢なのである。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)