BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――独特なヒロイン、誕生!

 

 

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 なんというか、独特の雰囲気がある人だなと改めて思う。とにかく穏やか。笑顔はなんとも柔らかい。BOATBoyでインタビューをした内池久貴に訊くと、「本当におっとりした人」。優勝後にもそれが変わらないように見えるのだから、岸恵子のたたずまいはなんとも和やかなのだ。

 不思議なことにレディチャンの予選突破がないから、これまで大舞台でのこの人を見たことがなかった。だから、ビッグでの準優や優勝戦で勝ち上がったときの様子だったり、敗れたときの悔しがり方だったりも見たことがないのだが、いきなりGⅡを勝っても、昨日までの印象とはまったく変わらなかったから、ちょっと驚いてしまった。いいなあ、岸恵子。まさしく異次元ヒロインの誕生である。

 もちろん、インタビューなどに応えて、喜びは素直に口にしている。その様子がまた、ふんわりとしていて、覇者に失礼な言い方かもしれないが、かわいらしかった! とにかく今年絶好調の岸だけに、住之江でもまたこんな岸恵子を見たいなあ、と思ったぞ。もちろん、その可能性はおおいにあると思う。

 おめでとう!

 

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 敗者たちについては、やはり平山智加だ。結果的に、準Vで賞金ランクトップに! 今年は記念回りが増えて、一時はなかなかランクを上げることができなかったが、終わってみればトップなのだから、やっぱり女子に入れば抜けた存在だ。うねりがかなり強いなかで、5コースからきっちり2着を獲り切るあたりも、実力の証明だろう。

 だが、レース直後はやはり悔しさを隠せない表情をしていた。外コースから悪水面で展開うまく突けて準Vだから上々、とは、まったく思っていない雰囲気だったのだ。コメントを見れば、納得できているようなものになっているが、レースが終わったばかりの時点で、その感想を抱いていたとは思えなかった。それもまた、強さの証明!

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 鎌倉涼、三浦永理、向井美鈴については、静かに悔しがっている、という印象。勝てば逆転のチャンスがあった向井だが、僕が見た範囲では深く落胆しているというよりは、淡々と現実を受け止めようとしているように見えた。

 あ、三浦がちょっとふてくされているような感じだったかな。6コースからスタート遅れて見せ場なし、だからそれも当然か。そんな三浦が素敵に見えたぞ。クイクラ当確だから、6号艇だから負けてもいいや、と思うような人がこのポジションにいるとは思えないからだ。

 

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 あとは、やはり守屋美穂だ。向井が先頭に立てなかった瞬間、残る12番目の椅子は守屋か高橋淳美かに絞られている。だが、ピットでは具体的な条件を誰もうまく把握できていなかった。守屋は1マークで展開なく後退し、道中は気持ちの伝わる追い上げを見せたが、5番手濃厚。さすがに5着では厳しいのではないか……そんな空気がピットにあったのは事実だ。ただ、当事者の一人である高橋淳美は、わかっていたようである。まったく笑顔がなかったのだ。守屋に遠慮してる? そんな雰囲気もなかった。一般戦2走で大敗を続けてしまった高橋、その時点で覚悟はしていたか。そう、守屋は残った!

 着替えてピットにあらわれた守屋は、JLCのクルーに誘導されている。残った?と訪ねると、守屋は安堵に包まれた表情になって「残りました!」と喜びを見せた。5着で残れたから有利な条件だった、とは言わせない。守屋は必死にひとつでも上の着順を獲りにいったではないか。結果的に6着以外ならOKだったとしても、守屋が必死になって掴み獲った12位のイスである。

 これで守屋は気分よく師走を迎えるだろう。クイクラも怖い存在になったと思うぞ。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)